幕間:戦場となった風呂場
アンドレイアとクロノスとの会話の後、俺は風呂に入ることにした。
時間もいつもより遅くにずらしたために皆はもう入ったことだろう。
だが、それは慢心であったようだ。
「エレイン?」
俺が部屋から出ると正面の扉が開き、アレイシアが現れた。
そして、両手には着替えの服を持っている。つまりこれから風呂に向かうところのようだ。
「今から風呂なのだが……」
「あら、奇遇ね。私もちょうど今から行こうとしたのよ」
それは絶対に嘘だろうな。
扉が開くのを待っていたように思える。
警戒はしていなかったために、全く気付かなかった。
「では、また後で入るとしよう」
「……ダメ。一緒に入りたい」
「どうしてだ?」
すると、アレイシアは胸を引き寄せて谷間を見せるように俺を見上げてくる。
薄暗い廊下のため、表情がより引き締まり色気を増している。
「私、ではダメなのかな?」
「いや、ダメというわけでは……」
そんな会話をしていると奥からリーリアがやってきた。
「エレイン様、アレイシア様に邪魔されておられるのですね。でしたら、私も一緒にお風呂へ入りましょう」
「どうしてそうなる?」
そう言ってリーリアは俺の腕を掴んでくる。
そして、俺の着替えすらも取り上げた。
「さ、いきましょう」
「ちょっと、エレインが困ってるでしょ」
アレイシアはそんなことを言っているが、少し嬉しそうな表情をしているのが気がかりであった。
俺と風呂に入るのがそこまで嬉しいのだろうか。
全く彼女たちの気持ちが全くわからないでいた。
それから脱衣所に着くと、リーリアが真っ先に服を脱ぎ出した。
そして、一瞬でタオルを体に巻いて俺の方を向いた。
「エレイン様、手をあげてください」
「いや、自分で脱げるから」
「子供じゃないんだから、リーリアは先に入ってて」
アレイシアがそういうと、彼女は首を振ってそれを否定した。
まさか俺が子供だというのだろうか。
「いいえ、私はメイドです。ご主人様の全てをお世話するのがお仕事なのです」
そう言って彼女は俺の服のボタンを外し始めた。
「待て、それはどういうことだ?」
「そのままの意味ですよ。お着替えからお食事まで、お風呂からベッドまで。もちろん夜のことについてもお世話いたします」
「ちょっと、エレインはそこまで望んでないから」
流石に行き過ぎた世話だとは思うが、食事がなくなるのは困る。
それにその都度、断ればいいだけの話だからな。
世話好きだとは聞いていたが、まさかそこまで付き合ってくれるとは。少し驚いた。
「アレイシア様もユレイナに色々とお世話になったそうですね。ですから、私もエレイン様に世話をするのは当たり前です」
そんな話をしていると、脱衣所の扉が開いた。
「アレイシア様、それにエレイン様。皆でお風呂に入るのに私だけ仲間外れみたいです」
「っ! ユレイナ、これは別にそう意味じゃなくてね?」
まさか、また四人でこの風呂に入るというのか?
ギリギリ入るのだが、それでは風呂ではなくなってしまう。
「この風呂場はもともと四人入れるように作られてはいない。男の俺は抜けるとする」
そのために時間をいつもよりずらした。しかし、それでもこうなってしまったのは俺の慢心だ。
その点で言えば俺に落ち度があったのは否定できない。
「……」
「さ、手をあげてください」
「エレインは子供じゃないのよ」
「アレイシア様は本当に義弟様のことが好きなのですね」
果たしてこれで本当にいいのだろうか。
それから全員服を脱ぎ、全員で泡だらけになって体を洗ってそのまま浴槽に入った。
浴槽に溜まっていたお湯は半分以上が溢れてしまい、その代わりに女性の温かい柔肌が身を包む。
俺はその女性の柔肌だけのお風呂で上せそうになり、まともに疲れを癒すことはできなかったのであった。
当然と言えば当然なのだが、疲れを癒すのが風呂の役目であるのにこうして四人が一緒の浴槽に入るとその本来の役割が失ってしまうような気がする。
今後はもう少し考えてから行動する方が良さそうだ。
もう三度と同じようなことは繰り返さないためにも、これからは警戒を続ける必要があるだろう。
こんにちは、結坂有です。
お風呂場のやりとりですが、いかがだったでしょうか。
シリアスな回の間に挟んでみました。少しでも息抜きできたのなら幸いです。
次の回では議会の知られざるもう一つの計画が明らかになりますので、お楽しみに。
それでは次回もお楽しみに。
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