第十五話 神器の鏡
「これはこれは懐かしい……また貴女の若い頃の姿を見れるなんて。」
「ラン様これはどういうことなのでしょう??この青年は一体……」
少し透明だが、赤茶色の髪の青年はこちらを真剣な眼差しで見つめてくる。
「青年??リヴィ、貴女はどんなものが見えていますか??」
「え……?えっと赤茶色の長い髪をした男の人です。……剣を腰に差した、冒険者の恰好の」
「そうですか……私には、若い頃共に旅をした友人の姿が見えます」
「つまり私が見ているものと、ラン様が見ている物は違うんですか??」
すると、その青年は私達に話しかける。
「”我は太古の時代、神に創られし鏡の神、名をスフカという。……人の子よ、どうか手伝ってくれないか??”」
「おや、神器に宿る神様でしたか。もちろんですよ」
この青年……スフカ様は、大昔に神に作られた鏡の神器のようだ。
所有者だった女神様はとある人間の王様と恋に落ちたが、許されない恋に女神様は愛する人を映し出す神器の鏡を王様に渡したらしい。
でもそれから時代は流れ、とある小さな教会に大切に保管されていたようだ。
「”だが、我が眠っていた教会にこの海賊船の輩が入り込み、あろうことか我を持ち出したのだ……それに怒ったら津波がこの船を襲ってしまってな。その拍子に我が身が割れて欠片がどこかへいってしまった、というわけだ”」
「なるほど……それではスフカ様の欠片を探し出せばよろしいのですね??」
「”うむ。……ついこの前から人の子が来てそやつらに頼もうとしても、あやつらに我の言葉が聞こえないようでな。困っていたところだ”」
そう言ってスフカ様は自分の本体である鏡を取り出す。
よく見せてもらうと、確かに右上の端っこが掛けている。
「では、スフカ様の欠片を探し出したら、私達をこの船から解放してくださいますか??」
「”ああ、無論だ。”」
ラン様と顔を合わせて頷く……これで帰れる方法が明らかになった。
スフカ様に鏡が割れてしまった時の状況を聞くと、どうやら鏡は津波が襲う直前までこの船の船長が持っていたらしい。
「”船長室に恐らく奴の亡骸がある。そのあたりを探してくれないか??”」
「では導いて頂けますか??私達迷子になっているんです」
「”ああ、我の神気が不安定で船の構造がぐちゃぐちゃになっていたな……いいだろう、こっちだ”」
スフカ様が先頭を歩き船長室まで案内してくれるようだ。
私とラン様は手を繋いだままその後ろをついていく。
すると、赤茶色の髪をした青年の姿のスフカ様は振り返り私とラン様を交互にじっと見つめた。
「どうかなさいましたか??」
「”いや、何だかお主らから懐かしい気配がすると思ってな。太古の時代に感じていた女神達と同じ雰囲気だ”」
「??」
「恐らくですが、私とリヴィは女神様方の加護を受けているから少しながら影響を受けているのではないでしょうか??」
「”ほぉ、お主らは女神様から加護を受けておるのか。道理で懐かしいはずだ”」
納得したのかスフカ様は再び顔を前に向ける。
ひたすら通路を真っすぐ進んでいくと今まで見たことのない絵画が壁に飾られた通路にやってきた。
またしばらく沈黙が続くと、私はふと、先ほどスフカ様が言っていた事を思い出した。
”愛する人を映し出す神器の鏡……”
見えている姿は人によって違って、ラン様だって私が見ている人とは違う人物の姿形をしているようだし。
……この人が私の愛する人??以前花畑で見たことはあるが……。一体誰なんだろう??
スフカ様をじっと見ながら悩んでいると、隣のラン様が口を開いた。
「リヴィには赤茶色の青年の姿が見えると言っていましたね??その人物に心当たりがありますよ。」
「え!!ラン様知ってるんですか??いったい誰なんでしょう??」
「それはね……、しっ」
わくわくしながらラン様の言葉が続くのを待ったが、少し警戒した顔になったラン様に何事かと周りを見渡す。
すると、スフカ様も足を止めて横にあるドアが開きっぱなしの室内を見つめていた。
「この船に閉じ込められて何日だマークス……」
「そうですねぇ……3日ぐらいは経ってるんじゃないですか??といっても外の景色は霧だらけで何度日が昇って沈んだのか分かりませんからなんとも……」
聞き覚えが凄いある声が部屋の中から聞こえてきたのでラン様とドアから少しだけ顔を覗かせて中を見る。
そこにはクロアとマークスさんがいた。
「こうしているうちにリヴィはあのじじいに何か余計なことを吹き込まれているかもしれない、リヴィは寝る前には絵本を読んでやらないとぐっすり眠れないんだ……。それになかなか朝起きれないし俺が優しく起こしてやらないといけないんだ。早く帰らないといけないのに……」
「時間が経つにつれて隊長の精神が壊れていく。隊長ー、隊長の中でリヴィリカ様って何歳で止まってるんですか。」
「何言っている。あの天使のような3歳は他にどこを探しても見つからない、この国の宝だぞ」
「ホントマジでやべーな……」
恐らく私とラン様は同じ冷めた目をしているだろう……。
というかクロアの中で私は3歳児で止まってるの!?そりゃ、記憶喪失だけどさ!!
後ろからスフカ様が”あれはお主らの知り合いか??”と聞いてきたので思わず首を横に振りたくなるのを必死にこらえた。
「リヴィ、あれはなんだろうね??この船にいる魔物かな??」
「あんなことを言うのはどこ探しても1人しかいないと思います……」
ため息をつき、その吐いた空気をすぐに吸うように深く呼吸すると、中にいる2人に声を掛けた。
その時に勢いよくこちらを振り返ったクロアにびっくりして思わず瞬きをした次の瞬間、私はクロアに思いっきり抱き締められていた……。
怪奇現象の原因は神器の鏡でした。
クロアとマークスさんとも合流できてよかったね。
クロアの精神崩壊が深刻ですが、次回ではビシッとかっこよくしようと思っています。




