表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/675

商店街での鎮圧

 俺とリーリア、そしてセシルと商店街へと向かった。

 ユレイナはそのままアレイシアの護衛という形で家に残ってもらっているが、もしものためにもすぐに戻れるように道を確保しながら進むことにしている。


 まだ商店街には着いていないが、剣を交える音がすでに聞こえている。

 誰かが戦っている可能性があるな。

 先ほど連絡の取れた聖騎士団の人だろうか。


「あれ、団長よね」


 しばらく進んでいくとそこにはブラド団長が一人で三体ほどの堕精霊と戦っていた。

 彼は非常に素早い動きで敵の攻撃を避け、的確な一撃を放っている。


「援護にいきましょう」


 セシルがそういうと団長の元へと走り出した。

 攻撃用の細い剣を引き抜き、彼の援護へと向かったようだ。

 俺はその周囲を警戒した。

 精霊は心音などの音がないため、聴覚では感知することができない。

 視覚でしか頼りにできないのだ。


「リーリア、周囲の気配は?」

「今のところあの三体以外は見当たりませんね」

「そうか」


 しかし、ここに来る前に見たのはこれだけではなかった。

 少なくとも十体以上は見えていたからな。

 それにしても団長の動きがどうも変だ。死を意識していない思い切った戦い方をしているように見える。

 攻撃を受けても問題ないと言った覚悟のある攻撃だ。


「エレイン様、あれは団長の分身です」

「なるほど、それで思い切った攻撃をしているのだな」

「はい。団長の完全分身ですね。実力をそのままに作り出すことができるのです」


 リーリアがそう解説を入れてくれる。

 確かにそれであれほどに攻撃的な戦い方をしているのだな。

 当然と言えば当然なのだが、分身が死んだところで本体が死ぬわけではない。


「なら本体は別の安全なところにいるのだろうな」

「そうだと思いますよ。さすがに無防備な状態では戦わないでしょうし」

「セシルと団長でここは十分だろうな。俺たちは別の相手をすることにしよう」


 それから俺は別の場所へと走り出した。


 商店街は複雑に入り組んでおり、どこに敵が潜んでいるか推測ができない。

 相手が人間や魔族であれば、心臓の音である程度は推測することができるのだが堕精霊相手ではそれは無理だ。


「それにしてもやけに静かですね」

「ああ、遠くで団長とセシルが戦っている音だけだ」

「他の堕精霊たちは別のところへと言ったのでしょうか……っ!」


 すると、店の壁が崩れて堕精霊が現れた。


「ふっ」


 俺は魔剣を引き抜き敵の攻撃を防いだ。

 この攻撃は俺の横にいるリーリアを狙った攻撃だ。


「奇襲か」


 周囲を見渡してみると、屋根の上に四体。そしてガラス越しだが店の中に六体はいるな。


「お前らはもう逃げられねぇよ」

「逃げるのは簡単だが、あまり好きではない」

「エレイン様!」

「リーリアは自分の身をしっかりと守れ」


 俺は彼女にそう伝えて、俺は堕精霊の相手をした。


『取り囲まれておるな』

『ご主人様、すぐに倒しましょう』

「ああ、当然だ」


 魔剣の引き金を引くと、カリカリと歯車が周りだし高速に刀身が振動する。

 高周波の振動は敵の剣を削る。


「あ?」


 火花が飛び散り、激しい金属音が鳴り響く。

 敵はそれに驚いている。その隙に俺はイレイラを引き抜いて急所へと突き刺す。


「ぶっ!」


 そして突き刺したイレイラを引き抜くと、堕精霊は光とともに消滅していった。

 堕精霊の存在力をアンドレイアやクロノスに吸収させ、敵を完全に抹消した。


「「おおー!」」


 店の中と屋根から同時に堕精霊が俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。


「エレイン様に攻撃を仕掛けるなどメイドである私が許しません」


 そう言って双剣を引き抜いたリーリアは宙を舞い、屋根から飛び出してきた堕精霊の攻撃を弾いた。

 俺は店から飛び出してきた六体以上の敵を魔剣で倒すことにした。


「ふっ!」


 アンドレイアの”加速”で音速に近い速度にまで引き上げられた剣撃は非常に強力なもので、一振りするだけで周囲のガラスが震えだすほどだ。


「がっ! なんて強さだ……」

「怯むな!」

『お前ら、わしを忘れとるのか?』


 そう言ってアンドレイアが声を出すと目の前の堕精霊たちは目を見開いた。


「嘘だ。お前のはずがっ!」

『私もいるのですよ』


 彼女に続いてクロノスもそう声をあげた。


「ばかな、お前らは精霊を守る存在じゃ!」

『堕精霊になったとて守ることはできる。わからんかの?』

「なっ!」


 俺は回転をして、素早く三回斬り込む。すると、目の前の堕精霊は光とともに消滅、その存在力を魔剣が吸収した。


「ここまできたのだ。族長がどうした、上位精霊がどうした。我々は数で押し切るのだ!」

「勢いだけはあるな」


 当然、彼らには剣術という知識を知らない。

 攻撃に洗練さが足りないのだ。 

 だから剣をうまく扱い切れていない。ただ自分の能力だけで押し切っているようなものだ。


『彼らを野放しにしたのは私のせいでもあります。ご主人様、私の力をお使いください』

「ああ」


 そう言って俺は魔剣の引き金を引いた。

 すると、先ほどとは逆に歯車が回転し始め、鍔の部分に埋め込まれている小さな時計の速度が遅くなった。


『時はあなたの味方です』


 クロノスがそういうと周囲の時間が止まったように遅くなった。

 彼女と初めて出会ったときと同じ状況だ。

 しかし、今回は自分も動くことができる。

 俺はそのままイレイラを引き抜き、時間の止まった空間で亜音速の剣撃を繰り出した。


 ジュゾンッ!


 強烈な音が周囲を轟かしている。

 だが敵はまだ斬られたことに気付いていない。光を超えるような速度で斬られているのだからな。


『時の流れを加速させるぞ』


 アンドレイアがそういうと鍔の時計が早くなり普段通りの速さに戻る。

 すると、目の前にいた六体以上の堕精霊が一瞬にして消えた。

 断末魔すら聞こえずに消滅していったのだ。


「はっ!」


 上を見上げると、リーリアが高速に回転しながら敵に斬り込んでいる。


「っ! どうして防がれるのだ!」


 彼女の魔剣の能力は相手の精神状況を知ることだ。

 相手の心が読めれば、どこに攻撃を仕掛けてくるのかわかる。そうすれば、防ぐことなど簡単だ。


「ふざっ!」


 一瞬にして上空の堕精霊は制圧することに成功した。


「エレイン様、ご無事でしたか?」

「ああ」


 華麗に地面に着地したリーリアは美しくスカートを広げ、その中に双剣を収めた。

 俺もイレイラと魔剣を収める。

 耳を澄ましてみると、どうやら団長とセシルも戦闘を終えたようだ。


「戻りましょうか」

「そうだな」


 それから団長のところへと戻る。


「エレイン、ここの敵は全部倒したわ」


 三体と少ないが、強力な能力を持っていたのだろうな。

 あたりの地面は大きく抉られ、看板なども激しく損傷している。


「そのようだな。こっちもあらかた制圧した」

「それならいいんだけど……」

「……」


 団長の分身は声を出さずにこちらを向いているだけであった。


「団長がほとんど倒しちゃってね」

「そういうことか。まぁ少しでも援護になれたのならいいのではないか」

「……」


 もちろん彼は分身である。声を出すことはできない。


「何も喋らないからね。わからないよ」

「別に気にすることはない。セシルほどの実力があれば十分に援護できたはずだ」


 以前、彼女と共闘した時もかなり助かったからな。

 それは団長の分身と共に戦ったとて同じことだろう。きっとあの分身も助かったと思っているはずだ。


「っ!」


 すると、団長の分身がいきなり走り出した。

 どうやら他の部分で攻撃があったようだ。


「おそらくは彼の分身がどこかで戦っているようですね」


 完全分身体とは別の無数の分身で索敵をしているのだろうな。確かにその使い方はかなり強い。

 こう言った敵の場所がわからない場所では効果的だ。


 それから、俺たちは団長の完全分身体と共に商店街を鎮圧して回るのであった。

こんにちは、結坂有です。


商店街の堕精霊鎮圧作戦はうまくいきそうですね。

それにしても団長の能力はかなり強いですね。まだまだ隠された使い道があるのかもしれません。

そして、エレインも魔剣の力を使いこなしてきているようです。これからの活躍が気になりますね。


それでは次回もお楽しみに。



評価やブクマもしてくれると嬉しいです。

感想などもコメントしてくれると励みになります。

Twitterではここで紹介しない情報やアンケート機能を使った企画なども考えていますので、フォローしてくれると助かります。

Twitter→@YuisakaYu

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ