番外編 悪魔に魂を売った海賊 3
外からは銃声や剣と剣がぶつかり合うような金属音がしてくる……すると、ドアが開き1人の男性が入ってきた。
赤い髪で片目を隠した、少し顔色の悪い男は私を見たまま隣にいるカルバさんに話しかけた。
「カルバ。神殿のやつらが来ている。だが、相手を見る限りこちらの要求を飲んでくれないようだ」
「じゃあ、派手にやり合うことになりそうか??」
「ああ。すまないが、お前も加勢しに行ってくれないか」
「俺はこのお嬢さんの見張りを命じられている」
「マーレから見張りは俺に代わるように言われているからお前は行ってくれ」
「……わかった。イザック、後は頼む」
カルバさんはその男性を少し不信そうに見てから、部屋から出て行ってしまった。
そして私はイザックという男と二人きりになってしまった……この男からはなにか禍々しい気配がする。
「お前はただの聖職者か??それとも、価値のある魂を持っているのか??」
「……??言っている意味が分かりません」
「おい、こいつの魂は使えるのか??」
「”うーん、器は申し分ない。だが、まだ中身が空っぽだな”」
「ふむ……では、まだ殺さないほうが良さそうだな」
「一体誰と話しているの??」
イザックが誰かに問いかけると、どこからか声が聞こえてくる。
殺す、という物騒な単語が聞こえて私は思わず身構えた。
「”この器……もしかして聖女か??だったら駄目だな。すぐ殺そう……魔王様に盾突く聖職者は消すようにと言われているからなぁ”」
「だが、俺達の野望を叶えるためには、魂を回収し運命のタロットを完成させなければ」
「”……それもそうだな。タロットがそろえば魔王様の命令を聞かなくても済むしな”」
「では、この少女は後にして神官長の魂は回収しよう」
神官長……ランフェル様の事をいっているのだろうか??
すると、イザックは一枚のカードを私の目の前に差し出してきた……そのカードには赤いフードを被った悪魔のイラストが描かれていた……目を離すことが出来ず見ていると、悪魔のギザギザの口がニヤリと歪んだ。
「”さぁ、お前の手で神官長を殺せ。そして魂を抜き取るんだ”」
「……!!」
悪魔にそう言われると、自分の意識が遠のいていく感覚に陥った。
そして体が自分の意思に反して動き始めて、声も出せなくなってしまった。
「神官長に近づき、このナイフで神官長の心臓を突き刺せ。”法王”の魂を手に入れろ。」
「はい……。」
イザックが私に一本のナイフを渡してくる……私はそれを受け取りドアを開けて騒ぎが起こっている方向へと足を勧めた。
「おいおい!!神に仕える者がこんな荒事していいのかよ!?」
「もちろんです。貴方の事は悪と判断しましたので。徹底的に罰する事が出来ます。」
「可愛い顔して随分物騒なんだな!!てっきり大人しくこちらの要望を聞いてくれると思ったんだが!!」
甲板に外に出ると、ランフェル様率いるステラエーンの聖職者たちと数名の衛兵が海賊達と戦っていた。
私は辺りを見渡して標的を探す……マーレと向かい合っているランフェル様を見つける。
「リヴィリカ!?無事だったのですね!!」
「チッ、なんで大事な人質がこんなところにいるんだ。って、カルバ!!なんでお前がここにいる!!」
「はぁ!?船長がこっちに来て加勢しろって言ったんだろうが!!」
「あ”??誰もそんなこと言ってねぇよ!!」
私は一目散にランフェル様に向かって走る……そして隠し持っていたナイフを彼の心臓めがけて突き刺した。
だが、バリアに阻まれナイフを持った腕は跳ね返された。
「リヴィリカ??一体どうしたのです??」
「どうなってやがる……??」
私は何度もランフェル様の急所めがけてナイフを振り下ろす……だけど全然当たらない。
そうこうしているとマーレが私の背後に周り、腕を掴んだ。
「どうしちまったんだ??あんたら仲良しじゃねぇのかよ。」
「何言ってるんです。私とリヴィリカはとっても仲良しさんですよ。……どうやら何かに操られているようですね。」
「操られてる??一体誰に……。っ!!」
すると、腕を掴んでいたマーレの力が弱まって解放される……何気なく後ろを見ると、そこには脇腹から血を流して膝をつくマーレの姿があった。
後方を見ると、イザックが赤く染まったナイフを持って立っていた。
「マーレ、邪魔しないでくれ。この少女なら隙をついて簡単に神官長を殺してくれると思ったのだが……うまくいかないな。」
「貴方のその気配……悪魔に魂を売っていますね??」
ランフェル様が言うと、イザックの影が空中に浮かび上がり不気味な黒いモヤが集まり始める。
すると私が先ほど見たカードと同じ、赤いフードを被った悪魔が現れる……骨のような不気味な手には血がこびり付いたナイフが握られている。
フードの中身は相変わらず不気味な口だけが浮かび上がっていた。
「”思った通り、面白い魂だ。しかも再生と死の女神の加護を受けている……是非とも手に入れたい”」
「魂……??ああ、西の国で魂が抜かれる者が多発しているとベネディッタが手紙で言っていましたね」
「西の国の価値ある魂はある程度狩り尽くしてしまったからな……ステラエーンや聖都で他の魂を狩ろうと思ってね」
そう言っている間にもイザックの背後にいる悪魔は、近くの海賊達に襲い掛かると海賊たちは人形のように倒れていく。
イザックが私に向かって手を掲げると、再び体が勝手に動き持っているナイフは私の首元に当てられた。
「さて、神官長の魂を頂こうか。そうすればこの少女の命は助かるぞ??」
「……いいでしょう」
ランフェル様は少し下を見ながら、覚悟を決めたように顔を上げた。
そして私の前に来ると私を真っすぐ見つめる……いやだ、私、ランフェル様に手を掛けるなんて。
すると、ランフェル様は優しく笑うと私に言った。
「大丈夫ですよ。すぐに貴女を解放してあげますからね。」
「これで法王の魂が手に入る!!そうすればあと一つ、あと一つ手に入れれば俺は魔王より邪悪な王になれる……!!」
ナイフを握る手を震わせながら私は思いっきり振り上げた……すると、私のすぐ後ろにいたマーレが銃を撃つとその弾は明確にナイフに当たり、ナイフは空高く弾かれ海へと落ちていった。
「よく出来ました。……リヴィリカ、すぐ自由にしてあげますからね。」
「……!!ランフェル様、私……!!」
ランフェル様が私の額らへんに手をかざすと、小さな声で何かを囁くとぼんやりとしていた意識がはっきりとしてくる。
すると、悪魔の服従の魔法が解けて身体を自由に動かせるようになった。
マーレ編が終わらない・・・。
これが初めての魔王の手下との遭遇。




