番外編 死者の声を聞く者(前半)
新章の前に書きたかったラン様の過去のお話です。
それは随分と昔のこと。
村にある小さな骨董品店で埃だらけの本を見つけ、何気なくページを一枚だけめくったその瞬間から私の運命は決まってしまったのかもしれない。
難しい文字、挿絵もなくただ文字がびっしりと書かれた書物は私を引き付けるなにかがあった。
他の同年代の子供たちは挿絵がたっぷりな絵本を両親から読み聞かせてもらっているであろう、だが私は古びた埃くさい分厚い書物を1人で読み進めていた。
そんな姿を見た村の大人たちは私を不気味がったが、両親は大人でも難しい本を1人で読み進める私を天才だと褒めてくれた。
それから聖魔法を取得していくと、自分で怪我を治したり、村のはずれにある魔物が出現する場所へ行ってみて、一匹で行動している小さな兎の魔物に攻撃聖魔法を試してみたりした。
少しずつ魔法を習得していく度に魔物達を倒していたので気づけば村の周りに生息する魔物は全て倒していた。
「ふむ、魔法を試すための対象がなくなってしまった……また新しい魔法を覚えたから試したかったんですが」
流石に村からこれ以上離れることは大人達に禁じられているし、どうしたものか。
すると以前、貿易の商品を運ぶ馬車が魔物に襲われていたので助けたところ、その馬車の主人が私の事を聖都の者に話したらしく教皇と呼ばれる方がわざわざ私の村までやってきた。
「君がランフェル君だね??君の素晴らしい聖魔法の腕前は聞いているよ」
「はぁ……ありがとうございます」
「そこでその腕を見込んで頼みがあるんだ。魔王を倒す勇者の一員にならないかい??」
私はすぐに了承の返事をし、聖都へと向かい他の勇者と言われる者達と合流し旅に出たのであった。
順調に旅は進み、巡礼地も今回で3つ目となる。
少しずつ聖魔法が強まっていき、どんな加護を得られるのか楽しみになっていた。
「”あら、まぁ……今回は女の子じゃなくて男の子なのね??”」
「はい。ランフェルと申します」
「”あらあら、可愛いわぁ……。貴方のような美しい天使がいたらわたくし、絶対に配下に置くわ。人間なのが勿体ないわねぇ”」
「そこまで言っていただき光栄です」
現れた女神様は再生と死を司るといわれる方だった。
少し、癖のある女神様のようだ……。
「”貴方はどちらかというと癒す魔法より悪を退く退魔を得意としているようね??そうねぇどんな力を授けようかしら……そうだわ、【死者の声を聞くことができる】力を与えます。”」
「死者の声を聞ける……ですか??」
「”ええ、そうよ。純然な魂と精神に触れることで貴方の退魔の魔法は強力なものになるでしょう”」
「なるほど。この力、使いこなせるように精進いたします」
「”その代わりこの力には代償が必要なのよね……では、こうしましょう。貴方のその姿形とても気に入っているの。貴方が【老いることのない体】にしてあげます。ずっとそのままの可愛らしいお姿でいらしてね”」
「……はい??」
そういうと、女神様は私にウィンクをして消えていった。
女神様とは時に慈悲深く、そして気まぐれで残酷、人間には理解することの出来ない方だと痛感した……。
「それにしてもあの女神様が言っていた”老いることのない体”ってのは本当なのか??」
「さぁ??あれからまだ一か月ほどしか経っていませんしなんとも……」
「でも、死者の声は聞こえるのよね??」
「ええ、はっきりと。……ああ、ユング。その先には罠がありますから、右の道へ行ってください。そっちが正解ですので」
「おう。……なんでわかるんだ??」
「罠のある道から”体中が穴だらけで痛い”という死者の声が聞こえてくるので」
「……怖すぎるだろ」
最初は死者の声が聞こえることに困惑したが上手く使えば自分たちの死を回避できる事が出来るのでありがたい。
時には大昔の故人の聖者の教えを学ぶことができ、書物では得られないことも習得できる。
お陰で、様々な聖魔法を取得できた。
だが旅はいきなり終わりを迎えた。
魔王はどこかへ隠れ、眠りについたらしい。
魔王の城はもぬけの殻、だが瘴気も落ち着いて魔物の凶暴化などは減少していった。
私は神聖都市の神官長にならないかと教皇に言われ了承の返事をした。
他の仲間達も聖都の騎士団に入ったり、自分の故郷へと帰って行ったりそれぞれの人生を歩み始めた。
私は神官長として、聖魔法の素質を持つ若者たちの育成をしたり、ステラエーンの北にある女神像のある神殿の管理もすることになった。
平和な日々が続き、気づけば私達が旅を終えて60年が経った頃だった。
「それにしても本当にお前はあの頃の姿のままか……今年で何歳になったんだ??」
「おや、大事な仲間の年齢を忘れてしまったのですか??75歳ですよ」
「12歳の姿で心は75歳のじいさんか……なんか複雑だな」
「失礼ですねぇ。私の心はいつだってあの頃のままピチピチですよ??」
「言い方が年寄りなんだよな」
礼拝堂で私はかつて共に旅した友人と話している。
こうして毎日この礼拝堂で話すのが日課となっていた。
「不老って言っても、不死ではないから死ぬんだよな??」
「ええ。ですが、私は健康に気遣う善良な行いをしていますし、今まで大きな怪我も病気もしたことがありませんからね。まだまだ長生きできそうです」
「お前は一体いつまで生きるつもりなんだ」
「そうですねぇ……最近、新たな遺跡が発見されてそこには大昔の王族の遺品や遺体が見つかったようです。その中にはめずらしい魔法の書物もあるようなので新たな聖魔法を発見できるかもしれませんし、あと20年ぐらいは退屈しなさそうです」
「いつまで経ってもお前はガリ勉野郎だな」
「ふふふ、お褒め頂きありがとうございます」
旅の友だったユングと旅の思い出話や、世間話などを話したり、弟子を取って優秀な若者を世界に送り出したりと私は充実だと思える時間を過ごすことが出来た。
そんなある時、私はとある少女と出会う……多くの聖女達が白い修道着を着ていたが、彼女は黒いヴェールと黒い修道着を着た夜の闇を纏ったような姿をしていた……。
もし魔王が眠らなかったらラン様達で魔王を倒せるほどだった、と思います。
不老ってうれしいのかな??毎日ずっと楽しく生きていける??って考えながら書きました。
まぁ、ラン様はやりたいことがまだまだあるようなので楽しそうです。




