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星屑の聖女  作者: 夜桜 メル
第二章
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第三十六話 赤い天使



 クロアに手を引かれ、第一部隊の部屋の奥にあるドアを開けるとそこには書斎机、本棚、剣が飾られた壁、ちょっとしたテーブルとソファがあった……恐らく隊長の部屋なのだろう。

 クロアはソファに無造作にドサっと腰かけたので私もその隣にゆっくりと座る。


 「クロア、大丈夫??どこか怪我したなら治すよ」

 「まさか、マークスに……。なんてことだ……」


 クロアは私とは結んでいない手を膝の上で強く握りしめていた。

 よっぽど負けて悔しかったんだ……そう思って励まそうとした、が。


 「リヴィの新しい聖魔法を俺よりもマークスが先に施されるだと……!?これほど悔しいことはない!!リヴィ、どうしてそういう大切な事を言ってくれなかったんだ!?」

 「あ、そっち!?負けたから悔しいんじゃないんだ」


 どうやらクロアはマークスさんに負けて悔しい……ではなく、私の新しい聖魔法を自分よりもマークスさんが先に施されたことが悔しかったらしい……。

 心配した私がバカだった。

 

 「リヴィの聖魔法は完璧だからな。マークスを羨ましいと思ってしまったほどだ」

 「そこまで言われるとお世辞でも嬉しいな」

 「これはお世辞なんかじゃない。……予想では俺がマークスを倒して、ヘーゼルが魔力切れになって立っているのは俺とリヴィだけになり引き分けになると思っていたんだが」

 「ふふふ、予想外れちゃったね。実際は私とマークスさんの勝ち」

 「ああ、見事だった。流石はリヴィだな」


 クロアが嘘偽りなく、聖魔法を褒めてくるので私の顔は緩みっぱなしになってしまった。

 そんな私の様子を見て、クロアは優しく微笑みながら頭を撫でてくれる。



 「さて、時間もあるし午後の巡回の説明をしておこう。俺達が担当している箇所は……」

 「うんうん……」


 こうして、庭の騎士達が模擬戦を終えて戻ってくるまで私達は巡回のルートと、クロア宛の書類の整理などをした。



 


 ~リデル視点~


 いつものように書斎机に向かい書類に目を通していく。

 ……だが、今日は昨日とは違いリヴィリカが居ないことで仕事へのやる気は今現在まったくない。


 「陛下、手が止まっておりますが」

 「やる気が出ない……。こんなことなら今日もリヴィリカに来てもらえばよかった」

 「リヴィリカ様なら今日は騎士団へ行っていますので、無理です」


 そんなやり取りをしているとドアをノックする音がする。

 返事をすると、紫色の髪をきっちりと切り揃え、ミニグラスを掛け少しダボついた黒いロープを着た男が入ってくる。


 「陛下、ご命令通り教皇様の住居を詳しく調べてまいりました」

 「イーシュ、ご苦労だったな。……なにか分かったか??」

 「一つだけ、気になるものが落ちていました。……この十字架です」


 イーシュが袖の余ったロープをめくり、黒い手袋が現れる……そこにあったのは赤い石が中央に埋め込まれているロザリオのネックレスだった。



 「これは……確かティト大陸にある教団の者が着けているものだったか??」

 「ええ、”赤い天使”と言われている教団が身に付けているものです……あの教団は裏で暗殺者を雇って神の教えに背く者を謀殺しているという噂があります」

 「……では、教皇を殺したのはそいつらの可能性があると??」

 「今の所あくまで推測ですが。警戒しておいた方がいいかもしれません」

 「陛下、そうなると例の件いかがなさいましょう??いささか危険なのでは??」

 「……いや、予定通り決行しよう。リヴィリカやクロアには苦労をかけてしまって申し訳ないが」


 今のところはリヴィリカ達が狙われている様子ではないのでこのまま事を進めて行こう。

 すると窓の外から大勢の声が聞こえてくる……騎士団からか??


 「なんだ、今日の騎士団が賑やかだな」

 「そのことでしたら、先ほど騎士団の者たちが話していたのを聞きましたよ。なんでも第一部隊の模擬訓練で2対2の模擬戦をするようです。……クロア様とヘーゼル殿 対 マークス殿とリヴィリカ様の組み合わせで」

 「なんだそれは……ものすごく見たい!!カミール、今すぐ騎士団に行くぞ!!」

 「駄目です!!絶対に!!」


 絶対に面白そうな対決に椅子から勢いよく立ち上がった。

 だが、カミールがドアの扉の前で通せんぼをするように両手を広げている。


 「ちぇ……ああ、見たかったな。」

 「僕も気になりました。いったいどちらが勝ったんでしょうね??」

 

 どちらが勝つのか全く想像がつかない。

 あとでリヴィリカ達に勝負の行方を教えてもらおう。


 「報告は以上です。僕はこれで失礼します」

 「ああ、ご苦労だった。ありがとう」

 「もったいないお言葉。では」


 イーシュが退出して、外の声も聞こえなくなっていた。

 俺は机に置かれた、上質な便箋をもう一度見つめる。

 

 「うまくいけばいいのだが。」

 「大丈夫ですよ。リヴィリカ様がきっと良い方向へと導いてくださいます。」

 「そうだな……きっと。」


 俺はその便箋を大事に机の引き出しへとしまった。

 そろそろ”とっておき”を実行する時が近い。

 



次回、あの子との再会です。

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