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プロローグ&拾った女

自分が映画、アニメ、小説を読む際に、書いている人の人となりが少し気になってしまう派なので書かせてください。

私は現在29歳の男です。わけのわからない生きづらさを感じ続け、それと戦い続け、疲弊し、適応障害(うつ病など)になってしまいました。自らの命を絶とうか真剣に悩む中で、すべてを削ぎ落していき、最後に残ったものをみつけることができました。

現在ではそれらと真剣に向き合おうと決心し、一歩づつですが着実に自分の足で歩きだせている気がします。

ちなみに今でこそ医学が発達して認知されていると思いますが、生きづらさの正体は発達障害ADHDでした。

生きづらさを感じている方はたくさんおられます。

どうか突っ張りすぎず、自分の個性(武器)を見つけるようなものだくらいの気持ちで、ネットで調べるなり、気軽に病院いくなりしていきましょう。

ゲームを始める際に自分がなんの武器を持っているか把握できずにプレイすることは非常に困難でした。

何の話だって感じですが、そういうの、早く知れることに越したことはありません。

そんな人間もいましたよっていう情報を誰かに表現したいのだと思います。

人は進化していくべきだと思うから。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

俺は失敗者だ。


小さい頃は何不自由無かった、いや無いと勘違いしていただけかもしれない。

ただただその日を衝動的に生き、友達にも恵まれ、幸せそのものだった。


時々、おっちょこちょいで怒られもしたけど、好きなように生きていた。


ところが、中、高、専門、社会人になっていくに連れてどんどんと生きづらくなっていった。

学生生活で、はっきりと異変を感じ、社会人で確信した。


どうやら他の人が当たり前のようにこなせることが、俺にはどう頑張っても出来ないのだ。


「なんで遅刻が治らないんだ?」

「なんでそんなに忘れ物が多いんだ。」

「あれ取ってくれ。違う。あれだよ。あれ。ちーがう!もういいわ。なんでそんなこともわかんねんだ」

「ほんとに使えないな」

「クズ」

「おいクズ」

「無視すんな、クズ(笑)」


あははは..


大好きなアニメの声優がやりたくて上京して、通うことになった専門学校でもそれは変わらなかった。

最初は抵抗した。


クズと言われながらも笑顔で対応し、

クズと言ってきたやつから金を借りて、返さないでやった!

クズなんだから良いだろ?と、大柄な態度を取ってやったり、笑いに変えたりしていた。


だがそのうち疲れてしまった。

そいつらと会うのを辞めることにした。学校も辞めた。


俺はホストを始めた。意地でも夢破れて実家に帰るなんてしたくなかった。

ホストはクズが沢山いる底辺、心地の良い場所だと思っていた。


だけど、同じ事を言われた。

どこのバイトでも言われた事。

どこの学校でも言われた事。


「なんでそんなこともできねえんだ。」

「使えねえな。」

「クズ」


勝手に底辺だと思っていた場所で、さらに底辺だったのだ。

これほど恥ずかしことはない。

さらに言うと彼らは本当の意味で「生きる」事に必死で、その辺の恵まれた奴らよりはるかにしっかりしていて、優秀にみえた。


それがさらに俺を苦しめた。

自分には力が無いと、悟らざるを得なかった。



渋々実家に帰った。

親に経緯を話したら、「そんな簡単なこと、小さい時に教育できていなかった私達の責任だ」と泣かれた。


(違う。たぶんそうじゃないんだ。)


俺も涙した。涙することしかできなかった。



父母は決してそんな言葉は発していない。

だが俺の額には"失敗"という文字がはっきりと刻印された気がした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ぴろろりろーん。

「まもなく2番線に電車がまいります。黄色い点字ブロックの内側にーー」


(もし俺に勇気と厚い面の皮さえあればあと一歩踏み出してるんだけどなぁ。)


そんなことを考えながらアナウンスに従い、渋々黄色い線の内側に後ずさりする。


寒さが徐々に我が物顔してくる12月上旬の夕暮れ、

駅のホームで向かいのサラリーマンを眺めていた俺の視線は、風を切る電車に遮られた。



(そんな事を考えるのはやめると誓ったじゃないか。

そう。脳を殺し、欲を捨て、自我を保つんだ。)


ーそうだ。いい感じだ。


自己嫌悪に陥りながらも、何度も己に言い聞かせながら電車に揺られ、最寄り駅から自宅への微妙に長い距離を、体を震わせながら歩いていた。



ここに引っ越して間もないころ、「自宅アパートの目印に最適だ」と決めていた、いつもの自販機を通り過ぎた頃だ。


異変に気付いたのは..



ん?人..?



足が止まった。


横目だったので定かではなかったのだが、かなりの違和感と同時に、自販機横の路地裏に人の気配を感じたのだ。


周りを見渡しながら自販機に戻り、恐る恐る路地裏に顔を覗かせてみる。

心臓が跳ね上がった。



なんと、人だ..間違いない。

コートで体を覆うようにして体を丸めてはいるが、足が出ている。

しかも素足って..


多分女性だ。かぼそ過ぎるわけではないが、男だと判断するには毛らしきものはみえず、なんというかすらっとしている。


みてはいけないものをみてしまったと言わんばかりにさっと自販機のかげに隠れる。



なんでこんなところに女性が!?

なんで素足!?

てか、服着てたか!?

酔っ払いか?酔っ払いだよな、さすがに。


それしか思いつかない。

それとも事件か?いやまて、そもそも生きてんのか?


え..だとしたら俺もやばくないか?

誰にもみられてないか?


再度周囲を見渡しながら、はや歩きで自宅アパートに向かっていた。


帰宅途中、


(もし彼女が生きていて、助けを欲していて、介抱して、惚れられて、運命の出会いでした〜!的な展開があったりして..)


なんて妄想をちらつかせながら2回ほど引き返そうとしたが、そんなのはある分けがないと自分に言い聞かせた。そう。脳を殺すんだ。厄介事は御免だ。


そしてなによりーーガチャ。


バタン。


部屋が汚い。


こんな汚くて臭い部屋におなごなんぞ連れ込めるかっ!

おなごどころか、友人すら連れ込めないというか、連れ込む友人がいないというか..

いや、まあ人との繋がりを諦めていたので当然なんですけどね!


わけもわからない自問自答を繰り返しながら、

"無意識に部屋の掃除を始めている自分"に気付くくらいには冷静になった頃、ふと思った。


さっきから自分の事ばかりじゃないか。

もしも..もしも本当に困っていたのだとしたら?


こんな寒空で、素足で。

よくわからん状況だが気の毒すぎる事はわかる。


「もし部屋の片づけが終わって、もう一度あの場所までいってみて、まだ彼女がいたとしたら声をかけてみるか。」


5割の好奇心と4割の下心と、1割の良心からそう決心した。


一時間ほどたっただろうか、人の部屋と呼べるくらいには綺麗になったのをみて、ため息をもらす。


い、いくか。

ガチャーー


多分いない。

この寒さだ、いてもらっては死人説が濃厚になってしまう。

それだけは御免蒙りたい。


もしいたとして、なんと声をかけるのか考えてもいない。

そんな考えを張り巡らせながら、例の自販機までたどり着いた。


鼓動がはやくなる。


「まあ、まさかいるわけないよな。」


路地裏にたどり着いた。


そこに人影がーー





無かった。





事件などの危険性がなかった安堵と、謎の喪失感とよくわからない感情にため息をつく。


「何をしてるんだ俺は。」


一人で勝手に盛り上がっていた自分が滑稽すぎて、鼻で笑うしか無かった。


ガチャ。

ふたたび帰宅し、少しだけ綺麗になった部屋を眺めながら決心する。


もう寝よう。


ベッドに情けなく倒れ込み、目を閉じる。

そもそもなんであんなに胸が高鳴ったのか、


その理由を自己分析し、自分のあまりの気持ち悪さと情けなさに気付くのに、そう時間はかからなかった。


所謂、運命の出会い的な事に期待していたのだ。


29歳無職男性が..ある日突然一人の女性に出逢い、その暗く閉ざされた人生に一筋の光が!的な事を。


救いようがない。


なんの努力もせずに運命の人が現れるシンデレラ展開を妄想していいのはイマヲトキメク女子中高生くらいだろう。


いや、彼女達だってそう思ってはいても、言えないくらい恥ずかしい事なのでは..

それをアラサーの、しかも男、それも無職って。


考え出すときりが無い自己嫌悪がまた始まりそうだと気付き、

最近観ているアニメや小説のせいにする事を落としどころに決め、脳を殺すことにした。


異世界なんたら〜とか、転生したら〜とかの類だ。



「異世界なんてものがあるなら、すぐに行けるくらいには準備出来てるんだよなぁ。」



「.....!!」


「待ってって!」


「...!!!」


なんだ?


やっとこさ自分の気持ちに折り合いが付きそうになったところに窓のそとから突如男女の声が耳に入る。


(二階だというのに外の人間の声が丸聞こえなのってどうなんだよ)


と、自分の住んでいるアパートのボロさを嘆きながらも、


"ほとんど使われてるのをみたことがない駐車場"


という変わった場所での男女の会話を、ドラマか映画でも楽しむかの如く、少しワクワクしながら聞き耳をたてた。


「キャンユースピックジャパニーズ?」


「....!!」


oh..まさかの英語じゃないか、海外ドラマか?

英語を少し勉強しておいて良かった。


しかし女性のほうはなんと言っているか聴き取れないなぁ。かなり怒っていそうなのはわかるが..。



「私達怪しいものじゃアリませーん」


「あっはは!怪しすぎるだろ笑 俺に任せろって!」



ん?男が二人いる。


それにしてもどう転んでもラブラブな展開になりそうにない会話内容、

男達の嘲笑にも似たテンションと、

女性の切迫した声色とのギャップから少しだけ嫌な予感がよぎり、

起き上がってカーテンの隙間から窓の外を確認する事にした。



やはり!

いかにもチャラチャラした大学生らしき男が二人と、それから..



コートを着た..



いやコートにくるまった素足の..



え!?



まじかよまじかよまじかよ。

咄嗟にカーテンを閉じた。


薄暗かったが、間違いない。

さっきの路地裏女だ。


どうする..ナンパされているのか?


いやまだわからないじゃないか。

お芝居の練習とか?実はホントの彼女でした!とか?

その場合、助けに入った時の空気を考えてみろ。軽く死ねるだろ。



ガシャ

金網に何かがぶつかる音と同時に、

悲鳴ともとれる声が聴こえた。



その瞬間立ち上がっていた。


立ち上がってから思った。



立ち上がってどうする!

いくのか?絶対関わらないほうがいい。

お前がいってどうなるってんだ。

そうだ。そもそも夜にこれだけうるさければ、誰かが苦情の1つでも入れに行くんじゃないか。

誰かがーー誰か。



違う。


「誰かが」という考えに至った瞬間に、それは違う。という感情が沸き立った。


正直意味のわからない感情だったが、彼女は俺が見付けた。助けるなら俺しかいないという謎の使命感に駆られた。


その瞬間、足が動き出していた。



「なんたって彼女のために部屋の掃除をしたんだからなー!」



うおおお!と心の中で雄叫びをあげながら、部屋を飛び出し階段を駆け下りた。



隣の駐車場へ向かう途中、目の前から走ってくる人とぶつかりそうになり、

「あぶねっ!」

と吐き捨てられたが、気にする余裕など無かった。


間もなく目的地周辺だ。


(どうする。駐車場の管理者を装うか?)


なるべくでかい声だ。

第一声の威嚇が肝心だ。

クマとかがそれで逃げ出してるのを、YouTubeのショート動画でみたことがある。


いいぞ。飛び出した時は半分ヤケだったが驚くほど冷静だ。


あの角を曲がればっーー



ハァハ..


.....あれ?


人がいない?


いや、人はいる。


サイズのあってないコートに身を包み、素足のまま息をふーっふーっと切らしながら眉間にシワをよせている人はいる。


事態を把握するのに一瞬時間がかかったが、


ここに来る途中ですれ違った男が二人組だったこと。

明らかにひと悶着あったであろう女性の息のきらし方から、何となくだが予想できた。


おそらくだが自力で男達を追い返してしまったのだろう。


あー。一人で乗り切れちゃう系女子だ!

僕なんかが関わる必要全くない系女子だ!

ほんっっとにすみませんでした。

もう一生出しゃばったり致しませんっ。


早く帰りたかった。

というより穴があったら入りたかった。


のだが、


なんということだ。路地裏女が近付いてきているではないか..


(あれ?背はそんなに高くな..)


ひやりとした風がふく。


「あ..」



俺は金縛りにあったかのように動け無くなった。

いや、決して彼女にそういうエスパーじみた能力があったわけではない。


美しさのあまり魅入ってしまったのだ。


ボロいアスファルトに不釣り合いな、

歩くたびに左右に、どちらかというと右に揺れる長い金色の髪。

ユニクロのマネキンかと思うほどの顔の小ささ。


スタイルは大きめのコートのせいではっきりわからないが、唯一視える素足から計算すれば、バツグンだということは容易に想像できる。


何より目だ。


眉間にこれでもかというシワがよってはいるが、通り過ぎる車の光に照らされて時折り輝く緑とも青とも取れない宝石のような..



「ガッタスフォリア!」



鼻筋も通って..



「ガッタンジュール!」



パーソナルスペースギリギリまで距離を詰めてくるやいなや、怒声を浴びせられた。


言葉は理解出来ないが、明らかに怒られているということは表情と声色でわかる。

ま表情と言っても、2メートル付近くらいに近づかれてからは、まともに目はみれて無いのだが。


「ウェ、ウェ、ウェイトウェイト!」


両手の平を相手に向け、必死に敵ではありませんアピールをする。


正直かなり困惑している。

色々と思っていたのと違いすぎたからだ。



ふと、目線を彼女の鼻筋から口元にうつしたときに気付く。

カチカチと音をたてていたのだ。体も小刻みに震えている。


そりゃそうだ。


気のせいで無ければだが、コートの下に何か着ているようにはとてもみえないのだ。


上旬とはいえ12月。

こんな格好で外に居るのは正気ではない。

いや、12月でなくても異常ではあるのだが。

足からも少し血が滲んでいる。


とにかくまずはこれらをなんとかしなければと思い、

何かを喚く彼女に


「ジャストアミニッツ、ジャストアミニッツ」


と両手のひらを何度もみせつける大袈裟なジェスチャーを行った後、

急いで部屋に戻り、使ってないサンダルと、干していたスウェットを用意し、階段をおりた。


彼女はというと、部屋に戻る俺に対し、激しい口調と身振り手振りをしながらついてきていたため、アパートの2階へ登る階段の下まで来てしまっていた。



「あ〜..yours!yours!」



多分、

いやほぼ間違い無く英語圏の人では無いだろうことは分かっていたが、念のためRの発音を丁寧にしよう。等と考えながらそう伝え、


持ってきたものを差し出す。


彼女はというと、相変わらずもの凄い剣幕で俺をみているが、悪意が無いことだけは伝わったのだろうか。

怒声は消えていた。


少し不思議そうに、サンダルとスウェットを受け取ると、少しの間フリーズし、

何かを閃いたかのように、サンダルを履き、スウェットを、


スウェットを..


スウェットを首に巻きつけている!?


「あ、ちが」


反射的にをもぎ取ろうとしてしまい、

その手が払いのけられた。


彼女の顔が真剣そのものだった為、それ以上何も言えなかった。


その整った真剣な顔立ちから時折光る鼻水と、

大きめのコート、

スウェットのマフラーに

サンダルという、

トンチンカンな服装がおかしくて仕方無かった。


端的に言うとツボってしまった。


「あっはっはっはっはっはっは、ふがっ、ひぃ~、あっははっは」


分かってる。駄目だ。笑うべき時じゃない。

だが我慢しようとすればするほど変な笑い方になって、

それがまた面白くて笑ってしまう。


「トルガ?」


彼女も眉間にシワを寄せ、首を傾げながら何か言ってるでは無いか。

だけど待ってくれ!

とるがって何?

笑いが止まらない。


「トルガッデコンノ?」


何言ってるかさっぱりわかんないから喋るのやめてくれえええ。

もはや何に笑っているのかすら自分でも分からなくなっていたが、止まりそうにない。



途端に腹に激痛が走った。



内では無い。外だ。

情けなく溜まった贅肉が千切れそうな痛みだ。


「いででででで!」


彼女がうつむきながら俺の脇腹をもの凄い力で捻っていたのだ。


「痛い、痛い、痛い、痛い」


いや、ちょっと待って、まじで痛い。しかもながい。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、いでで」


「痛いってば!」


純粋な謝罪の気持ちが、理不尽への怒りにかわるほどに長くつねられたせいか、少し声が大きくなった。


それをみてやっとこさ痛みからの解放を許し、

フン、と満足気に2階への階段を登り、


部屋のドアを不思議そうに眺めた後、ドアを開け、

少したじろぎ、意を決してその中に入る彼女。


「いででで」

まだじんじんする。


「加減ってもんがあるだろ」


患部をさすり、座り込んでいた階段を登りだしながら、気付いた。

そして体中の血の気が引いていくのを感じた。


「あれ?今俺の部屋に入らなかった?」


今度は俺がフリーズした。

えー、読んでいただけただけで感謝です(笑)

貴重なお時間を、本当にありがとうございました

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