第二十六話 花の村シャロン
ステラエーンを出発して3日……聖都とステラエーンの中間地点まで何事もなく進むことが出来た。
この中間地点には”花の村シャロン”という小さな村があるので、そこで物資の調達の為に立ち寄ることになった。
「のどかでいい村だね。それになんだか村中からお花のいい匂いがして落ち着く」
「ああ。ここは珍しい花を栽培して、それを加工品にした物が特産品なんだ」
「そうそう!!日用雑貨とかアクセサリーとか……王族から一般市民まで知らない人はいないと言われるほど人気なんですよ」
物資の調達も無事終わり、少しだけ休憩してから出発するという事だったので、私とクロア、マークスさんで小さなカフェで休んでいた。
カフェの店内に座って冷たい飲み物を飲んでいると、空いた窓の隙間からお花のいい香りがしてくる。
「この辺りには昔から珍しい花や植物が自生していたんですよ。……数年前までは何もない小さな村でしたが、錬金術を習得した村長の娘さんがその花などを使った商品を作り出したことで有名になったんです」
「へぇ……そうだったんですね」
「この先の道にある大きな家が村長の家なのですが、そこで商品の販売などもしているのでよかったら寄ってみてくださいね」
私達の話を聞いていたのだろう、カフェのオーナーさんが説明してくれた。
お店もあるんだ……ちょっと気になるな、と思いながらクロアを見ると花びらが浮かんでいる透明な炭酸水を飲み終えていた。
「まだ、出発まで時間がある。リヴィ、見ていくか??」
「うん!!」
私も急いで飲みかけのエルダーフラワーの炭酸水を飲み終え、3人で大きな村長さんの家を目指す。
歩いていると、この村で一番大きな家にたどり着いた。
レンガ造りのお家で、色とりどりの花が植えられている広い庭があり、正面の入り口には【アトリエはこちら】と矢印が書かれた看板があった。
「わぁ……綺麗な庭。見たことのない花もある。」
「ええ、これほど見事な庭は俺も初めてです。ここ以外の店は行ったことはありましたが本店はこんな感じなんですね。」
レンガが敷き詰められた道を歩き、上を見上げると花のアーチがずっと奥の方まで続いている。
そして、蔦や花が生い茂るこじんまりとした建物にたどり着いた。
「いらっしゃいませ。どうぞごゆっくりご覧になっていってね。」
「こんにちは。……すごい、可愛いものが沢山!!」
ドアを開けるとベルが鳴り、お店の中にいた女性がこちらに気づいた。
店の中にはおしゃれな瓶に入った香水や美容系の商品、花を特別な製法で宝石化させそれをアクセサリーにした物など店内はとても輝いて見えた。
「当店の商品は全て特別な製法で作り上げているんです。この店のマスターが錬金術で作っているので他ではなかなかお目に掛かれない品物ばかりですよ。」
「錬金術ってすごいですね。あ、この香りどこかで……ラン様が使ってる香水の匂い??」
「お陰様で世界中の著名人の方や貴族様達にも愛用していただいているので。そちらはステラエーンの神官長ランフェル様にも気に入っていただいた商品なんですよ」
「やっぱり!!すごくいい匂いだったから覚えてたの。」
「香りのお試しも出来るの是非他の香りもお試しくださいね」、と店員さんに言ってもらったのでまずラン様も愛用している”ホワイトリリー”の香りのする香水を手首に付けてみる。
可憐でちょっと甘い香りのする香水だ……しばらくその香りを楽しんでいると、隣にいたクロアが違う香水を手に取りそれを”ホワイトリリー”の香水が付いている逆の手首に付けてきた。
「”ビャクダンとオレンジ”の香りだ。リヴィ、こっちもいい香りだろ??」
「確かに。ん??この香りもどこかで……」
「俺が使っている香水だからな」
「……ああ!!そういえばクロアからしてる香りだ」
かすかにクロアからいい香りがしてたけど、クロアも香水とか使ってるんだ。
てっきりそういうことには無頓着かと思ってた……。
「じゃあ私も何か香水買って行こうかな。リデル達にもお土産買わなきゃ」
「……あいつなら何でも喜ぶんじゃないのか」
「クロアもなにがいいか一緒に選んで。うーん、どれにしようかな??」
クロアが自分の愛用香水をしれっと勧めてきたが、私は私の香りが欲しいし他の香水を見始めたらいきなり冷たい反応になった……もしかして拗ねた??
リデル達のお土産に迷っていると、それを聞いていた店員さんが一つの商品を勧めてくれた。
「でしたら、こちらはどうですか??安眠効果のある匂い袋なのですが人気過ぎて生産が追い付かず、今ではここでしか買えない商品なんですよ。」
「じゃあそれを4個ください。あとは私用の香水に…この紅茶とミックスフラワーの香りにします。」
「はい。お買い上げありがとうございます。今お包みしますね。」
いい買い物しちゃった……出発前にリデルに貰ったお小遣いで会計を済ませる。
わくわくしながら綺麗に包装されている商品を見ていると、後ろのドアのベルが鳴った。
「……もしや、貴女様は聖女リヴィリカ様ではありませんか!?」
「??」
ドアから入ってきた人物は私を見て、手に持っていた沢山の花が入った籠を落として驚いた表情をした40代くらいの男性がいた。
リヴィリカが忘れていたもう一つの約束を思い出すお話になります。
最近白檀の匂い袋を枕元に忍ばせて寝ると幸せな気持ちになるのでお気に入りです。




