撲滅隊の制圧
私、ミリシアはユウナと共に議会軍の本部へと向かった。
私たちの後ろには他の聖騎士団たちも一緒にいる。これから行うことは完全に議会軍の制圧に近いものであった。
「ユウナ、あなたの実力だと簡単に倒せそうだから先に忠告しておくけど、相手が剣を捨てたら攻撃はしないでね」
「はい」
彼女は確かに強い。
強烈な一撃を与える彼女の攻撃は簡単に人間を殺してしまうほどの威力を持っている。それが彼女の強みであり、弱みでもある。
「それじゃ、ユウナは本部の西側に進んで。私は東から制圧していくから」
「わかりました」
私がそういうと彼女は左側に向かって走っていった。
それに合わせるように私は右側に向かった。
議会の中に入るとすでに戦闘がほとんど終わっている状況で、一部の議会軍がまだ抗いつつも連れて行かれているところであった。
私は聖騎士団の人たちに合図を送るとすぐに連行している撲滅隊の人を攻撃し始めた。
完全な奇襲で彼らは驚いていた。それも当然で、聖騎士団がここに来るなど想定外のことだったのだろう。
もちろん、これは団長の指示だからだ。
「敵襲だと!」「いや、これは聖騎士団だ」「どうしてここに?!」
相手は剣を引く時間もなく、一瞬で制圧することができた。
議会軍よりも強い人が聖騎士団にきているのだから普通に制圧できるのだ。
「案外弱い人たちなのね」
攻撃が来てからの反応の遅さは日々訓練をしている人よりも遅いということがわかった。
おそらく、この人たちは軍でまともに訓練をしていた人たちではないのかもしれない。
私は軍に長いこといたことがないからわからないけど、そうに違いないだろう。
「私はもう少し奥に行くわ」
聖騎士団の人たちにそう一言かけて、私は奥の司令部に向かった。
そこには撲滅隊を率いている人がいる可能性が高い。
ここを乗っ取るぐらいなのだから、ここの施設をそのまま使いたいはずだ。
司令部を警備している人たちが四人ほどいる。
私は魔剣グルブレストを引き抜いて、彼らを制圧する。
この魔剣は分散という能力で、相手の攻撃を分散させることで簡単に防ぐことができたり、また自らの攻撃を分散させ点ではなく面として衝撃を与えることができたりする。
それに魔剣は聖剣に対して有効的なのだ。
「ふっ」
息を吐き、ゆっくりと体を逸らすことで相手の攻撃を交わすことができる。
その攻撃の隙を私が狙って切り裂いていく。魔剣の能力を使わずともこの人たちを相手にするのは簡単なことだ。
「がぁはっ!」
一人、二人と順調に倒していく。
そして、警備を倒した私はそのまま司令部へと入った。
司令部の中に入ると、そこには八人ほどの兵士の見た目をした人たちが集まっていた。
いきなり扉が開いたことで全員が私の方を向いている。
「何者だ?」
どうやら私が敵だとは思っていないようだ。
「聖騎士団よ。この紋章を見てわからない?」
「なっ! 捕らえろ!」
そう指示すると、周りの七人が私に攻撃を仕掛けてくる。
「いくら聖騎士団とて七人相手は無理だろう」
「どうかしら」
私はそう言いながら向かってくる七人を観察する。
三人が剣を引き抜いて、他の四人は剣を鞘に収めたまま。
そして、一人だけ左足を先に出してこちらに向かっている。まずは左足を先に出してきた人から対処するべきだろう。
その人は斜め右方向から剣を振り下ろしてきた。左足を軸に回転力をつけた攻撃だ。非常に高速で威力のある攻撃だが、私のこの魔剣には有効的ではない。
「はっ」
息を吐くのと同時にその剣撃を防いだ。
カシュン!
吸収されたかのような音を響かせ、その攻撃を止めた。
「嘘!」
強烈な一撃を一瞬で、それも簡単に止められたことに驚いているようだ。
私はそのまま体を捻ることで横方向に相手を斬り裂いた。致命傷ではないが、これでも十分だろう。
次は私の左方向からきた敵に対して対処に出る。
下方向から直剣を振り上げてきている。振り上げの攻撃は高い技術が必要とされる。なぜなら、力が加わりにくいからだ。
それをこんな時に使ってくるということはそう言った流派か何かなのだろうか。
まぁどちらにしろ、私には無意味だ。
私はこの細い刀身を分散で大きな面に広げ、それを弾き落とした。
「そんな細い剣で!」
誰しもこの一撃は驚くものだろう。
このような細い剣がまるでハンマーのような強烈で重たい一撃を繰り出したのだから。
そして、この一撃で相手は手首が砕けたことだろう。
振り上げという攻撃は骨に無理な圧力がかかるから当然だ。
さらに私の背後に回った三人を順序よく対処し、左右から攻撃してきた人たちもうまく攻撃を避けつつ反撃することで全員を無力化することにした。
「お、お前は一体……」
「それより、撲滅隊というのはどういうことかしら」
「俺は関係ない。ただ上からこの役職につけと言われただけだ」
いくらなんでもその言い逃れは難しいだろう。
そこで攻撃しろと命令したのはこの人なのだから。
「見逃すわけにはいかないわ。精霊撲滅隊、精霊と人間を守る聖騎士団としては許せないことだからね」
「お、俺はただ……」
「ただ上からの命令を受けていただけ、そう言いたいのかしら」
「そうだ。そうなんだ」
「自分で議会がおかしいとは思わなかったの?」
「……」
どうやら彼は何かが欲しいがためにこの役職についたのだろう。
単純に議会に利用された人間ということだ。
なら、私たちも彼を利用することにしよう。
利用されるだけの人間にこれ以上意味はないのだから。
「誰に命令されたの」
「……」
「答えないならこうするだけね」
私は剣先を彼に突き付けた。
「や、やめてくれ!」
「なら答えなさい」
「副議長のベルモントだ。奴からこうしろと命令された!」
ザエラ議長の補佐をしている副議長のベルモント、確かに怪しい人物に見えていたが、まさか議長とは真逆の計画を進めていたなんてね。
「そう、もう一つ聞きたいことがあるの。この人たちは一体誰なのかしら?」
「それは……」
彼は答えようとはしなかった。
どうやらこの人たちの正体を教えてしまっては自分が不利になるからだと思っているからだ。
「答えないのならっ」
私は剣を振り下げて彼の右腕に突き刺した。
「はぁっ! うぁ!」
「このまま切り落とされたくなければ答えて」
ほんの少し突き刺しただけで大袈裟な反応だ。
目の前で斬り倒された人たちの方が痛い思いをしているはずだ。
「あ、あぁ。こいつらは聖剣を持った犯罪集団の人たちだ。議会から多額の報酬を約束されているんだ!」
「そう」
「はあぁっ!」
どうやらこの人たちは犯罪集団を使った計画だったようだ。
聖剣を持っていることから確かに都合の良い存在だろう。
それに金だけに執着しているわけだから、簡単に利用できるのもある。
「……この人たちは?」
後ろから聖騎士団の人たちが私に話しかけてきた。
「治療して捕まえるべきね。犯罪集団の人たちだから」
「わかりました」
そう言って彼らは治療を始めた。
「わ、私を早く治療してくれ!」
先ほどの司令官の男はいち早く治療を懇願しているが、彼よりも重症の人たちを優先するべきだ。
「包帯があるから自分で巻いてください」
そう言って聖騎士団の治療師は倒れている人を優先して治療を開始したのであった。
まぁ色々とあったのだが、これでわかったのは議会内でも闘争が起こっているということだ。
想定外の事態が多いといえど、この機会を利用すればすぐに議会を崩壊させることは簡単だろう。
こんにちは、結坂有です。
なんとか撲滅隊を制圧できたミリシアたちですが、これから議会はどうなっていくのでしょうか。
そして商店街の方の堕精霊鎮圧はどうなったのでしょうか。気になるところですね。
これからの展開が面白くなりそうです。
それでは次回もお楽しみに。
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