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予期せぬ戦闘

 週二日ある休日で、そのどちらともゆっくりと休めていない。しかし、施設にいた頃など曜日関係なく毎日が訓練の日々だからな。

 それに全ての訓練が神経をすり減らすような厳しい訓練ばかり。

 まぁその訓練と比べればそこまで辛いことではないような気がする。


「エレイン様、どこか行かれるのですか?」

「ああ、夕食には戻る」

「……私もお供します」


 リーリアに相談すれば、いつもお供すると言ってくる。

 確かに戦力は上がるから来てもらっても構わない。ただ、今回の件については完全に俺一人の問題だ。それに彼女を巻き込むのはどうかと思う。


「今日のは完全に俺一人の問題だからな。公正騎士として動くのはどうかと思う」

「いいえ、私はエレイン様のメイドです。どこまでも付いていきます」

「そうか。すまないな」


 どうやら彼女は俺が何を言おうと付いてくるそうだ。

 確かに主人に仕えるのがメイドの仕事なのだ。


「私は私のやりたいことをするだけですので」


 そう笑顔で応えてくれるリーリアはすぐにメイド服のスカートの中に双剣を装備して準備を始める。


   ◆◆◆


 警備二日目、特に変わったことはなく今日も終わりそうな予感だ。

 ヴェイス隊長に関しては昨日に襲撃してきた人たちを議会に連れて行ってくれているため今はここにはいない。

 まぁ今は私とユウナの二人だけでも問題はない。


「ミリシアさん。眠くはないですか?」

「少しは寝たいところね。さすがに二日もずっと起きていると疲れてくるわ」


 体を動かしているわけではないが、周囲を警戒しているだけでも体力は消費していく。

 それが四〇時間を超えたなら当然だろう。


「そうですよね。奥で少し休みになりますか」

「したいけど、ユウナは寝なくて大丈夫?」


 私と同じぐらい動いている彼女も疲れているはずだ。


「はい。私もミリシアさんと交代で休みたいところです」

「交代ね、わかったわ。少し倉庫の中に入っておくわ」

「わかりました」


 ユウナに背中を押されるように私は倉庫の中に入っていった。

 倉庫の中は少し涼しくなっており、寝るには最適な環境となっている。

 しかし、寝るためのベッドがないため、近くの毛布を包んで床に敷くことにした。




 それから数十分後、外で妙な音が聞こえた。


「ミリシアさん、聞こえていますか?」

「ええ、誰かがここを調べているわね」


 微かに聞こえる足音、だが二人分しか聞こえない。

 昨日の集団よりかは脅威ではないだろうが、ユウナには応援を呼んでもらった方が良いだろう。

 ここまで入念に周囲を調べているとなれば、当然それなりに作戦立てて行動する人に違いない。そういう人に限って強い人なのだ。


「ユウナ、近くの駐屯地区に行って応援をお願いするわ」

「え? でもここが少し手薄になりますけど……」

「いいの、お願いね」

「……はい。すぐに連れてきます」


 そう言ってユウナは勢いよく駆け出した。

 私も鉄仮面を装着してすぐに倉庫から飛び出し、周囲を警戒する。

 それからしばらくすると、目の前に女性が現れた。

 可愛らしい服装に大きく開いたスカート、彼女はエレインのメイドのリーリアだ。


「そこの倉庫に入りたいのですけど、大丈夫でしょうか?」

「……」


 私は剣を引き抜いて警戒態勢に入った。

 彼女とは三度ほどあっているが、かなりの実力者だと思う。それに私は剣を引き抜いているのにも関わらず、彼女は剣を引き抜く素振りも見せない。

 一体何が目的なのだろうか。


「正面からは入れないようですね……」


 そう言ってリーリアが振り向いた瞬間、倉庫から大きな物音が聞こえた。

 物音というか分厚い金属を切り裂いたような耳を貫く音だ。


「っ!」


 リーリアの方を見るが、すでに彼女は姿を消していた。

 やはり陽動作戦だったようだ。

 私はすぐに倉庫の中へと入っていく。

 そして、倉庫の中に入るとそこには機械仕掛けの剣を持ったエレインが立っていた。


「……」

「二人で警備とはな。手薄過ぎる」

「……」


 剣を交えたくないけど、私にはここを守るという任務がある。

 エレインが何を目的でここに来ているのかはわからないけれど、私はやるべきことがあるのだ。

 私はゆっくりと剣を構えてエレインを見据える。


「悪いが、これは渡すことができない」

「……っ!」


 すると、彼は私のすぐ後ろに立っていた。

 しっかりと目で捉えていたのに、どうして。いや、これは彼の意識の隙を狙った移動なのだろうか。

 それにしても距離があったはずなのに一瞬ではないだろうか。

 だが、そんなことを考えている場合ではない。


 私はすぐに振り向いて剣を横方向に振る。それをエレインが細い方の剣で受け止めようとする。

 当然、私の魔剣の能力など知っているわけがない。なら、このまま分散の能力で押し切るしか……


「ふっ」


 エレインが息を吐くのと同時に私の剣がはじき飛ばされた。

 分散をうまく使ったはずなのに、どうしてなのだろうか。

 そして、彼の高速な蹴りが私の腹部に直撃し私は先ほどの剣が保管されていた箱へと飛ばされた。


「っく……」


 すると、倉庫の入り口にリーリアが立っていた。


「目当てのものは手に入れた。後はこれを精霊の泉に持っていくだけだ」

「はい。道は確保しています」


 そう言って二人は駆け出した。

 私は蹴り飛ばされた反動で体を動かすことができない。もちろん、二日も寝ていないのも原因だが、それ以上にあの蹴りが強過ぎた。


 それからしばらく動けないままでいると、外が騒がしくなってきた。


「ミリシアさん!」

「……」

「すぐにその仮面を外しますね」


 そう言って仮面を取り外してくれる。


「ここに来たのはエレインよ」

「そう、だったのですね。それにしてもここに来て何が目的だったのでしょうか」


 そう言ってユウナは考え込む。

 すると、奥から私たちの隊長であるヴェイスもやってきたようだ。


「大丈夫か?」

「少し休めば動けるわ」

「そうか」


 私はそのことよりも任務が失敗したことの方が心配だ。


「任務、達成できなかったけど」

「ああ、その件なのだが……っ!」

「私が話そう」


 そう言って倉庫の扉から入ってきたのはザエラ議長であった。

 つい先日、議長になったばかりの新しい議長だ。そして、精霊統合化計画の発案者でもある。

 議長をみたヴェイスとユウナは議会軍式の敬礼をした。

 私もしなければいけないのだが、それを議長が止めた。


「君はしなくてよい」

「……」


 体にまだ力が入らず、ぐったりと腕を下ろすと議長はゆっくりと口を開いた。


「奪われたことで少し計画が遅れることになるが、別に問題というわけではないからな」


 すると、ヴェイスが質問する。


「ですが、貴重なものだと聞いております。本当に大丈夫なのでしょうか?」

「ああ、それにエレインが相手ならどんなに警備を固めたとて同じ結果だっただろう」

「……」


 確かにエレインは一人だけでも相当な実力者だ。

 今回のような陽動作戦をしなくても単体で大軍を突破することができるほどの実力を持っている。

 さらに持っている聖剣や魔剣の能力を使えば一体どれほどの力があるのかはもはや未知数である。

 そんな彼を正面から受け止めれるわけがないのだ。


「それにしても一瞬で突破されたのだな」


 そう言ってザエラ議長は斬り破られた壁を見てそう呟いた。

 確かに壁一枚とはいえ、それなりに強固で分厚い倉庫の壁だ。それを剣一つで斬り破るなど常人ではできないのではないだろうか。

 これも聖剣か魔剣の能力だとしたら、私たちに勝ち目はあるのだろうか。


「まぁよい。我々はするべきことをするだけだ」

「議長、これはエレインを犯罪者として……」

「それはできない話だ。彼は公正騎士に守られている存在だからな」


 そうは言っているが、議会だって犯罪をいくつも犯している。それに精霊との関係に大きく関わることも実行しようとしているのだ。

 流石にそこまでの横暴はできないということだろう。


「彼は一体何者なのですか……」

「お前たちは知らなくてもよい話だ」


 そう言ってザエラ議長は倉庫を後にした。

 外には何十人もの議会軍の兵士がいたが、ザエラ議長を守るようにしてここを離れていった。

こんにちは、結坂有です。


今回は少しエレインが悪者っぽくなっていますが、彼は精霊族族長であるクロノスのために動いていただけです。

それにしてもザエラ議長は何をしようとしているのでしょうか。気になるところですね。

果たして精霊と人間の関係はどうなってしまうのか……


それでは次回もお楽しみに。



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