第十二話 師匠と弟子
「ちょっと暗い話をしてしまいましたね。そんなわけで私は少年の姿のおじいちゃんなんですよ。」
「そういう理由があったんですね……」
ラン様は膝に置いた古い本を懐かしそうに優しく手で撫でていた。
それから私に向き合うとこう言った。
「だから貴女が記憶を失くしたのは何かの力と引き換えにした、という可能性もあるのでは??」
「力と……??なるほどそういう考え方もできますね。」
でも記憶を失くしてまで得たかった力ってなんだろう??ラン様の話を聞いてるとこっちの意見も聞かずに勝手に女神様が代償を払わせるような感じかな……。
いろんな思考が頭の中をグルグルしてしてしまった。
そんな姿を見て、ラン様が新しい話題を振ってくれる。
「そういえば何度か聖魔法を使ったようですね。記憶が無くなっても魔法は問題なく使えていますか??」
「あ、その事も聞きたかったんです!!いつもなんとなくで魔法を使っていて……正しい使い方をしているのかどうかわからなくって……」
「ではもう一度私から聖魔法を教わりませんか??……貴女を再び弟子にするのも楽しそうです」
「ぜひ!!お願いします!!」
こうしてもう一度ラン様から魔法を教わる約束をした。
一緒におしゃべりをしながらランチを食べて、午後からさっそく聖魔法の書物を2人で見ながらラン様にもう一度正しい聖魔法の在り方を教わる。
クロア達の帰りを待ちながら、そんな日常が3日ほど続いた。
「では、今日はここまでにしましょうか」
「はい!!ありがとうございました」
「こちらこそ。私も自分の得意分野を教えるのはとても楽しいので」
夕食後もラン様と一緒に勉強していたら、いつの間にか寝る時間だ。
2人して夢中になってしまい気づくのが遅くなってしまった……。
「すっかり遅くなってしまいましたね。寝室まで送りますよ」
「大丈夫ですよ。同じ建物ですし」
「いいえ、リヴィに何かあったらクロアに怒られてしまいますからね」
お言葉に甘えて私の寝室まで他愛もない話をしながら歩いていく。
するとあっという間に見慣れたドアにたどり着いた。
「ラン様。送っていただきありがとうございます。」
「どういたしまして。ねぇリヴィ、ちょっと目を瞑ってください」
「??わかりました。」
ラン様に言われ目を瞑る。すると両肩に手を置かれる。
その直後、柔らかい感触を額に感じて、軽い音を立ててその柔らかいものは離れていく。
驚いて目を開けるとラン様の顔が窓から降り注ぐ月の光に照らされていて、ほんのりと染まった頬はとても可愛らしいものだった。
「貴女は記憶を失くしても真っすぐに真実を知ろうとする……その姿勢は称賛に値します。
リヴィ、貴女のこれからの未来に女神ウォルベル様のご加護があらんことを」
「あ、ありがとうございます。……お、お、おおやすみなさい!!」
「び、びっくりした……。」
思わず、急いで部屋の中に入ってしまった……失礼だっただろうか??
でも、あの天使のような顔でそういうことするのは反則と思うんだ。
私はふらふらしながらベッドへ歩き、うつ伏せで倒れ込んだ。
~ランフェル視点~
「ふふふ。リヴィにはちょっと刺激が強すぎたかな??」
彼女が記憶を失くしたと聞いて少し不安だったが、リヴィは昔のリヴィと変わらなかった。
私の正体を知って驚いた時の顔、聖魔法をとても楽しそうに学ぶ姿勢、そして時折見せる何かを悲しんでいるような表情……。
彼女が以前どんな旅をしてきたのか私にはわからないけれど、きっと聖女としての責任はこの少女を多少なりとも苦しめた事だろう。
だがそんな少女は私達が成し遂げられなかった事を見事やり遂げ、そして生きて帰ってきたと分かった時は自分の事のように喜んだ。
彼女がずっと寝たまま起きないと知らせを受けてからすぐに聖都へ赴き、様々な回復魔法や状態異常回復の魔法を使ったがリヴィが起きることはなかった。
自分の無力さが悔しかった、そして起きても記憶を失くして空っぽになった彼女に悲しみが込み上げてきた。
だけどまたこうして昔と同じように話すことも、笑いあうことも出来る……それがとても嬉しい。
「何だろうこの気持ち……これが孫を持ったおじいちゃんってこと??」
明日のリヴィがどんな感じで私に挨拶するかな??とちょっと意地悪な事を考えながら月明かりが降り注ぐ廊下をゆっくりと歩きながら自分の寝室へと向かった。
なんとか今日中に投稿できました・・・。
それにしてもクロア達まだ帰ってこないんですかね??
次回はリヴィ達も動きます。




