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4話 城を出る

俺は王の間から去り兵士の案内の元、自分の部屋に戻る。


荷物なんて何もないが、忘れ物が無いか確認をする。

俺は何の思いれもないこの部屋を10秒ほど眺めながら「ふぅー」と息を吐く、両の手のひらで顔をパンパンと叩き気合を入れる。


俺は(きびす)を返し部屋の扉を開ける。


兵士に「もういいのか?」と問われる。

俺は頷く。


俺は兵士の案内の元、城門まで歩いていく。城門に着くと、待てと指示をされたので、俺は勝手に暇をつぶしていた。


しばらくすると文官らしき人物が歩いてくる。その後ろに犬耳メイドさんが不安そうな表情を浮かべ文官の後ろを歩いていた。文官が立ち止まる。


「お待たせ致しました。」文官は一礼をする。つられてメイドさんも一礼をする。


「それでは勇者様、お約束通りこちらが援助金になります」


俺は袋を受け取る。重さはそれなりだ。袋の中身を確認する為に袋の口を縛っている紐を緩める。

中に有る硬貨を見る。中には金貨の様な物がある。ざっと見て10枚は越えているだろう。少し考えてみる・・・。


しかし、この国の通貨価値が分からない。考えるだけ無駄かもしれない。分からなければ聞けばいいのである。俺はこれを渡してきた文官に聞いてみる。


「少し聞きたいのだが、あなたならこの金貨1枚で何日暮らせますか?」


文官は少し不思議そうな表情をこちらに向けて答える。


「そうですね。私なら1,2日は問題なく暮らせるでしょう」

「なるほど」


価値としては金貨1枚、大体1万円ってところかな、日本なら1万円あれば2日はいきれるだろう。しかし文官の回答は宿泊代が含まれているのか、はたまた食事代だけなのかによるだろうが。俺はそばにいる兵士にも質問してみる。


「あなたならこの金貨1枚で何日暮らせますか?」

「私なら食事代だけでいいので頑張れば1か月はいけますね」

「ありがとう」


やはり金貨の価値は1枚1万円くらいかな、1万円あれば1か月分の食費にはなるだろう・・・多分。

兵士は食事代だけでいいのか住み込みなのか寮のようなものがあるのか、とにかくご苦労様である。


そして文官は後ろに控えていたメイドさんに前に出ろと声をかける。


「これが約束の奴隷です。逃げられないように繋いでおいた方がいいかもしれませんね・・・。さあ行け」


メイドさんは下を向きつつこちらに歩いてくる。時折、首を少し上げてちらりとこちらを見てはすぐに視線を元に戻す。そして俺の背後に回る。


「約束の物はこれで全てですね」

「はい、確かに」

「他に何かございますか?」

「では、今日は宿屋に泊まりたいので宿屋の場所を聞きたいのですが」

「この大通りをまっすぐ歩いてしばらくしてから右のほうに歩けば宿屋があります」


めちゃくちゃ大雑把な説明だが俺は「分かったありがとう」と言ってその場を後にする。


「じゃあ、行こうか」

「・・・はい」


俺はメイドさんに声をかけ反転して歩き出す。城の門をくぐると跳ね橋がある。俺はメイドさんの表情を見る。


勝手に連れて来られて不安なんだろうな、もしかしたら怒っているかもしれない。危険な冒険に連れていかれて、魔王を討伐しに行けと言われれば不安になるのも仕方のないことだろう。戦闘能力のないしな。


跳ね橋を渡り終えてから土でできた大通りを歩く。俺はメイドさんに話しかける。


「まずは宿屋に向かうからついて来てくれ」

「はい」

「城の人たちに何か説明されたか?」

「えーと、お前の主人が変わったから、これからお前を引き渡さなければならないと・・・。」

「そうか、まぁ・・・よろしくね」

「え、あ、はい、よろしくお願いいたします」


俺は大した説明もないまま大通りをまっすぐ歩いていく、少し時間が経ってティルが話しかけてくる。


「あ、あのうご主人様は勇者様でいらっしゃったのですか?」

「え?うん、一応そうみたいだね」

「そう、そうなのですね」


先ほど文官が俺のことを勇者と言っていたのが気になったのであろう少しだけ不安が和らいでる気がした。勇者ブランドは俺のスキルを知らない人には有効なのだろうな。少しは安心してくれただろうか。


俺たちは宿屋の場所を人に聞きながら歩いて向かう。ティルは慣れない土の道に時折つまずいている。

「大丈夫か?」(そういえばティルは目が悪いんだったな)

「はい・・申し訳ありません」


メイドさんが俺の斜め後ろを歩いているのが少し気になる。俺は少しゆっくり歩きメイドさんと横並びになるようにする。


「そういえば名前、名前聞いてなかったよね」

「えっ、はい。ティル。犬族のティルといいます」

「そうか、俺はタイトって言うんだよろしくね。」

「はい。よろしくお願いします」

「これからはティルって呼んでもいいか?」(少しは主人らしくしてみるか)

「はい、分かりました」


なんだか照れ臭い。しかし、これから起きるであろう苦労を考えると気が重い。この世界に来て感情の揺さぶりが凄い。


少し賑やか(にぎ)な通りに入り俺は宿屋っぽいベッドの看板が掲げられている建物を発見する。の扉を恐る恐る開ける。

そこにはカウンターがあり、その中にはえらくガタイのいいスキンヘッドの店主がこちらにいやそうな目を向ける。その横の待合所で強面の男たちが話をしている。


「次の獲物はどうする?」

「昨日のグランドブルは中々、報酬が良かったから俺は当分いいや」

「とにかく俺は冒険者ギルドに行ってくるわ」


立ち上がった男とすれ違う。

前の世界でも宿屋なんか泊ったとこもない俺は恐る恐るカウンターへ近づいて店主に話しかける。


「すまん。一先ず1泊したいのだが部屋は空いているか?」


店主は俺の方を見た後、俺の後ろに隠れるように立つティルを見て少し考えてから、


「んー、あー、1泊、食事が2食付きで銀貨6枚だ。」

「ああ、それで頼む。これで足りるか?」


俺は金貨の入った袋から金貨を1枚取り出してカウンターに置いた。店主は黙って金貨を受け取り、銀貨4枚と部屋の鍵、それと謎の木札を俺の前に差し出した。俺は質問をした。


「この木札は何だ?」

「俺の店では食事をやってないから隣に酒場があっただろ、あそこに持っていけば飯が食える」

(要するに食券みたいなものか)

「分かった」

「部屋の番号は202だ。2階に上がればわかる」

「分かった。・・・ティル行くぞ」

「はいっっ」


俺たちは階段を上がり、202と書いてある部屋のドアを開ける。そこにはベッドが1つ、机が1つあった。一先ずベッドに腰を掛ける。


「はぁ、特に何もしてないけど疲れたな」

「お、お疲れ様です」


ティルは顔を赤らめながら戸惑いの笑顔を向ける。


「?」


俺はティルの表情が気になりながらも気になったことを聞いてみる。


「そういえばさっき待合室の男たちが冒険者ギルドがどうとかって言ってたけどティルは知ってる?」

「えー、詳しくは知らないんですが冒険者という仕事があると聞いています。あ,後、昔、勇者様がしていた仕事が冒険者だったと思います」

「ふーん、そうなんだ。宿屋の主人にでも場所を聞いてみるか」


俺は視線をティルの方に向ける。頭には犬耳に黒を基調としたロングスカートのメイド服、白のエプロン、メイド用の靴・・・。冒険者をする服装じゃあないよな。後で買い物でも行くか。


少しの沈黙の後、したくない説明をしなくてはいけないことを思い出し話し出す。


「ティルに説明しておきたいことがあるんだ」

「はい、なんでしょう」

「俺のスキルの事なんだけど」

「はい」

「実は俺、まだスキルを使えたことが無いんだ」

「!?」

「それでスキル名が【奴隷覚醒】というんだ。だから、君には俺の奴隷になってもらいたい」

「はい、分かりました」


すると、強い光が生まれる。ティルの左手の甲に紋章が浮かび上がる。ティルは辛そうに表情をゆがめ跪いた。俺も少し気だるさを感じる。


強い光が消えると同時にティルが倒れ込む。俺は焦って宿屋の部屋を飛び出るのであった。

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