第四十六話 ウルフの友達
興奮気味に私に頭をなすりつけてきたウルフを撫でているとようやく少し落ち着いたようだ。
私はクロアに手を貸してもらって立たせてもらい、もう一度ウルフを見る。
人が乗れそうな大きな肢体に美しい銀色の毛並み、首にはシンプルながらも豪華な素材の皮の首輪がされていた。
「ルカが迷惑をかけてしまったな。怪我はないかな??」
「はい、大丈夫です。この子は……??」
「このフローズンウルフはレチェリアが相棒にしていた子です。よくこの子に乗って雪原に行っていたわ。」
「この子があの時、レチェリアを乗せてたウルフだったんだ。」
そう話している間もウルフ……ルカと名付けられたウルフは私の周りをグルグル回り、私から離れようとしない。
「ルフェリアが旅立った後、レチェリアがルカを犬舎に入れるようにと言ったようなんだ。」
「レチェリアさんが……??」
私が夢で見たレチェリアさんは何よりもこのウルフを大事にしていたはず……なのにどうして。
私はウルフの瞳をじっと見つめた……微かに悲しそうな目をしているような気がした。
「確か以前にもリヴィリカちゃんとレチェリア、そしてルカの3人で仲良くいるところをよく見たわ。だからきっとリヴィリカちゃんの匂いを嗅ぎ分けて会いに来たのね。」
「そうだったんですね……。あの、ルカと一緒に遊んでもいいですか??」
「もちろん。ルカもリヴィリカ殿に会えて嬉しそうだ。是非遊んでやってくれ。」
「ありがとうございます!!ルカ、私の事覚えててくれたの??」
当たり前、と言わんばかりにルカは再び私に身体を摺り寄せてきた。
でも、どうしてレチェリアさんはルカを遠ざけたんだろう……あんなに仲良しだったのに。
「ルカ!!おいで!!」
「ワンっ!!」
「リヴィ、あまり走るとこけるぞ。」
私はルカを連れて庭でボール遊びなどをした。
ルカは遊んで貰えて嬉しいのか時々私に軽く突進をしてきたり身体を摺り寄せてくる。
そんな姿が可愛くて私は雪まみれになるのを気にせずルカ遊んだ。
疲れたので、一度部屋へ戻ったがその間もルカはずっと私の傍を離れなかった。
雪空の下で冷えた体を暖めるため暖炉の前に座ると、ルカも私を包み込むように身体を丸めて座った……ふわふわのクッションみたい。
少し休憩してから、私達はレチェリアさんに会うためにお世話係のメイドさんを探す。
「貴女がレチェリアさんのお世話係のジェイミさんですか??レチェリアさんにお会いしたいのですが。」
「かしこまりました。レチェリア様にそうお伝えしておきますので少々お待ちいただけますか??」
そしてしばらくするとジェイミさんが戻って来た。
「申し訳ありません。レチェリア様はお二人にはお会いしたくないと申しておりまして……。」
「そうですか。また後日来てもいいでしょうか??」
「レチェリア様のお気持ちは変わらないと思います。……では、私はこれで失礼いたします。」
ジェイミさんは自分の仕事へと戻って行った。
やはり、会ってもらえなかった……。
「今日は諦めてまた明日も会えるか聞いてみよう。」
「そうだな……。」
「あれ??ルカ??」
すると、隣にいたはずのルカがどこにもいない。
周りを見渡すと、ルカの尻尾がレチェリアさんのいる塔へと続いている廊下の曲がり角に吸い込まれていった。
「ま、待ってルカ!!そっちに行っちゃだめだよ!!」
「リヴィ、追いかけるか??」
「うん。ルカを連れ戻そう!!」
私達は走り出したルカを追って塔の階段を駆け上がっていく。
少し薄暗く、そして冷たい石の階段はどこまでも続いているかのような感覚になってくる。
塔の一番上に着くと、こじんまりとしたドアの前でルカが座っていた。
「ルカ!!だめだよ、さぁ、戻ろう??」
「グルルルル……。」
「ルカ??どうしたの??」
ルカはドアに向かって唸っている……いや、ドアの向こう側のレチェリアさんに唸ってる??
すると、ルカは両前足を振り上げドアを強く押す。
「ルカ!!ドアが壊れるからやめて!!」
「おい、もうやめろ。」
私とクロアが2人でルカを止めようとするが勢いは止まらずついにドアが壊れそのまま倒れて埃が舞った。
舞い上がった埃で視界が悪かったが徐々に視界が鮮明になってきた。
そこには顔色が強張った、美しい長い銀髪に赤い瞳をした豪華なドレスを着ているレチェリアさんがこちらを睨みつけていた……。
わんちゃんと戯れる話。




