第四十七話 髪飾りの秘密
レチェリアさんは睨みつけるようにして私達を見ていた。
銀髪の髪に緑と黄色の宝石がついた髪飾りをつけていて、深い緑のドレスを着ていた。
部屋中には分厚い本が散乱していて机にも床にも大量の本が置かれている。
「よくも……よくもやってくれたわね……。今更なんなの??あの子を連れてこないでノコノコと貴女達だけ助かって……!!返しなさいよ……あの子をっ!!私の大事な半身を……!!」
「……ご、ごめんなさい。でも必ず見つけてっ……!!」
私がそういうとレチェリアさんは手元にあって本を少し涙目になりながら私に投げつけてきた。
当たる前にクロアがその本を手で受け止めてくれたから当たることはなかった。
レチェリアさんがもう一冊本を投げようと振り上げたが、ルカが彼女の着けていた髪飾りを銜えて奪い取ると、そのまま部屋の外へ走って行ってしまった。
ルカとすれ違いで、騒ぎを聞きつけてきたのであろうジェイミさんが慌てた様子で部屋に入ってくる。
「何の騒ぎですか!?……姫様大丈夫ですか??お二人とも、無理矢理面会しなくていいと国王陛下に言われたのではないのですか??それをこんな……!!」
「すみませんっ。ルカがドアを……!!」
「もういいのでお二人は早くここから出て行ってください!!この事は国王陛下にお伝えさせていただきます!!」
崩れ落ちるように座り込んだレチェリアさんを守るようにジェイミさんが肩に手をまわし声を掛けている。
私は申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、レチェリアさんの小さな泣き声を聞きながらその場をあとにした……。
「すごく大変な事しちゃった……嫌われちゃったよね……。」
「いきなり会ってレチェリアも困惑してあんな態度になってしまったのかもしれない。」
私達は国王陛下に事情を話して、ルカがドアを壊したことを話した。
少し困惑した様子だったがとりあえず私達を信じてくれた……だがしばらく部屋から出ない様にと言われた。
「”姉は勉強熱心で、妹はお転婆で雪原を走り回っていた”……か。」
「どうしたの??……ってその本持ってきちゃったの??」
クロアがぽつりと独り言のように話して、手元にあった本をめくっていた……その本はさっき私に投げられた分厚い本だった。
表紙から難しそうな気配がする本で、題名は”フランジェ国~国家の繁栄~”と書かれている。
私が今いる部屋はかつて、レチェリアさんが使っていたらしい……辺りを見渡し机の上の”ティト大陸に生息する動物”という本を見つけて開いた。
本には沢山の動物の名前とイラストが載っていて、手書きでその動物の特徴などが書き足されていた。
他の本もフランジェ国一帯の地図や、植物図鑑などがあって、先ほどの塔の部屋の本とジャンルの違っている……。
ドアが開く音がして振り向くとそこには走り去ってしまったルカがレチェリアさんの髪飾りを銜えたまま部屋へ入ってきて、私に差し出すような仕草をした。
「これ、レチェリアさんの……、ルカ駄目だよ、これは2人を見分けるための大事な……あれ??」
『この髪飾りはね、私が私っていう証なの。小さい頃から、私達の両親すらどっちがどっちだか見分けられなくってね。』
『今でも十分見分けられないけど……2人とも本当に瓜二つだから。』
『そうでしょ!!だから、誰でも見分けられるようにルフェリアは青と紫、私は緑と黄色の宝石の付いた髪飾りを付けているの』
『……でも、この前入れ替わってたでしょ??ルカがレチェリアに向かって威嚇するはずないわ。』
『あれ??ばれちゃった??この子の嗅覚はどうしてもごまかせないんだよね。ルカもルフェにはどうしてか懐かないし……。』
「そうだ、ルカがレチェリアに威嚇するはずがない。2人はもしかして……??」
「リヴィ??何か思い出したのか??」
「うん……。昔レチェリアが教えてくれたんだ。そっくりな双子を見分ける方法。それと、ルカはルフェリアさんには懐いていなかったって……。」
昔、レチェリアがこっそり教えてくれた秘密……レチェリアは勉強が嫌いでよくルフェリアさんに頼んで髪飾りを交換して自分は雪原に出掛けていると言っていた。
もしも、これが本当ならば、あの人はレチェリアではないのかもしれない。
すると、ドアがノックされて1人のメイドさんが軽食などを乗せたキッチンワゴンを引いて部屋の中に入って来た。
「軽食をお持ちしました。ご用意してもよろしいですか??」
「あ、はい。お願いします。」
メイドさんはテキパキとワゴンに乗った食器や食べ物をテーブルに用意していく。
最後に紅茶を入れてもらったタイミングで私はメイドさんにレチェリアさんのことについて聞いてみた。
「あの、レチェリアさんについて気になったことはありませんか??」
「レチェリア様ですか??……申し訳ありません。私は3年前からお城に勤め始めましたのでレチェリア様のお姿を見た事もお話をしたこともないんです。」
「その時にはすでにレチェリアさんは塔の部屋に閉じこもっていたんですよね。」
「ええ……。それに噂ではルフェリア様が勇者一行様と旅に出てすぐお二人の使用人が大量に辞めさせられたようです。」
「じゃあ、双子の王女様のことを詳しく知ってる使用人はいないんですか??」
「いえ、おひとりだけ。メイド長のジェイミさんは幼少期からお二人のことを知っていると思います。」
そう言うとメイドさんは、「また後でお下げに来ます」と言って部屋から出て行った。
どうして大量に使用人を辞めさせたのだろうか……一度ジェイミさんにも話を聞いた方が良さそうだ。
私がずっと髪飾りを見つめて考えていると、クロアが用意された軽食のサンドイッチを私の口元に近づけてきた。
「ほら、折角用意してくれたんだ。」
「うん、ありがとう。……おいしい、イチゴとクリームが挟まってる。」
「これも食べろ。」
「……あの、もう自分で食べれるから。だから食べさせてくれなくていいから。」
私が小さなスコーンを取ろうとする前にクロアが手を伸ばし、それを自分で食べるのではなく私の口元に持ってくる。
私は複雑な顔をしながら大人しく口を開けてスコーンを食べた。
もしかして・・・そうかもしれない双子の秘密。
番外編を書いていたら本編書くのが遅くなりました。
次の番外編はマーレとの出会い。




