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交わる剣闘

 翌日、全身の痛みに目を覚ました。


「うぅ……」

 寝違えてしまったのか、関節の痛みがひどい。

 それは他の三人も同じなようで、痛いところをさすったりしている。


「アレイシア、大丈夫か?」

「ええ、あとでユレイナにマッサージしてもらうわ」

「そうか、わかった」


 そう言ってゆっくりと立ち上がってアレイシアはそのまま杖を突いて、ユレイナの元へと向かった。

 すると、リーリアが立ち上がり大きく伸びをした。


「んっ……おはようございます。エレイン様」

「おはよう。痛みはないのか?」

「これはエレイン様からいただいた痛みですので、大丈夫です」


 意味のわからない理由ではあるのだが、どうやら大丈夫なようだ。


「メイドなのに、なんでそんなに密接に絡まってるのよ」


 むすっとした表情で伸びをしたセシルはリーリアの目を睨みつけていた。


「エレイン様とは家族も同然ですので」


 そう言って小さく頭を下げたリーリアは何か勝ち誇ったような表情をしていた。

 確かにメイドといえど、彼女とは家族のような関係となっている。


「私もそれと同じぐらいには、関係を築けていると思っているわ」

「いや、パートナーはそれぐらい親密にならなければいけないのか?」

「当たり前でしょ? 息の合った連携を取るにはそう言った関係に……」


 そこまで言うとセシルは頬を赤くして顔を背けた。

 何も恥ずかしいことは言っていないように思えるのだが、彼女にとっては少し恥ずかしかったようだ。


「セシルは恥ずかしがり屋なだけです。エレイン様、朝食にいたしましょう」


 そう言って俺を起こすとセシルが、俺の胸を手で押さえてそれを止める。


「私も一緒に行くから」


 それから二人同時にベッドから起き上がり、顔を洗ってからリビングに向かった。

 そこでは朝食の準備を始めているユレイナの姿があった。


「エレイン様、おはようございます」

「アレイシアは大丈夫か」

「ええ、寝違えた箇所を温めております」


 それなら少しは痛みが引いていくだろうな。


「私も準備をいたします」


 すると、横に立っていたリーリアがユレイナの元へと向かった。

 朝食はパンにバターを塗ったものにさっぱりとしたドレッシングのかかったサラダに卵焼きであった。

 いつもシンプルな朝食だが、毎日少しだけ味付けを変えており飽きないように工夫されている。

 こうした生活の知識みたいなものはユレイナやリーリアがよく知っているようだ。

 それらのことは後々、彼女たちから教えてもらうことにして今は学院のことだけに集中しよう。

 上位帯から落ちるのだけは避けたいことだしたな。


 朝食を食べた後、服を着替えて学院に登校することにした。

 今日はいつもと違い、セシルがいて三人での登校は二回目である。


「前にも感じたことだけど、こうして一緒に登校しているとどこか新鮮よね」

「ああ、いつもは寮から一人で来ているのだろう?」

「そうそう、だから家を出る時から一緒っていうのがいつもと違うところかな」


 セシルは寮で暮らしている。

 当然、寮から商店街を抜けて学院に向かうのだが、今回は違う場所からの登校なのだ。


「確かに今までは商店街のこの辺で合流していたからな」


 ちょうど、商店街の入り口に差し掛かったところで俺はそう言った。

 いつもならこの辺りで、「奇遇ね」などと言ったやりとりをしている。


「なんか、こうして一緒に歩いていると友人から一つ上に発展したって感じだわ」

「つまり、恋人ということか?」

「っ!」


 すると、セシルは顔を真っ赤にして俺を見つめている。


「エレイン様、恋人とは少し違う気がします」

「そうだったか。すまないな」


 俺がそう謝るとセシルとリーリアは同時にムッとした表情をした。

 やはり、二人の感情はわからないものだな。


 商店街を抜け学院に入ると昨日の同じようにフレッグとディゲルが言い争っていた。

 内容としてはお互いの剣術の齟齬についてだ。

 二人とも確かに似たような型で構えていたのだが、それでもお互い気に食わないところがあるのだろうな。


「確か、今日は模擬戦の授業があったよな」

「そうね。パートナー同士で軽く手合わせする授業だったわ」

「なるほど、そこで少しは進展するといいのだがな」

「どういうこと?」


 二人の剣術は見ているだけではわからない。

 戦い合えば少しは考え方などが見えてくるはずだ。

 そうでなくとも、剣を交えることで今まで知らなかったこともわかるのかもしれないからな。

 彼らに必要なのは対立ではなく、互いの知識の共有だ。


「今回の授業で何かが変わるってことだ」

「……よくわからないけれど、彼らが仲良くなってくれるのならそれに越したことはないわ」


 セシルも彼らには仲良くしてもらいたいそうだ。

 俺とは別の意味でなのかもしれないがな。




 それから授業が始まり、互いのパートナー同士で模擬戦を始めることとなった。

 この授業の目的はパートナーの実力を知るという意味での授業だ。

 しかし、俺はそれ以外の目的で期待している部分がある。

 それはフレッグとディゲルには効果的だと思っている。


「それにしてもまさか、俺たちがはじめに模擬戦を行うとはな」

「……確かに剣術競技で注目の的だったからね」


 セシルも俺と同じことを思っていたようで、少しだけ肩を落としていた。


「それでは、二人とも好きなタイミングで初めてくれ」


 俺たちのクラスを担任してくれているルカがそう言った。

 先日は別の教師が練習に付き合ってくれていたが、今回は担任教師が担当するようだ。


「仕方ないわね。いきましょう」


 そう言ってセシルは聖剣を二本引き抜いて立ち位置についた。

 俺もそれに付いていくように立ち位置についた。


「では、本気で行くわ」

「いつでもいい」


 俺がそういうとセシルは一気に駆け出した。

 大きい方のベルベモルトが俺の頭上に振り上げられ、細い剣であるグランデバリスが俺の左腹部を捉えている。


「せいっ!」


 しかし、それらの攻撃は一瞬にして打ち砕かれる。

 俺は体を右方向へと回転させることで、二つの攻撃を避けた。

 そして、イレイラの高速な剣撃によってそれらを弾くことにした。


「ふっ!」


 最後に頭上にあるベルベモルトに剣を当てた瞬間、セシルの剣撃が反転して俺の背後へと回る。


「これでっ!」

「悪いな」


 背後に回った瞬間、彼女の右腹部に俺のイレイラが当たっていた。

 このまま突きを入れればそれなりに怪我を負わせることができる。


「背後に回ったのにどうして?」

「相手の動きを予想できればそこに剣を置くこともできる」


 俺は彼女がベルベモルトの能力を利用して、背後に反撃に出ることを予想していた。

 だから、その攻撃してくるであろう場所に剣を置いていただけだ。


「やっぱり、素早さなのかしら」

「それもあるが、動きが単調なのも原因だろうな」

「そう、今回も私の負けね」


 そう言ってセシルは剣を直した。


「勝負あったようだな。良いパートナーを見つけたんだな」


 勝負を終えたセシルに担任教師のルカが言葉を送った。


「ええ、隠れた天才はいるものね」

「エレイン、君には隠れた潜在能力があると思っている。今後とも精進を続けてくれ」


 なるほど、剣術競技の際に受け取ったあの表の備考は彼女が書いたもののようだな。

 にしても俺を高く評価し過ぎな気がするが、まぁその辺は別に気にするだけ無駄だろう。

こんにちは、結坂有です。


セシルは今後どのように成長するのでしょうか。

それにフレッグとディゲルはお互いに分かり合えるのか、気になるところですね。


それでは次回もお楽しみに。



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