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終わらない対立

 議会軍の本部を制圧した私たちはブラド団長と話していた。

 彼は先ほどまで商店街の堕精霊鎮圧を行なっていたようで、どうやらそちらの方も何とか解決できたようだ。

 それにしても商店街と議会軍に同時に何かが起こるということは何か意図的なことを感じる。

 やはりこれは何かの計画なのだろうか。


「団長、これってもしかして議会の計画?」

「それも考えられるがな。ただ気になるのは議会の人が誰一人としてここにいないことだ」

「そう言えば、こうなる前に誰かいたはずだけど……」


 確か誰かが口論をしてここまで騒動が広がったはず、誰なのかわからないけれどそうだった。

 それにしてもドア越しだった上に、距離が離れていたからどんな人だったのかはわからない。


「議会の人が一人でもいれば話は違ったんだが、これではただのテロ行為として事件は片付けられそうだ」


 団長のいう通り、この事件に議会が本当に関与していないのであれば犯罪集団が勝手にやってことと片付けられるだろう。

 しかし、一人でもこの騒動に議会の人が関わっていたとすれば話は変わってくる。


「そうね。ほとんどの人が聖剣犯罪集団の人たちでしょ?」

「ああ、何かと逃げられていたからな。ここで一気に捕まえることができたのはよかったが……っ!」

「よぉ!」


 そう言って遠くの方から声をかけてきたのは縁の大きな帽子を被った男性であった。声色から察するに老いている人なのだろう。

 いや、それよりも団長がここまで怯えているのはなぜだ?


「どうしたの?」

「何も話すなよ」


 小声でそう私とユウナに伝えた彼の表情は真剣そのものであった。

 今まで以上にないほどに緊張しているようにである。

 彼がここまで怯えるということは相手は議会とは別の権力を持っている人、もしかして……


「アーレイク、様」

「堅苦しいからその名はよしてくれ」


 すると、帽子をとってその素顔を見せる。

 頬には大きな傷跡が残っており、少しだけ見えた腕には大きく発達して隆起した筋肉が見えていた。

 彼のシルエットを見てるだけでかなり体格がしっかりとしているように思える。


「今回はどのような要件を?」

「ただ、議会のやつが色々と動いているようだしな」

「まさか、あなたが絡んでいるのか」


 そう団長がアーレイクに聞くと、彼は歴戦を潜り抜けてきたかのような鋭い目を団長に向けた。


「そんなことあるかよ。俺は議会のことが嫌いだが、ここまで大きなことをするつもりはない」

「そうだったな。あなたは大事を嫌う性格だ」

「ああ、だから商店街の市民を保護した」

「一体あなたは何がしたい?」


 団長が彼の鋭い目を突き返してそう聞いた。


「ふむ、この世界を変えたい。ただそれだけだが?」

「……変える、どう変えたいんだ? それによっては本当に敵対関係になる」

「聖騎士団とは友好的でありたいものだな。一応娘のアレイシアが世話になっていたんだ。それに今後エレインもそこに入るのだから友好的に接するのは当然だ」


 まさか、目の前のアーレイクという人はフラドレッド家現当主の人なのだろうか。

 それにしてもなぜこのタイミングで彼がここにきたのだろうか。

 明らかに何かを狙っているとしか思えない。


「っ! 何が狙いだ」

「狙い? 議会が自滅するのを見ていたいだけだが?」


 そう言って余裕そうな表情を浮かべる彼は明らかに何かを企んでいるようだ。

 それが一体なんなのかはわからない。

 団長曰く、フラドレッド家は議会に次ぐ権力を持っていると言われている。

 この国の権力は議会とフラドレッド家に支配されているのだ。ただ、フラドレッド家は国外とも交流を深めている。

 実質的な影響力は議会よりも大きいはずだ。


「このままでは本当に精霊が滅んでしまう。あなたはそれでもいいのか?」

「確かに精霊が滅んでしまっては魔族に勝つことはできないな」

「なら、自滅を待つのは得策ではない気がする」

「一理あるな」


 彼はそれ以降言葉を続けることはなかった。


「……どうして議会を追求しない? あなたほどの影響力があれば議会など簡単に変えることができるだろう」

「正直なところ、権力がとか、影響力がとか面倒なだけだろ。そこまで変えたいのなら自分で変えてみたらどうだ?」

「団長として、聖騎士団の越権行為はできない」


 聖騎士団を統べる団長が越権行為をしたとなれば、市民の信頼は落ちてしまう。

 彼は簡単にやってみろと行っているが、団長には立場というものがあるのだ。


「ならこの話は終わりだ」

「まだ終わっていない。どうしてあなたがここに来たのか、それは聞いていないが?」


 団長がそう踵を返した彼を引き止めた。

 すると、彼は少し不機嫌そうな表情で団長を見つめた。


「さっきも言ったがただの気まぐれだ。それ以上もそれ以下もない」

「だったら、どうしてここなんだ……っ!」

「おやおや、ここで何を話しているんだ?」


 問いただそうとした途端、少し離れた場所からザエラ議長が現れてきた。


「変な奴がきたようだな」

「変とは……君には言われたくないがね」

「議長がどうしてここに?」


 議長の周りには大勢の護衛が立っている。

 当然と言えば当然なのだが、それにしても重装備の鎧を着ていることが不自然であった。


「精霊撲滅隊、厄介な計画を考えている者がいるのだなとな」

「偵察か?」

「視察と言ったところか、まぁ気にすることはない」

「不自然だな」


 ザエラ議長がそういうとアーレイクはそう言って議長の方を向いた。

 その目は明らかな敵意を持っている。

 それは団長に向けた鋭い目とは比べ物にならないほどに心臓を切り裂くような強い視線だった。


「……何がだね?」

「あんたは対外政策を考えていたんじゃないのか? こんなところにいては会議も捗らんだろう。まさか、そんな会議よりも大切なことでもあるのか」

「マリセル共和国のことか。あの国には何もできない。ただ滅びるだけの国のことよ」


 まさか、議長は外国がどうなってもいいと思っているのだろうか。

 確かにこの国は自給自足ができるよう発達している。

 しかしそれでは人道的にどうなのだろうか。私が道徳がどうとか言える立場ではないのだけど、私でもそれは間違っていると思う。


「何もできないがな。人の数は年々減っているんだ。それでもいいのか?」

「この国さえ栄えれば問題はなかろう」

「そうかよ」


 そう言ってアーレイクは踵を返して立ち去ろうとした。


「アーレイク、忠告だが護衛ぐらいは付けた方が良い」

「自分の身ぐらい守れる。あんたみたいに弱虫ではないからな」


 吐き捨てるように彼は歩いて行った。


「それで、ここにきてなんのようだ?」

「ふむ、これは国家反逆に近い行為だ。団長は許されない行為だと思うかね?」

「当然だ」


 私も無言だが、それに肯定するように小さく頷いた。

 それをみた議長は何か満足そうに笑う。


「なら、自分で償って見せろ」


 議長がそういうと手を差し伸ばした。

 すると、彼の周りにいた重装備の兵士たちが私たちに襲いかかってきた。

こんにちは、結坂有です。


この国の三大権力者たちが集まってしまいましたね。

果たしてこれからどのような戦いが繰り広げられていくのでしょうか。気になるところですね。

そして、なぜこのタイミングでフラドレッド家当主のアーレイクが来たのか、色々と複雑です。


それでは次回もお楽しみに。



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