第三十八話 とっておき
クロアとマークスさんと城下の巡回をし、暗くなる前には騎士団に戻ってくることが出来た。
クロアが報告書を書くから少し待っていてくれと言われたので、ヘーゼルさんの元を訪れて看護係の仕事を少し教えてもらう。
丁度、訓練中に怪我をした人がいたので回復魔法で治療をした。
「リヴィ、待たせたな。帰るぞ」
「うん、わかった!!ヘーゼルさん、いろいろ教えてくれてありがとうございます」
「いえいえ、今後はこのようにお願いしますね。一日、お疲れさまでした」
ヘーゼルさんに別れを告げてクロアと騎士団をあとにする。
外に出ると空は綺麗な夕暮れになっていた。
「リヴィ、騎士団での業務はどうだった??」
「大変だったけど、楽しかったよ。模擬戦も貴重な経験だったし、ノエルちゃんにも会えて嬉しかった」
「……そうか」
初めての騎士団勤務はとても充実した一日になった。
ノエルちゃんとも会う約束をすることが出来たので後日が楽しみだ。
翌日になると、クロアは午後から明日の朝まで騎士団で勤務で家には帰ってこないようだ。
私がリアムの執務室に行こうとすると、俺も一緒に行くと言われた。
「クロアは夜勤もあるんでしょう??午前中だけでもゆっくりしてて」
「問題ない。一緒に行くからな」
頑なに一緒に行くというクロアと一緒にお城へと向かう。
執務室に入室すると、すでにリデルが書斎机で書類に目を通していた。
「おはよう。リデル、今日もよろしくね」
「ああ、おはよう。それで、なんでクロアも一緒なんだ??」
「別にいいだろ」
「そろそろリヴィリカ離れしたらどうなんだ……??まぁ、いいや。丁度2人に聞いてもらいたいことがあるんだ。以前話していたとっておきについて」
リデルは書斎机から1枚の紙を取り出す。
そこには沢山の文字が書かれていた書類の最初の方に”平和条約”と書かれていた。
「我が国は何十年も前からフランジェ国と敵対していた。だが啀み合うのはもうこりごりだ。だから俺はフランジェ国と和解し、戦争を終わらせたいと思ってる」
「そっか、やっと国と国の平和が訪れるんだね」
「……だからまず、リヴィリカとクロアでこの文書をフランジェ国の国王に渡して欲しいんだ。我が国の平和の使者として」
リデルが真剣な眼差しで言ってきた。
まだか”とっておき”がここまで大事だったとは……。
「もちろん。私達で平和な世界になる手助けが出来るならよろこんで」
「ありがとう。それから教皇の住居の近くを調べさせたのだが、少し気になることがあってね」
リデルは教皇様を暗殺したのは敵国の教団の者じゃないか、ということを教えてくれた。
そして裏で暗殺者を雇っている、ただの教団ではないという事も。
「今は何とも言えないが、こちらに危険が及ばない……とは言い切れない。だから警戒を怠らない様にして欲しい」
「そんなことが……。何も起こらなければいいんだけど」
「問題ない、リヴィは俺が守る」
「頼むぞ、クロア。」
これでフランジェ国と平和条約が成立すれば、2つ目以降の巡礼地にも行きやすくなるに違いない。
私の記憶の手がかりと、3人を探すためにも……。
「一応、前もってフランジェ国王には平和条約のことは手紙で知らせてある。今の所、前向きに検討してくれているようだ」
「そっか、よかった」
「正式に和解に応じてもらえたら、俺がフランジェ国に赴き調印することになっている」
「国王自ら敵国に乗り込むのか??せめてステラエーンで両国王が調印したほうがいいのでは??」
「厄介な海流があるからな。それこそ向こう側は警戒するだろう」
そういえば忘れてた……海流がすごくて普通の船では沈没してしまうし、そんな場所を通って行くのはフランジェ国にとって不信感しかないだろう。
「というわけで、出発する日時はまた決まっていないから改めて伝える。……それから」
「まだ何かあるの??」
「平和条約が結ばれれば、あちらでパーティーが開催される可能性もある。そこで、2人には残りの時間で最低限のマナーを身に付けてもらうぞ」
「それって……」
「国のお偉いさんが集まるからな。もちろんお前達も強制参加になるだろう」
今、私とクロアはきっと同じ顔をしていると思う……。
私達の顔を見たリデルがふっと笑った。
「お前達、同じ顔で嫌だなーって顔しても無駄だぞ。……おい、なんだその意味深な相槌は。どさくさに紛れてパーティーを抜け出すとか考えてないだろうな??」
「な、なんでバレたの……」
私とクロアは、最悪パーティーを抜け出そうね、そうだな、と目と目で通じ合いお互い頷いたがリデルに見破られてしまった……。
これから忙しくなりそうだ。
とっておき発動しました。
でも出発するのはもうちょっとしてからのようです。
次回、女子会の前編です。




