第五十五話 舞踏会
長年続いていた聖都とフランジェ国との平和条約が今日、結ばれる。
午前中にフランジェ国王とリデル、そして多くの同盟国の地主達が集まっていた。
私とクロア、大勢の人達が見守る中、2人の王が調印のサインを書いた……そして、2人が握手をすると大きな拍手が会場を包み込んだ。
そして、そのお祝いの舞踏会まであと2時間……私はルフェリアの部屋にお邪魔してメイドさん達にドレスを着るのを手伝ってもらっていた。
「そういえば、ゴタゴタしてて聞きそびれたんだけど、アンタどっちをパートナーにするわけ??」
「え??パートナー??」
お化粧と髪の毛をセットしてもらいいながら鏡越しにルフェリアへと目線を移す。
「リデル国王から聞いてない??お父様が私に国王かクロアのどちらかをパートナーにしてほしいからリヴィリカにも相談しておいてって言ったんだけど。」
「……ああ、そんな事ちょこっと言ってたかも。でもそれどころじゃなくなっちゃって。」
「暗殺の犯人を捕まえてたんだもの……それもそうよね。」
ルフェリアはすでにアクセサリーを付け終わり、準備が出来たようだ。
私も、最後にアクセサリーを付けてもらう。
「リヴィリカ様。ドレスの入っていた箱にお手紙が添えてありましたよ。」
「お手紙??……”素敵な舞踏会を。私達フェアリーエデンの妖精がとっておきのドレスをご用意しました。気に入ってくれるとうれしいです。あと、全身鏡の前で一回転してみてくださいね!!”ノエルちゃんからだ。」
「リヴィリカのドレス、素敵ね。ちょっと一回転してみなさい。」
「……こう??」
「……そんなカクカクな一回転じゃなくて、もっと滑らかに。」
ルフェリアに指摘されて、もう少し勢いをつけて回ってみる。
ドレスの裾が少し舞い上がると、内側にあるピンクや黄色、オレンジなどの鮮やかなお花の形をしたフリルが現れる……まるで、お花のブーケを連想させるようなドレスだ。
「一見シンプルなドレスと思ったけど、ダンスをしてる時にその細工が見えるようになっているのね。」
「そうみたい。私があんまり目立たない様にしてって言ったから。」
ルフェリアがフェアリーエデンのドレスに興味を持ってくれたので、お店の事について宣伝しておいた。
近くにいたメイドさんも興味津々だったようなので、みんなでわいわい話しているとドアがノックされ、フランジェ国王と王妃様、それから舞踏会用の衣装に着替えたリデルとクロアが入ってきた。
「もう支度は済んだかな??……おお、2人ともとても美しいぞ。」
「あら、本当ね!!ルフェリアの深緑色のドレスもリヴィリカちゃんの水色のドレスも素敵だわ。」
「ありがとうございます、お父様、お母様。」
「ありがとうございます……。」
ルフェリアは優雅にドレスを摘まみ、お辞儀をした。
私はクロアとリデルに向かい合うと先ほどと同じように一回転して見せた。
「クロア、リデル、どう??ノエルちゃんが作ってくれたドレス、とっても素敵でしょ。」
「あ、ああ……とても似合っているよ。ドレスがリヴィリカの美しさをより引き立てているね。」
「ありがとう!!リデルもクロアもその正装、すごく素敵。」
リデルは白を基調とした正装服に、金色のボタンと豪華な装飾が着けられた長いマントを羽織ってる。
一方の、クロアは黒を基調とした正装服で、左肩に掛けるように着るマントを羽織っていた。
「……??クロア、どうしたの??」
「おーい、クロア??……反応が無いな。」
クロアは私の前で立ち止まりこちらを見下ろしたまま、微動だにしない。
瞬きもしていないクロアの目の前で手を振ってみる……すると、すごい速さでその手を掴まれた。
「リヴィ、とてもよく似合っている。」
「ホント??よかっ……。」
「まるで、天使、いや、女神のような美しさだ。まさか、これほどとは……!!」
クロアがく興奮気味で言ってきたので私は思わず小さく一歩後ずさりしてしまった。
私の編み込まれた髪の毛を崩さない様に撫でながら、優しく微笑みかける。
「……ねぇ、クロアって普段無表情だし他人を近づけない雰囲気出しまくってるくせに、リヴィリカの事になると別人になるわよね。」
「ああ……。リヴィリカに対しては昔からあんな感じなんだ。病気だよ。」
リデルとルフェリアが小声でそんな話をしているとは露知らず、クロアは私のドレス姿を細かい箇所まで丁寧に褒め上げてくる。
最初は素直にお礼を言っていたのだがだんだん恥ずかしくなってきて、私はただ頬がひたすら熱くなってくるのを感じながら俯く事しかできなくなった……。
リヴィリカのドレスの表現は三十九話で書いたので、詳しくはそちらを。
お花パニエっていうのを見つけて可愛すぎてそれをイメージして使わせていただきました。
どうしてクロアがここまでリヴィリカに心酔しているのか、それは孤児院にいた時に起こったとある事件がきっかけとなっていますが、それはまたのちほど。




