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決めるのは想いだけ……

 目の前の重装歩兵はそれぞれ直剣など一般的でそこまで脅威になるようなものではないのだが、それでも鎧を貫くほどの一撃を引き出すのは難しい。

 それに彼らの装備はかなり特殊だ。


 防具の種類によって変わってしまうため一概には言えないが、普通彼らのような重装の鎧というものはプレートのつなぎ目が弱点となりやすい。

 そこを突き刺すために開発された剣があるぐらいだからだ。

 しかし、彼らのそれはそのつなぎ目の弱点を克服しているように見える。

 単純に弱点に突きを入れる攻撃では貫通は出来なさそうだ。


「ミリシア、ユウナ。攻撃態勢だ」

「はい!」「ええ」


 ブラド団長が剣を引き抜いてそう命令を出すと、私たちもすぐに攻撃態勢に移行した。

 敵は重装備の兵士三人、うまく立ち回れば簡単に倒せるだろう。

 ただ、それでも不安要素が残っている。相手の聖剣がどのような能力を持っているのかによっても変わってくる。

 その点を注意しながら冷静に立ち回っていくしかない。


「ユウナ、私の援護をお願いできるかしら?」

「大丈夫です」


 そう言って彼女は左手に剣を持って私の左斜め後方に立った。

 彼女は両利きの剣士である。左手でも右手でも剣を構えることができるのは非常に自由度が高いと言える。


 とは言っても彼女は自分に合う剣術や型がないと不満を吐露していたことがあった。

 確かに両利きに最適化された構えはそこまでないからだ。

 だから、彼女は支援型の立ち回りが得意と言える。

 どの構えであっても弱い部分は存在する。その部分を補填するように彼女が立ち回ってくれればこちらとしてはかなり立ち回りやすい。


「せいっ!」


 重装歩兵の重い一撃が私の右斜め上方から振り下ろされてくる。

 剣速も早く、非常に強力な一撃ではあるものの私のこの構えはその方向に対応している。


「はっ」


 私は右足を軸にして右回転、そしてその勢いのまま敵の剣へと魔剣の剣先を当てる。


 キャリィン!


 特に能力を使わずにその剣を防いだ。

 すると、その隙を狙って別の重装の男か左方向から襲いかかってくる。

 もちろんその方向にはユウナが構えていた。


「ユウナ!」

「はいっ!」


 私の合図とともにユウナが駆け出すと、そのまま素早くはないが確実な剣撃を繰り出し私の左方向の敵をうまく対処してくれたようだ。、

 ただ、これだけでは意味がない。

 こちらが後手である以上、持久戦に持ち込まれてしまっては鎧を着込んでいる敵が一歩上手と言える。

 それなら持久戦に持ち込まれる前に勝負を付けるまでだ。とは言ったものの特に解決できる手立てを思いついたわけではない。


「ふっ!」

「団長?」


 そんなことを考えていると、後ろに構えていたブラド団長が走り出した。


 ギャリョンッ!


 鎧のプレートが弾け飛ぶ音が聞こえた。

 どうやら団長の聖剣の一つが重装歩兵の鎧を破壊したようだ。


「言っていなかったが、俺の聖剣は破壊。物理的な鎧は得意だ」


 彼はそう言ってユウナが対処している敵の鎧も弾き飛ばしていく。


「なっ!」


 私は団長が弾き飛ばしてくれた部分へと鋭い突きを入れる。

 致命傷ではないが、完全に無力化できる箇所へと的確に攻撃を与える。

 すると、男は血飛沫を地面に撒き散らして倒れる。


「ばかなっ!」

「やっ!」


 ユウナもうまく突きを与えることができたようで、相手を簡単に沈めることに成功した。

 ただ、かなり深く斬り込んでいた様に見えたが、敵は大丈夫なのだろうか。

 そんなことよりもまだもう一人残っていた。

 そして、意識を周囲に向けた途端、団長が重装歩兵の一人を真っ二つに切断していた。


「議会とは戦争中だ。それは覚えているのな」

「……」

「重装歩兵で俺たちを止められるとは慢心としか思えない」


 そう言って団長はザエラ議長に向けて、鋭い鋒を向けている。


「団長、流石にこれは……」

「何か問題か?」


 無感情なその目は私を貫くように見据えている。


「団長! 何かあったのですか?」


 すると、剣を交わした音を聞きつけた聖騎士団の人たちが走ってきた。


「残党を倒しただけだ。一人は死亡、二人は拘束しろ」


 ブラド団長はそう言って剣を収めて部下にそう命令して、この場を立ち去った。


   ◆◆◆


「アレイシア様、湯加減はどうですか?」

「ええ、大丈夫よ」


 エレインが夕食の後、真っ先に風呂に入ったせいで一緒に入ることができなかった。

 今はユレイナに少しだけ介抱されながら風呂に入っている。


「それにしてもエレインは私たちと入るのが嫌なのかしら」

「嫌ではないと思いますよ。ただ、四人でここに入るのは少し疲れると言った感じでしょう」


 そう言って彼女は私の体を洗ってくれている。

 自分でもできるのだが、彼女が「私がやります」と言ってすぐに泡を私の体に付けてくるのだ。


「それならいんだけど……」

「洗い流しますね」


 バシャっと水を肩から掛けられ体の汚れを泡とともに洗い落としてくれる。

 すると、石鹸の優しく心地よい香りが浴場に広がる。


「まぁ毎日いるわけだから、またどこかのタイミングで一緒に入ればいいか」

「ええ、それかこの家の浴場を広げると言った方法もありますよ?」

「流石に他人の家だからね。そこまでは失礼かなって」


 ほとんど私たちの家のように使っているが、ここは他人の家である。

 分家の一人から借りている状況で、私たちが勝手に拡張などしていいものなのだろうか。

 あの人ならすぐに許してくれそうなものだけど、私でもそこまでは少し申し訳なくなる。


「ふふっ、それにしても妙なものですね」


 そう言って笑う彼女はどこか楽しそうであった。


「何が妙なの?」

「いえ、ただ私とアレイシア様がこうしてお風呂に入っているとどうしても不思議な気分だと思っただけです」


 確かに思い返してみれば、彼女とは聖騎士団時代の頃から知っているが、確かにこうして裸で話し合うというのは新鮮な気分ではある。


「まぁそうね。こうして話すってよりかは喧嘩ばかりしてたイメージだわ」

「それがいつの日か、こんな関係になってしまいましたね」


 私が騎士団に入ってすぐの頃は喧嘩ばかりしていた。だけど、ある日を境にこうして私のメイドとして尽くしてくれるようになった。

 思い返してみれば私たちの関係は奇妙なのかもしれない。


「うん。これも何かの縁かもしれないしね」

「ええ」


 そう言って彼女は勢いよく私の髪にシャンプーをつけ始めた。


「ひゃっ!」


 ひんやりと冷たいシャンプーが頭皮に染み込んでくるようだ。


「さ、綺麗な髪も手入れをしっかりしないとですよ」

「わかってるから、ちょっとっ」


 それから少しくすぐったい頭のマッサージを受けることとなった。

こんにちは、結坂有です。


アレイシアとユレイナの関係、少し気になってきましたね。

彼女はどのようにして知り合い、どのようにしてこんな関係となったのか。そして、それが今後どのよう物語へ影響するのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに。



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