第三十三話 花に囲まれてダンスを
「ここは代々王族と信頼できる庭師しか知らない場所なんだ」
「え……そんな大事な場所に私を連れてきてよかったの??」
「もちろん。リヴィリカだから連れてきたんだ。気に入ってくれたかい??」
リデルは2人は余裕で腰かけられるブランコに座ると、隣に座るように隣を叩く。
私がそっとブランコに座ると、リデルが地面を軽く蹴ってブランコがゆっくりと揺れ始めた。
「そういえばリヴィリカ、ダンスは踊れるかい??」
「ダンス??舞踏会とかで踊る……??」
「そうそう、くるくるーって踊るやつ」
「踊ったことない……と思う」
リデルに聞かれて、記憶を辿る……踊った事なんてないし、むしろ舞踏会にも参加したこともない。
するとリデルがブランコから下りて、手を差し出してきた。
「じゃあ、練習してみない??……リヴィリカ、私と踊っていただけますか??」
「え……いきなりどうしたの??」
いつもと雰囲気が違うリデルに戸惑っていると、手を取られてブランコから立ち上がる。
背中に手を添えられ、もう片方の手を繋ぐと左右にゆっくりステップをする。
「リデル!!私、本当に踊ったことないからわからないよ!!」
「私がリードするから大丈夫。……ほら、足元ばっかり見てないで私を見て。」
「足踏んでも知らないからね!!」
リデルの足を踏まない様に、足元をずっと見ていたが思い切って顔をあげる。
そこには、夕日に照らされてより赤く輝く髪とほんのり頬を染め笑いかけるリデルがいた。
「うんうん、とっても上手だよ。……リヴィリカ??顔が赤くなっているよ??」
「……夕日のせいじゃないかな。」
「ふーん??まぁ、そういうことにしておいてあげる。……えいっ」
いつもと違うリデルに見惚れて無意識に顔が赤くなってしまったらしい……咄嗟に言い訳したけどリデルにはバレているようだ。
するとリデルは背中に添えた手を離し、両手を繋ぐとくるくると円を描くように回り始めた。……すごい速さで。
「ちょっと!!目が回るからやめて!!」
「あはは!!そうだね!!でも、楽しいだろう??」
「もう!!本当に止まって!!……わっ!!」
先ほどのゆったりめなダンスから高速で回った為、目が回り足元はおぼつかなくなった。
そしてついに私とリデルは柔らかい芝の上に倒れ込む。
衝撃に身構えたが、リデルがとっさに私を抱き寄せて下敷きになってくれたようだ。
「あはは。楽しかったな!!」
「ふふふ、そうだね!!楽しかった……まだ目が回ってるけど」
しばらくして私はまだリデルの胸の部分に頬がぴったりくっついている事に気づき、慌てて体を起こす。
リデルもゆっくりと上半身を起き上がらせた。
「リヴィリカ、これから舞踏会が開催されることも多くなってくるし、ダンスの練習は少しずつやっておいた方がいいかもしれないな。」
「舞踏会……そういうのあんまり好きじゃないんだけどな」
「そうは言っても、リヴィリカは俺の次に偉い立場だからな。不参加は許されないぞ」
「いつの間にそんな事に……!?私、孤児院育ちの庶民なんですけど!!」
リデルの次に偉い立場??そういうの別にいらないんだけどな……。
聖女と言っても中身はただの庶民なのに。
「リヴィリカはこの世界を救った聖女だからな。……他の貴族達からは、君を女教皇にしようという意見も出始めている」
「絶対にならないからね。へなちょこすぎて大変なことになりそうだし」
裏でそこまで話が進んでいるとは……
私には勤まる気がしなくてまったく想像が出来ない。
「リデル、もしその話が出たら反対しておいて。私には無理だよ」
「それか、一つだけならずに済む方法はあるんだけどね」
「本当に!?どうすればいいの??」
「……誰かと結婚しちゃえばいいのさ。女教皇は結婚することを禁じているから先に結婚してしまえば誰も文句は言えないだろう」
「結婚……それも不可能な気がしてきた……」
それもそれで不可能な気がして、ふとラン様の顔を思い浮かんだ。
ラン様に結婚を申し込まれたが女教皇に成りたくないから申し出を受けるのは申し訳ないし……。
「そんなに焦らなくても明日女教皇になれって言われる訳ではないのだからゆっくり考えていけばいいさ。」
「そうだね。……はぁ、なんとかなればいいけど」
「さて、そろそろ日も落ちそうだ。あんまり遅くなるとクロアがうるさいし戻ろうか。」
「うん。……リデル、今日は素敵な場所に連れてきてくれてありがとう。」
「ああ、来たくなったらまた俺に言ってくれ。それからこの事はクロアにも秘密だからな??」
「わかってる。誰にも言わないって秘密にする。」
私達は花園を出ると、執務室へと真っすぐに向かう。
執務室の前にはすでにクロアがいて、不機嫌そうな顔をしていたのは言うまでもない……。
リデルのとっておきが発動するまでは、日常ストーリーになります。
次はクロアの出番。




