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崩壊していく関係性

 俺は倒れていたユレイナを抱えて、アンドレイアの加速で近くの病院へと走っていった。

 その病院らしき場所は非常に綺麗でよく整備されているところであった。まぁ病院と言うぐらいだからな。当然整備されていないと困るのだが。


「!!」


 俺がその病院の中へと走って入ると、看護師や医師の人たちが驚いていた。


「ここで治療はできるか?」

「……え、ええ。こちらに」


 そう言って医師の人が慌てながらも案内をしてくれている。

 すると看護師の方が移動可能なベッドを持ってきてくれた。そこにユレイナを乗せて治療できる場所に運んでいく。


「容体はわかりますか?」

「深くはない傷だが、聖剣の能力か何かで出血が激しい」

「失血症状……聖騎士団の人ですよね。すぐに輸血の準備をしましょう」


 医師はそう判断し、看護師に伝えた。

 この国に来てすぐにアレイシアが言っていたが、聖騎士団に所属していた人は全て血液を保存しているようだ。

 魔族とも戦闘などで激しく怪我をした時などに利用されるようだ。


「ここからは聖剣の能力で治療します。離れてください」

「ああ」


 すると、医師の人が小さなメスのようなものを取り出してユレイナの傷口を切り裂いていく。

 だがその切り裂いたところからすぐに傷口が塞がっていく。


「先生、輸血の準備ができました」


 そう言って運ばれてきた輸血袋には『ユレイナ・アンデレード』と書かれており、彼女自身の血液が入っているとすぐにわかる。

 すると、その輸血袋をベッドの上部に取り付けて、太めの針を彼女の腕に慎重に差し込んでいく。

 輸血をする場合は静脈を使うようで、その血管を見極めているのだろう。


「もう治療は終わったのか?」

「傷口は完全に塞がって綺麗に修復されていますが、体内の損傷までは完全に修復できていません。しばらくは安静にしておく必要がありますね」

「そうか」


 そうして速やかに治療を終えたユレイナは緊急治療室から一般病室に移された。

 それと同時にアレイシアとリーリアがゆっくりとこちらに歩いてきた。


「ユレイナの状態は?」

「ああ、すぐに治療された。傷跡も残っていなかった」

「よかった。ここは凄腕の医師しかいないから安心はしていたのだけどね」


 病院内を見てみると確かに高度医療という文字が点在していたからな。あのメスのような器具も聖剣の一種なのだろう。


「それにしても、エレインのあの走る速度は何?」

「ん? 魔剣の能力を使っただけだ」

「……その魔剣の能力って速度に関係するのかしら」

「アレイシア様、ここではあまり……」


 リーリアの言葉に彼女ははっとして口を塞いだ。


「別にバレたところで俺自身の実力ではないから大丈夫だ」

「エレイン様、少し警戒心が薄れていませんか?」

「まぁ薄れてきてはいるだろうが、問題はない」


 俺がそういうとリーリアは少し心配そうな表情をした。

 すると、アレイシアがパンと手を叩いて注意を引きつけた。


「ユレイナもしっかりと治療されたことだし、家に戻ろ?」

「そうだな」「ええ」


 そう返事をして病院を後にした。


   ◆◆◆


 リーリアから久しぶりに俺、ブラドに通信があった。

 どうやら聖騎士団と議会の対立に関係のない脅威として連絡があったのだ。

 アレイシアのところにも堕精霊の攻撃があったとのことだった。

 俺が向かう途中に彼女たちを見かけたのだが、声をかけることはせず俺はそのまま現場へと向かった。

 現場にはすでに清掃に取り掛かっている議会軍の兵士たちがいた。

 その兵士たちは俺を見かけるなりすぐに頭を下げて挨拶をしてくる。


「あ、お疲れ様です!」

「楽にしてもらっていい。無力化された聖剣はどこだ?」

「はい……こちらになります」


 そう言って手渡してきた聖剣はやはりカランビットナイフであった。

 切り口から大量に出血させることで相手の体力を奪っていく強力な聖剣だった。堕精霊となった今、聖騎士団を暗殺して回っているという噂だったのだが、本当だったようだ。


「ご苦労」

「その聖剣はどうなさるのですか?」

「破壊し、堕精霊に関しては精霊族に任せるとする」


 精霊族に存在を消してもらうということだ。

 ここまで暴れていたのだからな。それ相応の罰を受けてもらう必要があるだろう。


「それにしても精霊が堕ちるって不思議ですよね」

「そうか?」

「はい。精霊族ってしっかりしている印象なので」

「知らないだろうが、毎月精霊族から違反者が出ているからな」


 俺がそういうと目の前の議会軍の兵士は驚いていた。

 まぁ俺も族長から聞かされるまでは知らなかった。驚くのも無理はないか。

 と言ってもその堕精霊がどうなっているのかは報告されていない。

 精霊族のことだから俺たちがそこまで関与するものではないのかもしれないが、俺たち人類側にも被害が出てきていることだ。族長のクロノスにも話をする必要があるだろう。


「え? そうなんですか」

「まぁ知ったところで俺たちには何もできないがな。とりあえず、現場の清掃は任せた」

「あ、はい! 任せてください!」


 俺はそう言ってこの場所を離れることにした。




 最近は堕精霊による攻撃が顕著になってきた。

 議会軍の襲撃だってそうだ。それにアレイシアの暗殺も行おうとしていたからな。

 明らかにエルラトラムの中枢を破壊しようとしているのだろう。

 俺たちも議会には色々と不満点はあるのだが、完全に破壊しようとは思っていない。そうすればこの国を保つことなどできないからな。


 ただ、これらがどこか意図的なものだとも思っている。

 議会には何を考えているのか分からない議員も多くいることだ。そいつが関与していないという証拠もないのだがな。

 議会に対してもう少し本格的な調査を始める必要があるのかもしれない。

 いざとなれば、俺たちは議会軍を壊滅させることもできるのだ。脅迫でもすれば口を開く奴も一人や二人はいるだろう。

こんにちは、結坂有です。


新章の始まりですが、これからは様々な思惑が複雑に錯綜していきます。

議会、聖騎士団、そして学院にフラドレッド家。それぞれがどのように関係してどのように変化していくのか、気になるところですね。

それでは、次回もお楽しみに。



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