第十三話 不気味な海賊船
クロア達が沈没した海賊船を調査しに出発して5日が経とうとしていた。
けれど、第一部隊の人達は誰一人戻ってきていない。
「大きな船ですし、ゆっくり調査してください、と言いましたが……優秀な第一部隊がこんなに手こずるなんて何かあったのかもしれませんね」
「海賊船から少し離れた場所にいる衛兵達の報告によれば、1日前から海賊船を包んでいた白い霧が濃くなってきたと報告がありますし……心配ですね」
朝ご飯を食べて、いつものようにラン様のいる書斎に行くとラン様とネイサンさんが深刻そうな顔で話をしている最中だった。
今日も海賊船から人が出てくる気配がない、と朝早く衛兵の方から連絡があったようだ。
流石に時間が掛かりすぎではないか、とラン様も不信に思われ始めた事で急遽様子を見に行こうという事になった。
「では、クロア達を探しに行きましょうか。……リヴィも。私達と一緒に来てくれますか??」
「はい!!もちろんです」
「貴女の聖魔法の特訓の成果も試すことができますし、いざという時は存分に力を使っていただきますよ」
そう言って12人の衛兵と聖職者を引き連れ早速海岸にある海賊船を目指す。
大きな街の門をくぐり、1時間ほど歩いた海岸沿いにその船はあった。
近づくにつれて白い霧が濃くなっていき、遠くの景色が全く見えないほどだ。
「これはこれは……思っていた以上にすごいですね。」
「この霧は魔物の仕業でしょうか??」
「恐らくは。これほどまで濃い霧は出たことはありませんので……。」
そして海賊船にたどり着くとそこには大きな髑髏のマークが描かれたボロボロな海賊旗が生温い風に煽られていた。
恐らくクロア達が設置したであろう、新しい木の板が船に掛かっている。
だけど人の声もなにも聞こえず、ただ不気味な波の音がするだけだった。
「では、私とリヴィ、エリオットの3人、その他も3人ずつで探索してください。残り3人は外で待機。もし私たちも戻ってこなかったら聖都に報告するように」
「わかりました。ランフェル様、どうぞお気をつけて」
安定感がない木の板を渡り、船へと乗り込む。
所々床に穴が開いていたり、木材が痛んでいるのが見て分かる。
探索する3チームが全員乗り込んでから、ラン様が指示を出す。
「私達は上の階の部屋を見てきます。オーリ達は下の階の部屋を、サム達はデッキを見て回ってからオーリ達と合流して探索すること……いいですね??」
「「かしこまりました」」
「”神の祝福をここに”……では参りましょうか。」
ラン様が首から掛けた十字のネックレスと握りながら祈るとそこにいた全員に聖魔法が掛かる……これは防御力を上げる聖魔法だ。
そしてそれぞれの目的の方向へと進んでいく。
私とラン様、そして衛兵のエリオットさんと上の階を目指す。
「リヴィは回復魔法を中心にお願いしますね。まぁ、エリオットなら怪我なんてしないと思いますが」
「ランフェル様、もしかして僕に圧を掛けてます??最初から怪我すんなよっておっしゃってます?!」
「まさか。エリオットはそれはそれは優秀な剣の達人ですからね。」
「それを圧掛けてるって言ってるんですよ。」
私の前を歩くラン様が目線はそのままに話しかける。
そして私の後ろにいるエリオットさんに活をいれていた。
私はエリオットさんの横に並び、エリオットさんを見上げる。
長めのオレンジ色の髪に眼鏡の奥にある緑色の瞳はとても優しい眼差しをしていた。
「えっと……まだ正確な聖魔法を使えるかわかりませんが、一生懸命頑張りますのでよろしくお願いしますね、エリオットさん」
「流石世界を救った聖女様だ……。貴女様を危険な目には合わせませんのでご安心ください」
「おやおや、私の事もちゃんと守ってくださいね」
「ランフェル様は聖魔法で魔物を灰にするのが大得意ですし僕の力なんて必要ないじゃないですか……」
船内を歩いていると奥の方から良くない気配がしてくる……気がする。
廊下を照らすランプの光は弱弱しく船内の闇に今にも負けてしまいそうだ。
その後警戒しながらも船内を周ったがクロア達の気配はなく、誰にも会うことはなかった。
魔物にも遭遇しないのが余計怖い。
「ふむ……おかしいですね。人にも魔物にも遭遇しないなんて。」
「気配を探っておりますが何も感じませんね。」
ラン様は手を顎に当てて考える仕草をする。
恐らく船内を歩いて20分ほどは経過してる……が何も手がかりが得られなかった。
「とりあえずオーリ達と合流しましょう。あちらは何か手がかりを見つけているかも。」
「そうですね……あれ??」
そう言ってエリオットさんが外のデッキに出る道の方見ると首を傾げた。
「どうしたんですか??」
「確か、デッキに出る道はあっちのはずだったのですが……何かおかしい。」
「と、いいますと??」
いや、まさか……とエリオットさんはつぶやきながらデッキの外へ出る道に進んでドアを開けると、その奥の風景はデッキの外の濃い霧ではなく闇が続く船内の廊下だった。
「おっと……これは大変なことになりましたよ。」
「なるほど、このせいでクロア達は私たちと同じく船内をさ迷っている可能性がありますね。」
こうして私たちは船内で迷子になってしまったのであった……。
3人で海賊船探索です。
これはなにか出てきそうな雰囲気です・・・。




