第四十三話 雪の王国
すぐ近くでクロアの声がして目を覚ます……。
乗った時には向かい合わせで座っていたはずだが、いつの間にかクロアが隣にきていて寄り掛かるようにして眠っていた……どうりで暖かい訳だ。
「リヴィ、そろそろフランジェ王国だ。」
「うん……、ごめん、寝ちゃってた。」
前にもこんな夢を見た気がする……恐らく私の記憶だ。
あの銀髪の女性は私の探している二人目の勇者なのだろうか??
「ほら、外を見て見ろ。」
「ここがフランジェ国なのね。」
雪原しかない景色から少しずつ等間隔に生えた木々がある道の先には大きな外壁に囲まれていてる王国が見せてきた。
外壁と同じ高さの大きな門の前で馬車が止まると、門番と馬車の男性が話しているのが聞こえる。
「お二人とも、一度馬車から出ていただけますか??お顔を確認したいようですので。」
「はい。わかりました。」
馬車から下りると、20人程の鎧を着た兵士がずらりと整列していた。
すると一際目立つ鎧を着た兵士さんが私達に向かって敬礼した。
「ようこそ、フランジェ王国へ。心よりお待ちしておりました。」
「ありがとうございます。聖都ガルンハルト国王陛下リデル様の命で使者として参りました。これからご厄介になります。」
「さぁ、慣れない寒さで身体が冷えては大変です。違う馬車を用意しておりますのでそちらへ。」
ずらりと並んだ兵士さんの奥に豪華な装飾のされている馬車が止まっていてそれに乗るようにと言われる。
私は先ほどまで馬車に乗せてくれた男性に向かい合う。
「ここまで案内して頂きありがとうございました!!」
「いいえ、こちらこそ。フランジェ国には寒さ以外にもいい所が沢山ありますので是非楽しんでいってくださいね。」
「はい!!」
そしてクロアに手を貸してもらいながら、馬車に乗り込む。
私は馬車の窓から、雪が積もる街をぼんやりと見つめているとなんだか懐かしいような気持になった。
馬車で街の奥へと進んでいくと、大きなお城が見えてくる。
雪の結晶をモチーフしているであろう王家の紋章が付けられている門を通り、膨大な広さの庭園を進んでいくと城門の前で馬車が止まった。
「到着いたしました。お足元に気をつけて、お降りください。」
「ありがとうございます。」
馬車から下りると、国王様のいる王座の間へと通された。
王座の間には、白銀の髪と赤い瞳にロイヤルブルーのマントを羽織った国王様と、その隣には同じように白銀の髪に薄紫の瞳の美しいドレスを纏った王妃様がいらっしゃった。
「ようこそ、リヴィリカ殿、それにクロア殿。遠路はるばるよく来てくれた。」
「陛下もわたくしも貴方方にまた会えるのを楽しみにしていたのです。」
「申し訳ございません。……私は記憶を失っていて、今少しずつ思い出している最中なのです。ですのでお二人の事も……。」
とても快く出迎えてくださったが、やはり私は全くお二人の事を思い出すことが出来なかった。
思わず俯いてしまった私に2人が近づいてきた。
「ああ、噂は本当だったのだな。ならばゆっくり思い出せばよい。」
「そうですよ。私達は嬉しいのです。貴女にこうしてまた会えたことが。」
王妃様が両手で私の顔を包み込まれるようにしてゆっくり顔を上げると優しく微笑むお二人の姿があった。
「それに、君は他の勇者を探そうとしているらしいね??……私達はもう諦めてしまったというのに。」
「……私は自分の目で見て確かめるまで3人の事を諦めません。絶対に。」
「ありがとう……。どうか娘を見つけてやってくれ。」
「はいっ。」
国王様は真っすぐな瞳で少し声を震わせていた……。
私の返答に優しい眼差しで頷くと、国王陛下が本題へ入った。
「さて、リデル陛下からの平和条約の文書を頂けるかな??」
「あっ、申し訳ありませんでした!!こちらになります。」
一番大事なものを渡していなかった……急いでバッグから文書を取り出し、お渡しする。
するとその場で文書を広げると満足げに頷いてから大臣のような人に文書を渡した。
「確かに受け取った。平和条約を締結しよう。……ようやく長らく続いていた戦に終止符を打つことが出来る。」
「ありがとうございます。私達も国と国が平和になる事がとても嬉しいです」
これで戦争が終わる……本当によかった。
リデルから聞いたところによると、今代のフランジェ国王は終戦を望んでいたが聖都の先代、リデルのお父様が頑なに終戦を拒んでいたのだとか。
「それからリヴィリカ殿に頼みがあるのだが……聞いてくれるだろうか??」
「はい、なんでしょうか??」
「どうか、レチェリアに会って話をしてやってほしい。」
フランジェ国王は少し複雑そうな顔をして私にそう言った。
レチェリア……??私は先ほどの夢でそう呼ばれていた銀髪の女性を思い浮かばせた……彼女のことだろうか??




