第六十二話 それはまるでお伽噺のような
~夜明けを告げる星の女神~
むかしむかし、あるところに星を司る女神様がいました。その女神様は季節によって星座の位置や時間ごとに夜空の明るさを変えたり、時には光のカーテンを夜空に浮かばせます。
ある時、邪悪な魔物が現れました。
その魔物は人々に悪夢を見せたり、時には血を吸い尽くして命を奪っていました。
星の女神様は月の女神様から呼び出されます。
月の女神様は星の女神様に悪さをしている魔物のことを話しました。
「人々も、動物達も、花達も、魔物によって悪夢を見せられています。貴女の力で解決して欲しいのです。」
「ですが、私の小さな力で魔物を退治することは出来ません……。他の女神達にも手伝ってもらえないか頼んでみます。」
こうして他の女神達にも助けを求めましたが、夜が深くなるまで起きていられる女神は1人も居らず、星空の女神は困り果てました。
そんな星の女神様の元に1人の妖精の王が現れます。
妖精の王は同じく夜に悪さをする魔物に困り果て、魔物を倒す方法を探していると言いました。
「その剣で魔物を退治してくれませんか??」
「いいでしょう。ですが、魔物を倒すためには貴女の力も必要なのです。」
妖精の王は立派な剣を持っていて、女神様はその剣で魔物を倒してほしい、とお願いしました。
ならば魔物を倒すために、星の光を沢山用意してほしい、と妖精の王は言いました。
女神様は星をたくさん集め、現れた魔物に星屑を振らせました。
すると、魔物は数多に輝く星屑の光の眩しさで目を両手で押さえて叫びました。
その瞬間、妖精の王は魔物の首を切り落としました。
その後も、星の女神様は星の輝きを絶すことなく夜空を照らし、夜明けを告げる眩しい光が降りそそぐのを待ちました。
そして朝日が差し込むと同時に星の女神様と妖精の王は安心して笑いあうと肩を寄せ合い眠りにつきました。
こうして星空の女神と妖精の王は、再び魔物が悪さをしない様に夜空の星を眺めながら夜の平和を守っているのでした。
~おしまい~
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よく父さんに読んで貰っていた本がある。
そのおとぎ話を父さんは毎晩俺に読み聞かせてくれた。
「いいか、クロア??俺達の先祖はな、この物語の妖精の王だったんだ。すごいだろ??」
「……へぇ。」
「それだけか!?それって本当なの、父さん!?すごいや!!って言うところだぞ!?」
「もうそれぐらいにしてあげて。クロアはアナタと違って大人なのね。」
「おいおい、クロアはまだ3歳だぞ??」
俺は妖精も女神も信じていなかった。だって、見たことが無いから。
だけど、父さんは何度も俺に言い聞かせた。
「クロア、よく聞け??ずっと昔、妖精の王と星の女神の子孫達はお互い助け合って生きていた。だけど、魔物に襲われて散り散りになってしまったんだ。」
「じゃあ、どこかに星の女神の子孫がいるの??」
「ああ、だからもし星の女神の子孫を見つけたら必ず力になってやってくれ。……それが俺達妖精の王の子孫の役目なんだ。」
父は最近になって剣の稽古をつけてくれるようになった。
どうしてなのかと疑問に思っていたが、どうやらこの物語の精霊の王と同じように剣を扱えるようになってほしいみたいだ。
そして、台所で作業をしている母に聞こえない様に俺の耳元で小さい声で父は言った。
「この物語には続きがある。星の女神と妖精の王は両思いになって結婚したっていう話があるんだ。……だからクロア、お前もいつか好きになった人が出来たら、この物語のように2人で協力しあうんだぞ??そして全力で守ってやれ。」
「わかったよ。……じゃあ、おやすみ。」
「よし、父さんがすぐに眠れるとっておきの歌を歌ってやろう!!」
「父さん、音痴だからいらない。」
父の歌は不協和音で、変な夢を見てしまうほどだからきっぱり嫌だといった。
相変わらず不快になるような父さんの歌を聞き流しながらゆっくりと目を閉じた……俺にもいつか、大事にしたいと思える人に会えるのだろうか。
俺にとっての日常がいきなり終わりを迎えた。
住んでいた村が魔物と人間の戦争に巻き込まれ、俺達の村は壊滅状態になった。
剣とあの本を俺に持たせると、両親達は自ら囮になってくれた……無我夢中で走っていたらいつの間にか力尽きて木の根元で気を失っていたようだ。
俺は兵士に見つけられ、とある孤児院へと連れて行かれた。
「父さんと母さんはどこにいるの??」
「……あの村の人間は全て死んでしまったよ。君はたった一人の生き残りさ。」
俺は一晩で、たった一人ぼっちになった。
孤児院の子供達は俺と年が離れていて、俺にこれでもかと構ってくる。
当時はうっとおしかったが、あいつらなりに励まそうとして気に掛けてくれたのだろう。
お陰で俺は両親を失ったショックから立ち直る事が出来たのかもしれない……それに関しては感謝してやってもいい。
そして俺が5歳の時、運命だと思える出会いがあった。
自分よりも小さい少女は、滑らかなシルクのような金髪に青い瞳はサファイアのように輝いている。
「クロア、この子はリヴィリカ。クロアの方がお兄さんだからお世話してあげてね。」
「わかったよ、シスター。」
「ほら、リヴィリカもいつまで私の後ろで隠れているの??」
シスターのスカートの後ろに隠れていた小さな少女は少しだけこちらを覗き込んできた。
少女は、滑らかなシルクのような艶やかな金髪に青い瞳はサファイアのように輝いている。
涙で濡れている瞳を見た瞬間、俺はなぜかこう思った……この少女を守らなければ、と。
3章の始まりはクロアの持っていた本の物語の内容と、クロアの過去の話になりました。
しばらく、クロアとリヴィリカの過去編を書こうと思っています。
長くなります、きっと。




