66.デート-4
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「…………なあ、確か道具屋行くって言ってなかったっけ?」
「んー、いやまあ、そうなんですけどねえ……んーいないなあ……」
結局適当な定食屋で腹をこしらえたテオドア達は、この後ジミルの希望で道具屋に向かう……はずだった、のだが。
先ほどからジミルについていけば、どうもまったく違う方向に向かっている気がしてならない。新しい店でもできたのかと思い黙っていたが、広場に着いたら今度は店ではなく中央に座す大道芸の舞台のあたりをしきりに見回していた。いったいどうしたというのか。
「ジミル、悪いけど俺、人混みはあんま得意じゃないんだけど」
周囲をしきりに気にしながらテオドアが眼鏡をずり上げる。行き交う人々の視線が気になってしかたなかった。
「すみません、あとちょっとだけ……クォーツさん情報だとここ来る予定らしいんですけどねえ」
「え、もうクォーツ来んの?わざわざここじゃなくても」
「あ、いや、クォーツさんが来るわけじゃなくて……」
先ほどからいまいち噛み合わない後輩の、釈然としない物言い
が気になる。こんなことなら帽子も持ってくればよかったな。眼鏡だけでは心許ない気がしてテオドアは少し後悔した。
「あーー、すみません、俺もうちょっと前の方まで舞台見てきます。副隊長はここら辺で時間を潰してもらえませんか?」
テオドアの気持ちを汲んだのだろう。ジミルはそう言うと人混みの方へかけてゆく。提案はありがたい反面、そもそも一体何がしたいのかいまいちわからないテオドアは、首を傾げながらもとりあえず豚の串焼きの露店へと足を向けた。大道芸が催されているためか、今日は露店が多く出ている。せっかくなら屋台グルメを満喫しておこう。先ほど腹ごしらえしたばかりだというのに腹減りテオ坊はまた食べることを考えていた。
豚の串焼きをはじめ、激辛ポトフ、ふかし芋、アップルパイを食べ終えた頃だった。お土産にパンでも買って帰ろうか、いやまだ今買うのは早いかとぼんやり悩んでいると、背後からぼんっという破裂音が聞こえた。
振り返れば、なんだか大道芸の舞台の方が騒がしい、なにかアクシデントでもあったのだろうか。ジミルもなかなか戻らないしこれはちょっと様子を見に行ったほうが良いかもしれない。そうおそるおそる人混み近づいていったその時。
突然、女特有の黄色い声が響き、人混みが波のように急激にうねり出した。
まずいと認識するより前に、本能で走り出していた。
狭く暗く、より人が寄りつかない場所へ。
テオドアは一際日陰っている路地裏に入り込むと、後輩を探すのを諦め、逃げるように奥へと進んでいった。
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