第三十五話 勝負の行方
ひょんなことから、クロアとヘーゼルさん、マークスさんと私で模擬戦をすることになった。
マークスさんと作戦を立てて、クロア達に向き合う。
「ずっと気になってたんですよ。隊長の剣術とリヴィリカ様の聖魔法のどちらが上なのか。」
「そもそも役割が違うからどちらが上とかないんじゃ……??」
マークスさんがとでもわくわくしているのがわかる。
落ち着かない様子で先ほどから屈伸運動をしながら目を輝かせてクロアの方を見ているマークスさんは言ったらおかしいが恋する乙女みたいだ。
周りの騎士達も自分たちの訓練を中断して私達の模擬戦に注目しているらしい。
「隊長、準備はいいですか??」
「ああ、いつでも」
「それじゃあ……」
「「始め!!」」
クロアとマークスさんの2人の掛け声が開始の合図になった。
2人はは早速、剣を交える……2人ともすごい早い剣捌きだ。
「”力の加護を……”」
「リヴィリカ様、ありがとうございます!!」
攻撃力増加の加護をマークスさんにかけると、クロアに重い一撃を振り下ろした。
今のマークスさんならクロアと同等かそれよりちょっと上の力を発揮しているだろう。
クロアが一旦、距離を置こうと後ろに下がるが、すかさず切り込もうと懐に入ろうとした瞬間……
「”聖なる裁きの雷よ!!”」
「うわっ!!危なかった!!」
開始からずっと詠唱をしていたヘーゼルさんの聖魔法がマークスさんの頭上から雷のような激しい光が降りそそいだ。
間一髪で避けたマークスさんだが、その雷が落ちた地面を見ると黒く焦げていた……。
「マークス、お前には悪いが俺の剣技とヘーゼルの攻撃魔法の相手をしてもらおう」
「もしかしてこれってほぼ2対1??俺に集中攻撃するつもりですか!!」
「当たり前だ。俺達の狙いはお前をボコボコにすることだからな」
「リヴィリカ様がお怪我をしたら大変でしょう」
「ヘーゼルもリヴィリカ様と同じように回復魔法に専念すると思っていたのに!!」
「うわあ……マークスさんファイトです」
クロアの剣術にヘーゼルさんの聖魔法……とてつもなく厄介だ。
私もいろんな聖魔法を組み合わせて援護していかなければ。
「まぁ、想定済みかな。リヴィリカ様、さっき言った通りの作戦でいきますよ!!」
「はい!!」
ヘーゼルさんの聖魔法は詠唱に時間が少しかかるので、その間はマークスさんにバリアを張る。
バリアがクロアの剣術を少しだけ跳ね返すので、その隙を狙ってマークスさんがどんどん攻め込んでいく。
そしてヘーゼルさんの詠唱が終わり再び光の雷が落ちる。
「どうした、マークス??ヘーゼルの魔法がお前に直撃するぞ??」
「ふっふっふ。へっちゃらですよ!!リヴィリカ様の聖魔法があればね!!」
「なにっ!?」
私は意識を集中させて、言葉を唱える。
この聖魔法はラン様と作り出した、とっておきの防御魔法……!!
「”守りの光よ、かの者を包め!!”」
「なんだ……それは??」
光がマークスさんを包み込むと同時に、ヘーゼルさんの光の雷が落ちる。
マークスさんに直撃し、眩しい光が発せられる……普通なら相当な怪我を負ってしまうだろう。
だが、光が収まるとそこにはほんの少しだけかすり傷を負ったマークスさんが立っていた。
「私の聖魔法を受けたのにその程度の傷しか与えられていないなんて……!!」
「っ!!ヘーゼル、防御魔法を……!!」
「は、はい!!」
予想外の展開に、ヘーゼルさんは防御魔法を発動させる。
その瞬間を狙って、私がマークスさんにもう一つ聖魔法を発動させる。
「”盾をも貫く光の剣よ!!”」
「もらった!!」
マークスさんの剣が淡く光り、振り下ろすとバリアは紙を容易く裁つかのように切れるとそのままクロアに刃が届く。
なんとか刃は弾いたが、態勢を崩してしまいクロアは片膝をついた。
「~~!!やった!!隊長に勝った!!」
「おめでとうございます、マークスさん!!」
とてつもなく嬉しそうなマークスさんがこちらに小走りでやってくる。
相当嬉しいのか、無邪気に笑っている姿は少年のようだった。
私はマークスさんとハイタッチをして一緒に喜んだ。
するとヘーゼルさんがこちらに近づいてきた。
「参りましたわ。まさか、私の聖魔法が直撃しても膝をつかないなんて……」
「実はあの防御魔法、まだうまく使いこなせなくて……ちゃんと発動する確率が五分五分だったんですよ」
「そうでしたのね。でも私はもう魔力が残っていませんでしたから……完敗ですわ」
しばらく、膝をついたままのクロアがやっと立ち上がりこちらに近づく。
するとマークスさんの肩を強く数回叩いた。
「今回は俺達の負けだ。……マークス、この後建物の裏に来い」
「え??俺、裏でズタズタにされるんですか??」
「安心しろ、ちょっと褒美をやるだけだ。……この拳で」
「ボコボコにされる!!リヴィリカ様、隊長がいじめますー」
負けを素直に認めたクロアだったけど、実は結構悔しいのかも??
指をポキポキ鳴らしながら、怖い笑顔でマークスさんに詰め寄っている。
それを見たマークスさんは私の後ろに逃げ込むと、耳元で囁いた。
「申し訳ない。クロア隊長のご機嫌取りをお願いしてもいいですかね??あれ、滅茶苦茶悔しがってると思うんで」
「うん。まかせて。……でも、私が何言っても逆効果なんじゃ??」
「あはは、それは絶対ないですよ~。隊長の事よろしくお願いしますね」
そう言って私にウインクをすると、「疲れたんで、休憩室で休んでまーす!!」と言ってスキップをするような軽い足取りで建物の中に入って行ってしまった。
クロアは他の騎士達に訓練の続きをするように指示すると、私の手を取って建物へと歩き始める。
私の手を掴むクロアの手は、マークスさんの激しい剣戟を受けた後遺症による手の痙攣なのか、それとも勝負に負けた悔しさからなのか微かに震えていた……。
マークスとリヴィリカの勝ちでした。
光の防御魔法を作り出して、喜ぶリヴィとラン様でしたが、「これをもっと早く習得してればいろいろ便利だったのに…!」と複雑な気持ちになった2人なのでした。




