第三十一話 国王の監視役
結局私達は、教皇様の部屋が荒らされて一冊本が無くなった、という情報しか得られなかった。
とりあえず、書斎の部屋については後でもっと詳しく調べるよう伝えておく、とリデルに言われ私達は教皇様の家をあとにした。
「折角だし教会の中も見ていくかい??」
「入れるの??そうだね、見て行こうかな」
リデルに手を引かれて隣にある教会へと入る。
大きな教会ではないが、中は意外にも綺麗な状態で女神像も美しく輝いていた。
すると、大きな唸り声のようなものがどこからか聞こえてきた。
「何この音ってまさか……!!」
「これが唸り声だよ。いまも彷徨う幽霊が俺達に何かを伝えようと……」
「ちょっと、やめてよね。こんなのきっと何かの音で幽霊なわけ……きゃっ」
リデルが声のトーンを下げて言ってきたがこんなの幽霊なわけがない、と言おうとした瞬間後ろの両開きの扉が思いっきり閉まったので、私は思わずリデルの腕に引っ付いてしまった。
すると、リデルの体が小刻みに震えているのに気が付いた……笑ってる??
「あはは、タイミングよく扉が閉まったね。こんなに驚いてくれて嬉しいよ」
「……幽霊なんて嘘ね??」
「くくっ……。この教会って隙間風がひどいんだよ。だからその風の影響で唸り声みたいに聞こえるんだ」
「……笑いすぎじゃない??」
「ごめんってば。怯えてるリヴィリカが可愛くってついからかってしまったよ。」
いまだに笑っているリデルを思いっきり睨みつける。
するとリデルは笑うのをやめて、私の肩に腕を回すと近くにあった長椅子に座るように肩を軽く叩かれる。
「そういえば、私とリデルって初めて会った時どんな感じだっけ??」
「初めて会った時の事かい??……そうだなぁ、たしかリヴィリカとクロアが城内にいたのをいつも見ていて、城に私と同年代の子供はいなかったし話してみたいと思ったんだ」
「そうだ、最初会った時、私もクロアもリデルが王子様ってこと知らなくて普通に話してたらいきなり大人達が血相かえて走って来たから何事かと思ったんだよね」
「私は嬉しかったよ。堅苦しい会話より何倍も楽しかったし。他の貴族の子供達とも話したことはあるがみんなよそよそしかったからね」
「私達、罰を受けるんじゃないかってヒヤヒヤしたんだからね??」
私が聖都にやってきて数日後にクロアも来てくれたお陰で私は1人の不安な毎日から解放された。
いきなり聖都に連れて周りには知らない大人達ばかりで……クロアが来て一緒にいてくれたことはすごく心強かった。
私は聖魔法の練習、クロアは剣術の稽古……そうだ、クロアの剣の稽古はリアムがしてくれたんだ。
リアムは第一部隊の隊長ですごい強かったんだよね。
「今もこうして話せることを俺はとても嬉しく思うよ。リヴィリカもクロアも大切な友人だからね」
「うん。これからもずっと私達は友達だよ」
「……まぁ、ずっと友達で終わらせるつもりはないけどね」
「??ごめん、よく聞こえなかった」
「いや、なんでもないさ」
その後もいろんな昔話をして、私もリデルと過ごした日々を少しずつ思い出していった。
すると街の中央にある大きな大聖堂の正午を伝える鐘の音が聞こえてきた。
「……はっ!!流石にそろそろ戻らないと。ほらリデルもお城に戻るよ」
「え~、もう少しだけいいじゃないか。お腹も空いたし城下町でお昼ご飯でも食べてから戻るってのはどうかな??」
「絶対ダメ。私もクロアが帰ってくる前に家に帰らないとだから」
「むぅ……」
これ以上は私も共犯になってしまいそうだし、リデルをお城に連れて行かなければ……。
するとリデルは少し拗ねて口先を尖らした。
「……ずるいじゃないか、クロアばっかりリヴィリカと一緒にいて。それにランフェル殿とも聖魔法を教わるとか言ってべったりだったんだろ??……俺だってリヴィリカともっと一緒に居たいのに」
「ラン様とべったり??どこでそんな情報を??」
「ランフェル殿から手紙が届いたんだ。”私が毎日しっかりとリヴィに聖魔法を教えなおしました。とても有意義な時間を過ごせましたよ”って」
「だってそれは私が聖魔法をちゃんと使えてなかったからで……むしろラン様には迷惑かけちゃったようなものだよ??」
「いいや、あれは楽しんでる様子だった。」
拗ねているリデルをとりあえず立たせようと腕を引っ張るが全く動く気配がない……。
この子供っぽく拗ねる同い年の19歳をどうやってお城に戻らせるか……、するといきなりリデルが立ち上がった。
「決めた!!リヴィリカには俺の仕事の補佐をしてもらおう!!そうすれば仕事を抜け出さなくても君と話せるし、一緒にいられる!!」
「え??でも私にリデルの仕事手伝えるかな」
「大丈夫さ。難しいものは基本俺がやるし、君は簡単な雑用をしてくれればいい。そうと決まればカミールにこの事を話しに行くぞ!!」
「ちょっと!!いきなり走り出さないで!!」
リデルは私の手を取ると、すごい勢いで走り出した。
お城に戻り、カミールさんにこの事を相談すると、最初はしぶっていたが「リヴィリカが一緒なら俺は仕事から抜け出さないぞ。」と言う一言で即”リデルの監視役”として採用されたのであった……。
寒くて少し布団に入ったら寝落ちしてました・・・。




