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星屑の聖女  作者: 夜桜 メル
第一章
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番外編 死者の声を聞く者(後半)

後半です。少し長くなりました。



 そして再び魔王が現れ、世界はまた瘴気と魔物に怯える日々がやってきた。

 新しく勇者を選び、魔王退治へと向かったが魔王の力はすさまじく倒すことが出来ないようだ。



 そんな時、新たな勇者一行が最初の巡礼地を訪れるためにこのステラエーンにやって来た。

 1人は黒いヴェールと黒い修道着の恰好をしたあどけなさが残る少女。

 もう2人の剣士は少しやんちゃそうな笑い方をしている青年と、一切油断を見せない様に気を張っている無表情な青年だった。

 



 「えっ!!貴方が神官長ランフェル様なのですか!?……てっきり隣の方が神官長様かと」

 「だよな??俺もそっちのおっさんが神官長なのかと……どうなってんだ??」

 「……」

 「ふふふ、よく言われます。改めまして私が神官長ランフェルです。ようこそステラエーンへ、新たな勇者達よ。」



 黒いヴェールに隠れていた青い瞳はまだ幼さが残っている……これが今回の聖女ですか。

 赤茶色の髪の青年は私の正体を知って少女と一緒の反応をしていたが、もう1人の黒髪の青年は私を少し警戒するような視線を送っていた。



 「初めまして、神官長ランフェル様。私は聖女のリヴィリカと申します」

 「勇者一行に選ばれた剣士のリアムです。……こっちの不愛想なのは同じく剣士のクロアです」

 「おい、自分の名前ぐらい自分で言える。クロアといいます」

 「はい。よろしくおねがいしますね」



 自己紹介を終えると、リヴィリカが私にお願いをしてきた。



 「あの、ランフェル様。貴方様の聖魔法はとても素晴らしいと聞いています。どうか、私に聖魔法を教えてくれませんか??」

 「ふふふ、もちろんですよ。この知識が魔王を倒す手助けになるのですから喜んで協力します」



 それからリヴィリカを弟子に取り、聖魔法を教えていく。

 彼女は聖魔法の素質はあるが、正しく使えていないことで余分な魔力を使っているため十分な回復魔法を発動することが出来ていなかった。

 リヴィリカと共に聖魔法の書物を読み、少しずつ聖魔法の力を理解していった彼女はどんどん成長して、短期間で驚くほど成長していき私は驚いた。



 短期間でここまで習得できた者はあまりいない……彼女の真剣さからは他の勇者達とは違う只ならぬ使命感があるように思えた。



 「無事、女神様の加護を受けることが出来ましたね。どうなる事かと思いましたが……」

 「そうですね。彼女たちはきっといい勇者になるでしょう」


 クロアが酷い船酔いで倒れ、日が出ている時間に女神像にたどり着くはずが今では太陽は完全に沈み、ステラエーンの名物である圧倒される星空が広がっている。

 3人はステンドグラスを開け、星空を見て何かを話していた。


 リヴィリカを見ると、彼女の黒い服装に所々にある金色の刺繍が微かな潮風に揺られキラキラと輝いている……まるで彼女もこの星屑が散らばった星空の一部のようだ。



 「まるで、星屑の聖女……と言ったところでしょうか」

 

 彼女達からは他の勇者達とは違う何かを感じた。

 それがなんなのか私には解明することは出来なかったが、もしかしたら魔王を倒すのは彼女達なのかもしれない。




 「では、ランフェル様!!今までお世話になりました」

 「ええ、貴女を弟子に出来たことを誇りに思います。どうか道中お気をつけて」

 「大丈夫ですよ、ランフェル様。俺とクロアがいるんです、怖いものなしですよ」

 「それは頼もしいですね。リヴィリカをちゃんと守ってあげるんですよ??」

 「ランフェル殿に言われずとも俺がちゃんと傍で守りますのでご心配なく」


 そう言って彼女達は次の目的地であるティト大陸へと旅立って行った。

 私は船着き場から船が見えなくなるまで見送った。




 「今回の聖女には随分と肩入れしてたんじゃないか??今まであんなに丁寧に聖魔法を教えてるところは見たことないぞ??」

 「そう……かもしれません。彼女達には是非とも私達が叶えられなかった夢を叶えて欲しいものです」

 「そうだよね~、そろそろ魔王倒してほしいよね~」

 「私達の子孫が安心して暮らせる世界へ導いて頂きたいですわ」

 「そうですね。きっとリヴィリカ達なら大丈夫です」


 ここにいる彼らは、とある約束を守ってこの礼拝堂に来てくれた友人達だ。

 ……もし、死んだらステラエーンの礼拝堂に集まろう、という約束を守ってくれた。

 ユング、ミューア、リリィネ……みな、肉体は滅び、魂だけとなってしまった。



 「……ランフェル、俺達はずっとお前の事が気がかりだった。お前は老いない、お前だけ時間に取り残されてるんじゃないかって心配だった」

 「だけど~、ランちゃんはしっかりみんなと一緒に時間を進もうとしているんだね~」

 「あの聖女様の帰りを心待ちにしているのね」

 「ええ……。そして彼女達が作り出す平和な世界がどのように続いていくのかを考えたらこれからの未来が楽しみです」



 3人にここまで心配されているとは思わなかった。

 私も歳を取ったがこの中では一番若いからなのだろうか……いつまでも心配性な人達だ。

 


 「だが、これで安心して俺達は眠りにつくことが出来る」

 「ランちゃんとこれからもずっとお話してたいけどね~」

 「でもランフェル君はもう大丈夫でしょうし、私達の過保護はここまでにいたしましょう??」

 「この私を子供扱いですか??そんなことできるのは貴方方ぐらいですよ」



 誰かが死ぬことは私にとってそれほど悲しくない。

 なぜなら声が聞こえるから、会話もできる、すぐ近くに存在を感じる事が出来る。

 だが、魂だけになった彼らの話を聞くと人は死ぬと未練の残った場合この世に留まることが出来るらしい。

 その未練がなくなれば女神の元へいき魂は浄化され記憶などを空っぽの状態にした後、新たな器へと宿るようだ。……つまり新たな命に転生するらしい。

 


 3人とも未練は無くなったといい、女神様の元へ行こうとしているようだ。

 そうなれば、二度と会話することはできなくなる。


 「……ひどいですね。私が死ぬのを待ってくださらないのですか??」

 「おい、それは一体何百年後になるんだ??」

 「ランちゃんなら、あと300年は絶対生きてそ~」

 「わかりませんわよ??500年くらいは生きてそうですわ」

 「私を何だと思ってるんです??」


 この人達はよく、私を揃いも揃ってからかう。

 いつもの軽口もこれで最後だろう、私も彼らを止めようとは思わない。


 「皆さんを心配させてしまい申し訳ありませんでした。ですがもう大丈夫ですよ」

 「そうか。では、先に逝っている。もし可能なら天国で酒を飲みながらお前を見守っててやるさ」

 「もし生まれ変わっても、どこかで会えるといいね~」

 「女神様にお願いして、記憶は残して頂けないかしら……そしたらまたこのステラエーンで集合ね」

 「それも楽しそうですね。では新たな約束、ということで。おやすみなさい、ユング、ミューア、リリィネ……よい夢を。」



 かすかに私の頭や肩、背中に手を置かれた感触がした……ような気がする。

 それからぱったりと彼らの声は聞こえなくなった。



 そして、私が思ったようにリヴィ達が魔王を倒し、平和な世界になった。

 記憶喪失になってしまったが、前回と変わらないリヴィとの交流は楽しかった。


 「ラン様、気になっていたんですけどその本ってなんですか??聖魔法の本ではありませんよね??」

 「ああ、これですか??これはですね……私のボケ防止に書いた日記です。最近、物忘れが激しくって……」

 「ボケ??でもそんな気配はまったくしませんよ??」

 「いえいえ、記憶というものはね、徐々に美化されていって実際はどうだったのかを忘れてしまうんですよ。例えばですが、ダンジョンを効率よく攻略したという記憶があります、ですが実際は罠の道を避けて通ったら2日もかかったとか、罠の道にはその跡がありますのでそれを気を付けて避ければ5時間で攻略できたとか」

 「なるほど……でも美化される前のほうがちょっと楽しそうで忘れてしまうのは勿体ないですね」



 リヴィはそう言って楽しそうに笑った。

 あの時の事を思い出す……ユングに罠のない道を勧めたが、ダンジョンを出てすぐ後から来た旅人は罠の道を通ったが、明らかに落とし穴のような跡があるし、壁にはなにか重いものが壁に当たっている跡……そう、気を付けて周りを見て通ればなにも問題なかったのだ。

 あの時は本当に申し訳なかった……。

 


 ユング達に日記を書くことを勧められて最初はそんなつもりはなかったが、今ではかけがえのない私の宝物だ。

 いつも持ち歩いてる、その古びた日記の最後のページを開ける。

 そこには、”もし、約束を覚えていたらステラエーンに集合!!”と文字の最後が楽しそうに跳ねている私の文字があった。



ラン様番外編でした。

2章に行く前にストーリーを整理しようと思いますので次は2日後ぐらいに投稿しようと思います。

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