第三十七話 小さな錬金術師との再会
午前の訓練が終わり、午後からは街の巡回をする。
一組4人に分かれてこの大きな城下町を周るらしい……確かにこの広さだと結構な人数が居ないと大変そうだ。
「では、各自担当の区域の巡回を頼む」
「「「はい!!」」」
騎士団の入り口に集まった隊員はそれぞれの担当区域へと散っていく。
残ったのはクロアと私、それからマークスさんだ。
勝利の余韻にまだ浸っているマークスさんのほわほわした顔を見たクロアが小さく舌打ちしたのを私は聞き逃さなかった。
「いつも俺とマークスの2人で巡回をしているんだ」
「またよろしくお願いします、マークスさん」
「はい、よろしくお願いします。じゃあ行きましょうか」
私達が向かっているのは城下の商店街だ。
他国からの貿易商も来ていてとても活気がある……だが、稀にその貿易商同士で喧嘩が発生して荒れる事があるのでこの区域はより目を光らせるようにしているようだ。
「でも最近、隊長がこの区域担当になってから大分落ち着きましたよね」
「え??どうして??」
「第一部隊に隊長が任命されてその直後に2人組の大きな喧嘩があったんですよ、他のお店もぶっ壊しそうな勢いで……その時に隊長が喧嘩してた2人を素手でぶっ飛ばして、頭を鷲掴みにした時は怖かったなー。いい歳した大柄なおっさんが隊長に見下ろされて震え上がってましたからね」
「……クロアの怒った顔怖いからね。ちょっとその人達が可哀そう」
「でもそのお陰で、皆さん大人しくルールを守って商売してくれてますからね。結果オーライです」
190㎝ほどの長身に、冷たい目で見下ろされ、馬鹿力で頭を鷲掴み……絶対に怖い。
それ以来、騎士団の第一部隊長には絶対に逆らうな、と貿易商の中では噂されているようだ。
「あれ……この香りどこかで……」
「どうかしたか??」
とあるお店の前を通り過ぎようとすると、シャロンの村を思い出すような香りがしてくる。
そこには店先を花で華やかに飾ったお店があった……看板には”フェアリーエデン”と書かれている。
私がふと、お店の窓から中を見るとそこには私の姿を見て手に持っていた籠を落とす少女の姿があった。
その少女はお店のドアを勢い良く開けてこちらへ走ってくる。
「リヴィリカ様!!」
「もしかして……ノエルちゃん!?」
「はい!!お久しぶりです!!やっと会えた!!」
ブルーブラックの髪を低い位置でツイン団子に結び、薄い青色の瞳をキラキラとさせた少女……ノエルちゃんが勢いよく私に抱き着く。
少し足元がふらついたが、私よりも少し小さな少女を思いっきり抱き締める。
「お久しぶり!!大きくなったね!!会えて嬉しいよ」
「えへへ……まさかこんなに早く会えるなんて」
ノエルちゃんは私を見上げる。
改めてノエルちゃんの顔を見ると、4年前の面影がありつつも大人びた印象の少女になっていた。
「いつから聖都に来てるの??」
「今朝着いたばかりなんです。前回仕入れた品物が全て売り切れてしまったので、今日はお休みしてちゃんと準備して、また明日から営業しようと思って!!」
「そうだったんだ。じゃあ今日はまだ忙しいよね。……邪魔しちゃうと悪いから後日また遊びに来るよ」
「邪魔だなんて思いませんよ!!私リヴィリカ様にお話ししたいことが沢山あるんです!!」
お店の中では従業員の人達が慌ただしく動いているし、これ以上は邪魔になってしまうだろう。
私も騎士団の仕事中だし……でも、ノエルちゃんはより強く抱き着いてきて離れてくれない。
「悪いがリヴィは俺達と巡回の途中なんだ。さぁ、離れてもらおう」
「あら、クロア様じゃありませんか。ご機嫌よう。いやです、離れません」
「おい、いい加減にしろ」
クロアが不機嫌そうに言うが、ノエルちゃんは私に抱き着きながら反論する。
すると2人が睨み合いを始める……私はため息をついてノエルちゃんの頭を撫でで言い聞かせた。
「ノエルちゃんごめんね。私達まだ業務中だから、もう行かなきゃ。……ちゃんと後日に来るから、その時に沢山お話しよう??」
「……絶対ですよ??」
「うん、約束ね」
ノエルちゃんはちょっと拗ねた顔のまま私から離れた。
私はそっと小指を差し出すと、ノエルちゃんは自身の小指を絡める。
「……もしすぐに会いに来なかったら激マズノエルスペシャルですからね」
「え、まだあの殺人兵器が存在してるの!?もうそれ封印したほうがいいよ……」
「待ってますからね。では!!」
なんだか懐かしくて、それと同時に恐怖心が蘇った……絶対会いに来ないと。
手を振って店の中に入っていくノエルちゃんに手を振り返す。
「へぇ、あの子が人気店のトップですか。あんなに若いのにすごいですね」
「ですよね。今度お話しするのが楽しみ」
「巡回を再開するぞ。このままではリヴィと俺が定時に帰れないだろう」
「……隊長も相変わらずでしたね。しかもあんな小さい子にも突っかかって……」
「……大人げないですよね、ほんと」
先に歩き出したクロアの背中を見ながら、私とマークスさんはため息をついた……。
小さな子にも嫉妬するクロア・・・私は好きですよ??
ノエルちゃんにはまだ登場してもらいますよ~。




