倉庫の警備
私、ミリシアはヴェイスとユウナとでとある倉庫の警備に向かっていた。
その倉庫は比較的小さく三人で警備できるような場所であった。
「案外小さい倉庫ですね」
「三人で警備するからな。これぐらいが精一杯だ」
「そうね。中を覗いてみるわ」
「はい!」
倉庫には鍵が掛けられており、私たちは幸いにもここの鍵を受け取っている。
鍵をもらったと言うことは中に入ってもいいと言うことでもある
警備対象の好奇心で調査する私たちに対して任務優先のヴェイスは私たちの代わりに外の警備を続けてくれていた。
鍵を開けて、扉を開けて中に入る。
「覗くだけだからな?」
「わかっているわ」
後ろからヴェイスが話しかけてくる。
場合によっては何か工作することはあるだろうが、何もなければただ調べるだけで終わらせておくつもりだ。
「行きましょう」
「はい」
そうして、倉庫の中に入っていく。
と言っても数歩歩いたところに箱があるだけだった。
「この箱が警備するもののようね」
「案外小さいですね」
しかし、持とうとするとその重さに驚く。
「ミリシアさん?」
「なかなか重たいわね。何が入っているのかしら」
「開けてみましょう」
目をキラキラさせながら、好奇心を示してくる彼女に押されるように私はその箱の蓋を開いてみた。
そこには剣が入っていたのだ。
「これはなんですか?」
「分からないわ」
太い刀身の直剣のようで、鍔の部分には時計のようなものが埋め込まれている不思議な形状の剣であった。
柄の部分をよく見てみると何やら銃の引き金のような指をかける部分があり、機械仕掛けのような剣であることは一目見てすぐにわかった。
「奇妙な剣ですね」
「取り出してみよっか」
「え、危険ではないですか?」
横でユウナが少し怖がっているが、私にはこの魔剣がある。身の危険がある場合はすぐに戦闘態勢を取ることができる。
柄に触れても何も抵抗を感じないことから、おそらくこれは聖剣ではない。いや、精霊が入っていないと言った方が正しいだろうか。
今はただの金属の剣となっているようだ。
「中に書類が入っていますよ」
そう言ってユウナは恐る恐るその書類の中身を確認してみる。
そこには『714』と表記されており、その下には何やら説明文のようなものが書かれていた。
「セルバン帝国が技術を結集させて作った剣だそうですね」
「帝国がこんな機械仕掛けの剣を作っていたの?」
「みたいですね。どうやら魔族侵攻があった後、議会軍が回収したもののようです」
彼女がその書類を読み上げながら、説明してくれている。
「ですが、これ以上の説明は書かれていませんね」
この数字に見覚えがあったのはおそらく帝国にもこの番号が書かれていたからだろう。
それにこの剣は鍵のかかった箱に厳重に入れられていたような気がする。それを議会軍が無理やりこじ開けて回収したのだろう。
「そういえばヴェイスはこれを聖剣と言っていたわよね」
「はい」
「触ってみたところ聖剣のような感じはしない……拒否反応がないの」
「つまりはこれは聖剣ではないのですか?」
「正確には精霊が宿っていない聖剣かな。でもこれほどに精巧に作られた剣はみたことはないわ」
柄の部分の引き金のようなものは鍔の時計に繋がっており、そこからさらに歯車のようなもので刀身の内部へと複雑に続いている。
どう言った能力があるのかはわからないが、それにしても凄まじい技術力であるのは見ればすぐにわかった。
「複雑な仕掛けが所々に施されていますからね」
「こんな剣の中にどんな精霊が宿るのか、知りたいわ」
これほどの仕掛けを駆使して発揮される精霊も気になるところではある。それにどう言った能力なのかも知りたい。
そんなことを話していると、外から爆発音のようなものが聞こえた。
「っ! 何の音でしょうか」
「わからないわ。すぐに戻して行きましょう」
「はい!」
私たちはその剣を箱の中に戻してすぐに倉庫の外へと向かった。
外ではすでに何人かの人間がこちらに向かってきていた。
「ミリシア、ユウナ。戦闘態勢だ!」
「ええ、わかったわ」
そう言って私は魔剣を引き抜いた。横にいるユウナも聖剣ではないものの剣を引き抜いて戦闘態勢を取る。
見たところ、相手は聖剣を持っているようには思えない。
ただ場慣れしているのか、その目は私たちを捉えており倒すと言う強い殺意を感じる。
「ユウナ、戦えるわね?」
「はい」
そう言って、私とユウナは先行してその集団に突撃することにした。
「お前たち!」
「大丈夫よ」
背後でヴェイスが私たちを呼び止めようとするが、それを無視するように突撃する。
相手はそれなりの手練れではあるだろう。しかし、私にはこの魔剣がある。
それにユウナもかなりの実力者であるのは確かだ。
敵は大剣やサーベルなど様々な武器を駆使して集団で囲んでくるが、私たちはそれを一人一人確実に倒していく。
私の魔剣は分散という能力を持っており、どのような武器であってもある程度防ぐことができる。
そして、様々な武器にも変化することができるのだ。
「ユウナ、そっちは任せたわ」
「はい。任せてください!」
サーベルなどの小さな武器に対してはユウナに任せることにして、私は大剣の男を相手にすることにした。
男は大剣を大きく振り上げて私の突撃に合わせて振り下ろしてくる。
しかし、私はそれを分散の能力を使って防いだ。
「ぬっ!」
こんな小さく細い剣に防がれたとなれば、驚くのも無理はない。
「ふっ」
私は攻撃を受け切った後、体を回転させて連続的な攻撃をその男に浴びせる。
ガチャンッ、ガチャン!
私の細い剣からは想像できない鋭く大きな音を立てている。男は私の攻撃をその大きな剣で防いではいるものの、全てを防ぐことはできなかったようですぐに自慢の大剣を落としてしまう。
「ユウナ、そっちは大丈夫?」
「はい! なんとか……」
三人ほどと戦っていたようだが、どうやらうまく立ち回れたようで無力化することに成功していた。
「ヴェイス隊長、この人たちはどうする?」
「……拘束したのち、議会に送りつける」
「わかったわ」
彼は驚いた表情でそう私たちに命令した。
それもそうだろう。七人ほどの襲撃をものの数分で片付けることに成功していたのだから。
最初はあまり期待していなかったようだが少しは実力を知ってもらえただろうか。
「それにしてもお前たちはすごいな」
「そうかしら」
「ああ、あれほど美しい剣技は見たことがない」
どうやら私のあの素早い剣技に驚いていたようだ。
大剣相手に攻撃の手を緩めることができなかったから連続した攻撃を行ったのだが、それがどうやら彼にとっては素晴らしいもののように見えたのだろう。
「そして、ユウナの立ち回りも素晴らしい」
「そこまでのものではありませんよ……」
ユウナは両手を振って、ヴェイスの発言を全力で否定する。
確かに彼女の剣は洗練さに欠けている部分がある。しかし、対人戦を多く経験していることから戦闘をうまく立ち回り、確実に相手を倒すことができていたのは評価できる。
当然、ヴェイスも立ち方からして相当な実力者なのだろうが、私たちは何年も厳しい訓練を積んできたのだ。
実力という面だけでいえば、私やユウナの方が圧倒的に強いだろう。
こうして、倉庫の襲撃を一瞬にして片付けたのであった。
こんにちは、結坂有です。
倉庫の警備に当たっていたミリシアたちですが、すぐに襲撃があったようです。
それを一瞬にして解決した彼女たちはこれからも活躍していきます。
そして、倉庫の中に眠っていた剣は一体なんなのでしょうか。気になるところですね。
それでは次回もお楽しみに。
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