第五十一話 毒の標的
ベッドに横たわっているリデルは先ほどより大分顔色もよくなり、呼吸に乱れもない。
私はベッドの脇の椅子に座りながらリデルが目覚めるのを待っていた。
医者の人には、ティーポットに残っていた紅茶の成分を調べてもらっている……分かり次第、念のため解毒剤を作って持ってくると言って医務室へと戻って行った。
お茶を入れてくれたメイドさんも、騒ぎを聞きつけた他の使用人たちに頼んで彼女を自室へと連れて行ってもらえるように頼んだ。
「リヴィ、出された食べ物に口を付けたか??」
「まだなにも食べてないよ。」
「……俺は少し調べ物をしてくる。リヴィは部屋から出るなよ。」
そう言ってクロアは部屋の外に控えていた兵士に一言声を掛け、どこかへ行ってしまった。
しばらくすると、フランジェ王が大臣などを連れて慌てた様子で部屋に入ってきた。
そして、今までの経緯を詳しく話した。
「リヴィリカ殿、リデル王の容態は??」
「私の聖魔法で毒は浄化しました。今は眠っているだけです。」
「そうか……。だが、リデル王を危険に晒してしまうとは……なんてことだ。」
「一体誰がこんなことを!!平和条約が結ばれる大事な時だというのに。」
「リデル王はこのまま我らと条約を結んでくれるだろうか……。」
フランジェ王達は真っ青な顔で顔を片手で覆ってしまった……。
するとリデルが唸り声を少しあげて目を覚ました。
「リデル!?どこか痛いところはない??気持ち悪いとかは??」
「あれ??俺は一体……??」
「私の紅茶を飲んで倒れたのよ。紅茶に毒が入っていたの、それで……。」
「ああ……そうだったな。」
「リデル王、信じてもらえないかもしれんが、我々は貴殿に危害を加えようなど思ってはいない。……だが、この城で起こったのならば私に責任がある。申し訳なかった。」
そう言ってフランジェ王はリデルに頭を下げた……それ見たリデルは焦ったように顔を上げるように言った。
「フランジェ王!!顔を上げてください。貴方を見ていればそんな気が無いことは分かっています。貴方は誰よりも国と国の平和を願っていた人物です。もう身体も平気ですし気にしないでください。」
「寛大なお心に感謝する。……それにしてもいったい誰が??」
「……クロア、何か言いたそうだな??なにか分かったか??」
「ああ、まだ何とも言えない。だが、ほぼ確定している事はある。」
クロアは調べ物があると言ってどこかへ行っていたがいつのまにか戻ってきていたようだ。
そして、無表情でリデルのベッドへと近づいた。
「さっきお茶の準備をしたメイドは、厨房で他の給仕に頼まれて運んだようだ。その給仕は、毒の入っていた紅茶を西の国で女性に人気があるからリヴィに是非飲んでもらいたいとメイドに付け足して言ったらしい。それをメイドはリヴィに勧めた。」
「つまり、狙われていたのは…………私??」
「ああ、もしあのままリヴィが飲んでいたら今頃……。」
リデルではなく、私を狙った犯行のようだ……先ほどのリデルの姿を思い出して一気に血の気が引いた。
見たところ、即効性のある毒だ……私は自分に回復魔法を施せない、だからもし飲んでいたら私は今頃死んでいたかもしれない……。
「紅茶を勧めた給仕を探そうと思ったのだが……今、城は使用人不足で急遽雇った者が多いようで、見慣れない顔をしていたとメイドは言っていた。メイドもその給仕の顔は見覚えが無い新人、ぐらいしか思っていなかったようで特徴までは覚えていないようだ。」
「それはこちらの不手際だ……。大臣、使用人達をもう一度よく調べてくれ。」
「畏まりました。至急調べてまいります。」
そう言って大臣は部屋から足早に出て行った。
フランジェ王は不安そうに私に向き合う。
「リヴィリカ殿に危険が及ぶのであれば、場合によって平和条約の儀は先延ばしにした方がいいだろうか??」
「……いいえ、むしろ2人の王には危険はないという事ですし、予定通り執り行ってください。」
「早く犯人を探し出せばいいだけだ。リヴィを狙うなんて許さん。俺がそいつを殺す。」
「クロア、平和条約が結ばれるんだからそんな物騒な事しちゃだめだよ……。」
「そうだな。俺とクロア、リヴィリカで犯人を見つけ出すぞ。」
私達3人はお互い頷き合い、犯人捜しをすることになった。




