第十九話 大海賊マーレ
ラン様に私には回復魔法などが効かないということを証明してもらい、今後どうしていけばいいのかをラン様とクロアと相談した。
まずはなるべく怪我や病気にならないように気を付ける事。
当たり前の事だが、今まで以上に気を付けたほうが良さそうだ。
上級回復魔法についてはあまり公にしない事。
大きな力はいずれ良くない方向にいく事があると想定して人前では使わないこと。
「簡単な事ですが、とても大切な事です。リヴィ、この約束を守れますね??」
「はい、ラン様。必ず守ります。」
それから、まだ聖都に帰るまで時間に余裕があるので私が習得していない聖魔法をラン様から教えてもらう約束をした。
あと忘れかけていたけど、私が初めて神託を受けた神殿にも行かなければ。
「そういえば巡礼地の神殿ってどこにあるんですか??」
「ここから船に乗って北方向にある小さな孤島にあります。……ただその孤島周辺は特殊な海流が発生していて普通の船ではたどり着けないので。」
ステラエーンのもっと北にはティオ大陸があり、そこはリデルとは違う国王が国を治めているらしい。
昔からその国とは対立していたのだが、国境であるステラエーンから聖都に攻めようにも孤島付近にある海流が海路からの侵入を拒み、大きく迂回しなければならないので今まで攻め込まれたことはあまりないようだ。
「厄介な海流があるのに私達はどうやって孤島にたどり着いたんです??」
「とても凄腕の船乗りに頼んだんですよ。その人物に声を掛けておいたのでそろそろ到着すると思います」
「ああ、あいつが来るんですね」
クロアはその凄腕船乗りさんの事に心当たりがあるらしい。
すると外の廊下から革靴の音とジャラジャと金属が揺れる音が聞こえてきて書斎のドアの前で止まるとノックする音が聞こえてくる。
「どうぞ。今回は早く着きましたね。……私が1か月前に帰ってきてくださいと手紙を出したのに返事が返ってこなかったので、ついにどこかの国で逮捕されたのかと思っていましたが」
「申し訳ありません神官長様。カジノに行ったらギャンブルの女神様がなかなか俺の事を離してくれなかったんですよ」
「まったく……そのせいで私達が貴方の代わりに面倒事を片すことになったではありませんか」
入ってきた男は30代半ばほどの、銀色の髪をハーフアップにしているいかにも悪い事やってそうな顔の人だった。
天使のように可愛らしいラン様と大柄で腕に刺青が沢山入っている男性……見ていて不思議な組み合わせだった。
その男性は私とクロアを見ると驚いたような声を出した。
「おお!!お嬢!!とついでにクロア。世界を救う旅お疲れさん!!いやぁ、本当に世界を救っちゃうなんてすごいぜ。」
「えっと??」
どうやらこの男性とも顔見知りらしい。
隣のクロアを見るとため息をついて説明してくれた。
「リヴィ、こいつはマーレ。海賊、不本意だが前回神殿に行くとき船に乗せてくれた。」
「おいおい、もっとちゃんと紹介してくれよ。数多の海を冒険した天才大海賊マーレ様だぞ。お前はホント昔から可愛げがねぇな。お嬢もそう思うよな~??」
「え??うわっ。」
マーレさんは私に近づくと両脇に手を入れて持ち上げると、小さい子を高い高いするように持ち上げる。
余りの高さにびっくりすると、マーレさんはそのままくるくると回り始める。
「あはは、お嬢は変わらず……いやもっと美人になったか??」
「ごめんなさい。私、貴方の事覚えてなくて……」
「そっか、噂に聞いていたことは本当なんだな。……つらかっただろう」
そう言って高い高いから下ろされマーレさんの右腕に座るような体制になる。
するとマーレさんと目線が同じになって、海のような鮮やかな青い瞳と目が合う。
「それで??神殿に行きたいんだっけ??」
「はい。記憶を取り戻せるヒントがあるかもしれないので行ってみたいんです」
「いいぜ。他でもないお嬢の頼みなら喜んで引き受けるさ」
マーレさんの目を真っすぐ見ながらお願いすると、簡単に引き受けてくれたことにびっくりする。
すると、クロアが私とマーレさんを引き離そうと私の両脇に腕を入れて引っ張ろうとし、マーレさんは反射的に私の両足を押さえたことで私は身体は左右に引っ張られる。
ちょっと引っ張らないで、痛いよ!!、おい!!マーレ早くリヴィを離せよ!!、いいやお前が離せ!!、と言い争いが起こると、ラン様が上品にソファから立ち上がりクロアとマーレさんの足を思いっきり踏んで私を解放してくれた。
……ラン様の靴、ちょっとヒールあるんだよね。2人とも痛そう……、と思いながらその場にうずくまる2人を見下ろした。
ようやく巡礼地へと向かいます。
次回はわくわくな船のアトラクションです。
なぜ海賊と神官長が繋がっているのか・・・それについても後々書いていこうと思います。




