第二十二話 唯一真実を知る者
私はようやく涙が止まってきたのでクロアの背中を軽く叩いて離してもらうように合図する。
ゆっくりと離れて、私の頬をもう一度両手で包んで顔を上げさせると心配そうな、悲しそうな顔をしたクロアがいた。
「……思い出したんだな」
「うん。ちゃんと思い出せた。本当によかった……」
頭の中で記憶の映像を確認する、ちゃんと鮮明に思い出している、リアムの顔、性格……何もかもはっきりと。
でもこの神殿での出来事までは思い出したが、それ以降の記憶はまだ戻っていないようだ。
「一部の記憶は戻ったけどまだまだ思い出すことは多そう……」
「そうですか……やはり全ての記憶は戻っていないんですね」
「だが、これで前回の旅を辿って行けば記憶を戻せるっていう確証が出来たんじゃねぇか??」
「よかったら、このハンカチ持っていてください」、とラン様からハンカチを頂いた。
あれだけ泣いたんだし、ヒドイ顔になってそう……と思ってありがたくハンカチを受け取り鼻先を隠すようにハンカチを当てた。
するとラン様が愛用しているお花の香水のいい香りがして少し心が落ち着いた。
「……それで??どうしてクロアはリヴィに教えてあげないんです??貴方は全て覚えているのでしょう」
「俺もそこが気になってたんだよな。お前の船酔いは相当なトラウマのはずだぜ??クロア、お前の性格ならここに来るぐらいならお嬢に話すだろ??」
「……。」
ラン様とマーレに言われクロアは俯いた。
言われてみればそうかもしれない、わざわざこんなにまどろっこしいことする??
「これは私の推測なのですが……クロア、貴方は言いたくても言えないのでは??」
「言いたくても言えない??そうなのクロア??……今までなにを聞いてもはぐらかされるから聞くの諦めてたんだけど」
「お嬢が上目遣いで聞いたらイチコロで教えてくれるのにそうしないってのはおかしいな」
しつこく聞いても私の今までの記憶について、他の3人について、クロアはなにも話してくれなかった。
「リヴィは記憶を全て失くした。だけど貴方は全ての記憶がある。それが少し気になっていたのです」
「……魔王を倒した後に現れた女神と取引したんだ。俺の記憶を消さない代わりに俺は旅であった事をリヴィにも他のやつにも話すことは出来ない。もしも話したら罰を与えると言われた」
「罰……??」
だからクロアは話したくても話せなかった??
だが、クロアも話したらどうなるかは具体的にはわかっていないらしい。
「リヴィが記憶を戻すことは俺は反対だった。……でも今のリヴィを見てやっとわかった。記憶を取り戻すことはお前にとっては何よりも大事な事なのだと。……話せなくて悪かった」
「ううん。謝らないでクロア。……でも罰を下すって具体的にどうなっちゃうんだろ??」
「今まで話したことがないから俺もどうなるのかわからないんだ」
クロアもずっと話せないことを悩んでいたのかもしれない……私達5人の旅の思い出を知っているのはクロア1人だけ。
楽しかったこともつらかったこともたった1人で背負わせてしまっているんだ。
するとクロアは目を瞑って深呼吸してから口を開いた。
「リヴィ、あの旅では……」
「え、あの、クロア??鼻血出てるけど大丈夫??」
「ん??あ、ああ。大丈夫だ。それでな……ぐっ!!」
クロアが話し出そうとすると、クロアは鼻血を出し始めた。
クロアはそれを袖口で拭い……そしてすぐ気を取り直して続きを話そうとすると……今度は吐血し始めた。
「え!?ど、どうして!!?大丈夫なのクロア!!血吐いてるよ!!」
「クロア!!もう話そうとしなくていいですから!!」
クロアがどんどん血だらけになっていく。
びっくりした私とラン様は2人がかりで回復魔法を掛けた。……どうなってるの!?
「なるほど。クロア、リヴィの事や3人の事はこれからも話してくれなくて結構です」
「一体どういうことなのでしょうか??」
「わかりません。ですがこれ以上ばクロアの首は飛ぶでしょうね」
「飛ぶ……!?クロア、もう絶対に旅の事については話さなくていいからね!!」
私の記憶は無くなり、クロアは旅の事を話せない……女神様は何をしたかったんだろう??
私達のしていた旅は、ただの魔王退治だけの単純なものではないような気がしてきた。
口封じされているクロアです。
もっと複雑になってきました・・・。
吐血したクロアにわたわたしながら回復魔法をするリヴィとラン様がかわいいとおもいます。




