素晴らしい剣術とは
誤字脱字などをご指摘していただき、ありがとうございました!
今後ともよろしくお願いします。
セシルとの訓練の後は帰宅したのだが、セシルも家にきた。
どうやら裸の付き合いというものでお互いを信頼し合いたいようだ。
帰路の時はリーリアはジト目で俺を見つめて、腰後方に携えているアンドレイアは終始震えていた。
理由は明らかだ。しかし、それについて強く言及することはしない。
彼女たちの逆鱗に触れることになるのだからな。
「ただいま」
「お帰りなさいませ、エレイン様。セシル様も来てくださったのですね」
ユレイナはアレイシアやリーリアのようにあからさまな嫌味を向けるわけでもなく中立の立場としてセシルに接してくれているようだ。
まぁその方がセシルにとっても居場所が確保されていると言ったところだろう。
「っ!」
すると、奥からアレイシアが杖を突いてこちらを睨みつけていた。
「今日も来たのね」
「ええ、エレインのパートナーとして、定期的に挨拶をしないといけないからね」
火花が見えるかのように睨み合っている彼女には付け入る隙がないように思えた。
しかし、それを打ち消したのはユレイナであった。
「さて、夕食にしましょう。食材も多くありますし、セシル様もお食べになってください」
「いただくわ。ありがとう」
そう笑顔でセシルはユレイナの提案に返事をしたが、リーリアとアレイシアは嫌そうな顔をしてその様子を見ていた。
この状況下で堂々と家に上がり込む彼女の精神力はかなり強いと伺える。
俺には到底できそうにない芸当だ。
それから夕食をいただくことにした。
スープを主体とした料理は体を芯から温めてくれる。そのおかげか疲れで固まってしまった体がほぐされるような感覚がする。
日々のストレッチで疲れを癒しているつもりなのだが、こうした料理でも疲れは十分に取れるものなのだな。
そして、サラダも健康に配慮してほうれん草などの野菜をふんだんに使った栄養の良いものばかりだ。
さらに生ハムなども添えてあり、体を構成するためのタンパク質やビタミンなども得ることができる。
こうした栄養のことを考えて作られた料理を振る舞ってくれるのは嬉しい限りだ。
帝国にいた頃は確かに栄養のことを考えられていたが、色々と制限されていたからな。
それにこうして食べやすいように味付けされたおいしいものでもなかった。
流石に訓練施設と比べたらいけないだろうが、ユレイナとリーリアの作ってくれる料理は非常においしいものであった。
「いつもおいしい料理をありがとう」
「いいえ、メイドとして普通のことです」
「ユレイナは料理が好きだからね。リーリアも好きでしょ?」
「アンデレード家で栄養素を身につけるための料理なども叩き込まれたものですから」
「私も栄養を付ける料理を教え込まれていましたよ」
どうやら剣術を学ぶ上でそう言った料理のことも教えるとはな。
やはり、こうして一般市民の中で進化していくものは生活味があって興味深いものだ。
「そうなのか。なかなか面白いものを学ぶものなのだな」
「そうですね。私の場合は七歳ごろから自分の料理は自分で作れるように教え込まれています」
「私は十歳ごろでした」
そう後からリーリアがそう言った。
それから考えると十年以上は彼女たちは料理を続けているようだ。
ならここまで美味しく作れるのは当然と言えるな。
「なるほど、なかなか面白いな」
「はい、体を作るのは剣術ではなく食事です。ですから、食事も良いものを作れるようにと言う教えです」
確かに訓練だけでは体は作られない。
栄養の良い食事をしっかりと取り、正しく訓練をすれば強靭な肉体を作れるものだ。
「そうよね。私も父上からよく食事はバランスよく食べろとよく言われていました」
「ええ、食事は日々の鍛錬と同じく重要なものですからね」
そんなところまでしっかりと教え込まれているとは、本当に素晴らしいものなのだろうな。
俺の施設はただ強くなることだけを目的としていた。
剣術だけを学ぶには最高の施設だと思うが、人間的な生活とは少しかけ離れていたな。
楽しい夕食を終え、俺とセシルは脱衣所にいた。
「二回目だけど、緊張するわね」
「やめておくか?」
「いいえ、脱ぐわ」
そう言って豪快に上着を脱いだセシルは豊満な胸を揺らした。
すると、彼女は顔を真っ赤に染めて俺の方を見た。
「……勢い余って下着も取れてしまったわ」
「そうみたいだな」
どうやら下着までも脱ぐつもりはなかったようだ。
耳元まで真っ赤になった彼女はそのままタオルを体に巻いて下半身の方も脱ぎ始める。
俺もそれに合わせるように服を脱いだ。
そして、二人とも服を脱いだ瞬間、脱衣所の扉が開いた。
「エレイン様、私もお風呂に入ります」
「ちょっと、リーリアがどうしてここに来るのよ」
「私はメイドですから、すぐに脱ぎますので」
そう言って素早くメイド服のベルトを外して裸になる彼女はもはや羞恥心などないように思えた。
いや、内心はかなりドキドキしているようだ。
彼女の心拍はかなり激しく脈打っているのが、俺の耳に聞こえてくる。
「無理はしなくていいのだが……」
「セシルと二人きりでは何をするのかわかったものではないですからね」
「メイドが普通そんなことしないでしょ?」
「いいえ、エレイン様の体の管理をもするのがメイドの務めです」
セシルがまだ顔を赤くしたままリーリアに対してそう反論するが、どうやらリーリアの持論は覆せなかったようだ。
そもそも前提が違うのだから無理だろうな。
リーリアは平然とした顔で言っているものだから、当然セシルもそれ以上反論するつもりはなかった。
それから三人でお風呂に入ったのだが、気まずい空間となってしまった。
一見すると二人とも美少女なのだが、お互いに警戒しあっているのかそんな魅力的な雰囲気にはならなかった。
お風呂から出て髪を乾かしたセシルは俺と一緒に自室へと入ってきた。
「はぁ、あなたのメイドのリーリア。色々と心配し過ぎね」
「それだけじゃない気がするがな。それで今日はここで寝るのか?」
すると、魔剣のアンドレイアが少しだけ震えた。
「そうね。二人っきりで寝れば少しは変わるのかもしれないからね」
「確かにそれはあるかもしれないな」
それにしてもこの部屋にあるベッドはシングルベッドだ。
お互いに体を密着させないと眠れない。
「……私が奥に行くわ」
「わかった」
そう言ってセシルは壁側へと体を寄せて寝転がった。
「ほら、エレインも来なさいよ」
彼女はベッドを軽く叩いて俺を呼ぶ。
そして、俺はイレイラとアンドレイアを立てかけてベッドへと潜り込んだその瞬間、扉がノックされた。
「エレイン様」
ノックをしてきたのはリーリアであった。
いや、もう一人いるな。
嫌な予感を感じつつも扉を開けると、そこにはリーリアとアレイシアがいた。
「セシルだけいい思いをさせるのは嫌よ」
そう言ってアレイシアは俺の部屋へと入ってきた。
「四人も寝れない」
「ギリギリ眠れるわ」
よくよく見れば三人とも華奢な体をしている。
かなり密着すれば入れる、のかもしれない。
「さ、寝ましょう」
そう言ってアレイシアとリーリアは俺をベッドに押し倒し、そのまま体を絡ませながら寝転がった。
全身に女性の温かい柔肌を感じる。
これでは熟睡することは難しいかもしれないが、頑張るとしようか。
「ちょっとセシル、どこ触ってるのよ」
「押し込まれてるのよ。少しぐらいいでしょ?」
「ヒャ! 何この手……ゴツゴツしててちょっと気持ちいいかも」
「エ、エレイン様の足が……んっ当たってます」
「……あっダメ」
やはり、シングルベッドに四人が眠ることは無理なのだろうな。
こんにちは、結坂有です。
予告で戦闘が多くなると言っていました。エレイン争奪戦、いかがだったでしょうか。
さておき、次こそ剣を交える戦いとなります。
それでは次回もお楽しみに。
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