第三十九話 妖精の仕立て屋
カミールさんにマナー講座の日時などを指定してもらい、早速明日から始まるようだ。
「覚えておいて欲しい最小限の事をまとめておきましたので、明日までに軽く目を通しておいてください」と渡された紙の束は結構な分厚さだった、これで最小限??
「リヴィリカ、今日はお使いを頼みたいんだ」
「お使い??いいけど……どこにいけばいいの??」
「昨日から”フェアリーエデン”の店主が来ているんだろう??その子にこの紙を渡してほしい」
そういうと、リデルは1封の封筒を渡してくる。
裏面を見ると、王家の紋章の封蝋がされていた。
「まかせて、ちゃんと渡すね」
「ああ。今日の仕事はそれだけなんだ。あとの時間は自由にしていて構わないよ」
私は頷いて執務室を出る。
クロアはリデルに何かを話していたらしく少し遅れて部屋から出てきた。
「待たせたな、行くぞ」
「うん。リデルと何話してたの??」
「ああ……リヴィ、今日は城に泊ってくれ。家に1人でいるよりは安全だろう」
「さっきの話の事??ちょっと心配しすぎじゃない??私達が狙われる様子は今の所ないし……」
「念には念を、だ。いいな??」
私は頷き、フェアリーエデンのお店へと向かう。
お店に着くと沢山の人々で賑わっていた……流石人気のお店。
チラチラとお店の中から外を気にするノエルちゃんと目が合ったので手を振る。
昨日はエプロンドレス姿だったけど、今日はブラウスとショート丈のワンピース、ミドル丈のコートを羽織っていて大人っぽい雰囲気が出ていた。
「リヴィリカ様!!いらっしゃい!!」
「こんにちは、ノエルちゃん。渡したい物があるんだけど今大丈夫??」
「もちろん!!裏に工房があるのでそこでお話を聞きますね!!」
「リヴィ、俺は騎士団に戻る。あとで迎えの者を来させるようにするから1人では出歩かない様に」
「わかった!!お仕事がんばってね」
クロアは一瞬私の腕に抱き着いているノエルちゃんをちらりと見てから騎士団のある方向へと歩いていった。
立ち去るクロアを見て、ノエルちゃんは少し不敵に笑っていた。
「やった、今日はリヴィリカ様とゆっくりお話しできますね」
「クロアの態度が悪くて申し訳ない……」
「まぁ、それほどリヴィリカ様の事を大切に思っているという事ですね。少し鬱陶しいですけど」
ノエルちゃんは楽しそうに笑って私をお店の工房へと案内してくれた。
工房の中は少しの薬品の臭いと瑞々しいいろんな花の香りが漂い、ビーカーやフラスコ、アルコールランプなどが机の上に置かれている。
「ようこそ!!私の自慢の工房へ!!」
「わぁ、いろんなものがあるんだね」
するとノエルちゃんがいろんなものを見せてくれた。
とある薬品を花に垂らすと花が透明感ある宝石に変化したり、鍋で花びらを煮込み他の材料を入れるとキラキラと輝くボディクリームが出来たり……錬金術は初めて見たのでとても興味深かった。
「実はこの手紙をフェアリーエデンの店主に渡してほしいって、リデル……じゃない国王陛下から言われたの」
「国王様から??……ふむふむ、なるほど」
「なんて書いてあるの??」
「アクセサリーを作ってほしいみたいですね、特注で。……リヴィリカ様の好きな色とかデザインにして欲しいみたいですよ??」
「え、私の??」
「リヴィリカ様がパーティーで身に付けるアクセサリーを作成して欲しい、とのことです」
その手紙を見せてもらうと、髪飾り、ネックレス、ピアス、指輪、ブレスレットなどの作成して欲しい物のリストが書かれていた。
「リヴィリカ様に身に付けて戴けるアクセサリーの作成に携わる事が出来るなんて……私も腕が鳴ります!!」
「私こそ、ノエルちゃんの素敵なアクセサリーを作ってもらえて嬉しい!!」
「じゃあ、早速リヴィリカ様の好きなデザインを教えてください。あとは好きな色とかモチーフ……、ああ、アクセサリーだけではなくドレスも全てコーディネイトして差し上げたい……!!」
「服関係のものも取り扱ってるの??」
「はい。染料になる花の栽培もやっていますので。といっても最近取り組み始めたのでストールとか小さな物しか売り出してはいないんですけど……」
「すごい……。ノエルちゃんは何でも作り出しちゃうんだね」
「ちょっと待っててください」、と言うとノエルちゃんは工房を出て1人の女性を連れてきた。
黒い髪を上品に結い上げ、つばの広い飾りの沢山着いた帽子に、赤スグリ色のジャケットとマーメイドドレスを着た貴婦人が現れた。
「リヴィリカ様、こちらはヴィオラさんです。前職は王宮御用達の仕立て屋さんで働いていたすごい人なんですよ」
「マスター??そんな大袈裟に紹介しないでくださる??初めまして、ヴィオラと申します」
「初めまして、よろしくお願いします」
ヴィオラさんはルージュの引かれた唇を上品に吊り上げにこやかに挨拶してくれた。
「失礼、少しお体を触っても??」
「え??構いませんが……??ひゃっ」
ヴィオラさんが断りを入れてから私の体を軽く叩くように触っていく……そして、首の後ろの髪の毛を持ち上げると、スススっと首筋を撫でられ、ひんやりとしたヴィオラさんの指先にびっくりして声が出てしまった。
「あらあら、可愛い。こんな可憐なお方に似合うドレスを是非私の手で作り上げたいですわぁ」
「じゃあ、ドレスの製作もリデル国王に言って許可して貰いましょう!!」
「ええ、ええ、パーティーで一番注目される素敵なドレスを作って見せますわ」
「うちで作ったドレスとアクセサリーを身に付けるリヴィリカ様……きっと誰よりも素敵なはず!!」
「えっ!?素敵なドレスを作ってくれるのはありがたいけどあんまり目立つのはちょっと……」
私の言葉は興奮気味にデザインなどを話し始めた2人には聞こえていないようだ……。
でも、2人の作るアクセサリーやドレスの完成が楽しみだ。
「私達の商品を完璧に着こなすリヴィリカ様!!パーティーで注目の的に!!そして……」
「「私達の商品の宣伝も出来る!!一石二鳥!!」」
どうやら自分たちの店の商品の宣伝にもなると計画しているらしい。
すごい商人魂……2人の周りに炎が出てるんじゃないかってぐらいの熱意を感じた。
あともう少しで日常編がおわる・・・はずです!!




