第四十四話 双子の王女
フランジェ国王と王妃様に応接間で詳しく事情を話したい、とのことで場所を移動して話を聞く事になった。
私に記憶が無いので、国王陛下は丁寧に説明してくださった。
「私達には2人の娘がおります。勇者一行に加わった姉のルフェリナ、そして妹のレチェリアです。2人は双子で仲の良い姉妹だったのです。」
「双子さんなんですね。……ねぇ、クロア。私達が初めてフランジェ国に行こうとした道中で助けてくれたのが妹さんのレチェリアさんだよね??」
「ああ。まさか、フランジェ国の王女だったとは思いもしなかった。」
「魔物を一撃で倒してたもんね……。」
「レチェリアは少しお転婆に育ってしまったようでね。よく城を抜け出してウルフに乗って雪原を走り回っていたよ。」
そういって陛下は懐かしそうに目を細めて笑った。
結構アグレッシブな王女様だったらしい……。
「だが、姉のルフェリナは少し真逆でね。あの子は政治の事や貿易について国の為になるように勉強を頑張っていてた。私の仕事の補佐をしてくれるほど優秀でね……とても助かっていたんだ。」
「ですので、リヴィリカ様に姉のルフェリナが勇者に選ばれたとお聞きした時はびっくりしましたわ。」
「私がそう言ったのですか??」
「ええ、フランジェ国の姉を勇者一行に加えなさい、と。教皇様からのお言葉だからとおっしゃってましたわね。」
「お姉さんの弓の腕前は妹さんと同じくらいなんですか??」
「いや、幼少期はよく姉妹二人で弓の練習をしていたがしばらくしてルフェリアは弓を触る事すらしなくなったよ……それよりも勉強することを優先していてね。」
「そうですか……。」
また予言書にそう書かれていたのだろうか??
だが、弓の名手のレチェリアさんではなく国の為に勉強をしていたルフェリアさんを勇者に選ぶなんて……。
「レチェリアはきっとショックだったと思うの。自分ではなく姉が勇者に選ばれて……そして、今も帰ってこないことが。」
「リヴィリカ殿、貴女はレチェリアとよく一緒にいて仲が良かったと城の者たちが言っていたのでね。だからぜひ今のあの子に会って話をしてやってくれ。」
「はい、わかりました。私でお力になれるのであればよろこんで。」
「ありがとう。レチェリアに会う時は彼女のメイドに話しかけてくれ。」
お二人は安心したように微笑んだ。
私はそれに了承して、陛下に巡礼地について聞いた。
「あの、出来ればフランジェ国にある巡礼地へ行ってみたいのですが……よろしいですか??」
「その事なんだが、実は先日の大雪で雪崩が起きて巡礼地の入り口が埋もれてしまったのだ。」
「え!?それではもう行くことはできないのでしょうか??」
「冬が過ぎれば雪も解けるだろう……それまで待つしかない。」
「そうですか……。」
記憶を取り戻す手がかりになるであろう巡礼地には冬が過ぎてから行くしかないようだ。
それから軽く会話をしてから私とクロアは客室へと案内された。
「ちょっと不安だったけど、お二人ともいい人でよかった。文書も受け取っていただけたしあとはリデルが来るのを待つだけだね。」
「そうだな。その間に巡礼地に行ければよかったんだが。」
「うん……以前来た時は普通に入れたの??」
「ああ、少し入り口に少し雪が積もっている程度で難なく入れた。」
「タイミングが悪かったってことかな。ちょっと残念。」
私の客室でクロアと紅茶を飲みながらこれからどうするかを話していた。
巡礼地にいけないならば、あとはレチェリアさんに会いに行くこと。
「明日早速、レチェリアさんに会いに行ってみるね。」
「ああ、俺も行こう。……リヴィ、平和条約はまだ完全に制定されたわけではないし、俺達はまだこの国にとっては敵国の人間ということになる。だから1人で行動しないように。」
「うん。わかったよ。」
その日は旅の疲れもあったので、入浴を済ませて体がまだポカポカしているうちに寝る準備を始めた。
ベッドに向かうと、そこにはクロアがシャツとズボンに暖かそうな厚手のカーディガンを着た姿で椅子に座っている……なんで??
「えっと、クロア??自分の部屋にもどったんじゃないの??というか、鍵かけたはずなんだけど!!」
「ああ、怪しいものがないか室内を調べていたんだが……クローゼットを開けたら奥にドアのようなものがあって隣のリヴィの部屋に繋がっていたんだ。」
「なんなのその仕掛け……。」
「なにが起こるかわからない。俺がずっとそばにいるから、リヴィは安心して眠ってくれ。」
「逆に眠れないっ!!クロアも疲れてるでしょ??自分の部屋でベッドで寝て。」
「断る。ほら、早くベッドに入らないと体が冷めるぞ。」
そういってクロアは私に近づき、横抱きにするとベッドの上にゆっくりと下ろして布団をかけると脇に置かれた椅子へ座った。
”夜明けを告げる星の女神”という背表紙に金色の文字で書かれた本を開き読み始める……自分の部屋には戻ってくれないようだ。
「このままずっと朝まで居るの退屈じゃないの??あと寒くないの??」
「リヴィの寝顔を見て本を読んでいればあっという間に朝になるだろう。暖炉もついているしこれぐらいなら寒くはない。」
少し瞼が重くなりながらクロアに話しかけた。
ベッドサイドのランプの淡い光がクロアの顔を照らしている……黒い髪に切れ長の青い瞳は少し伏せられていて、背筋は伸ばし、足を組んで本を読んでいる姿はとても様になっている。
そんな姿を見つめていたら、視線に気づいたクロアは私の頭を何度も優しく撫でてきた。
「さぁ、寝るんだ。明日もやることがあるんだろう??」
「うん……。クロア、おやすみ。」
「ああ、おやすみ。リヴィ、良い夢を。」
頭を撫でてくるクロアの手の暖かさが心地よくて、私はあっという間に眠りへと落ちていった。
その直前に、どこからかウルフの遠吠えが聞こえたような気がした……まるで誰かを呼んでいるかのようなそんな声だった。
やることが多くて時間もあっというまで・・・時間が!足りない!!




