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深まる関係性

 翌日、俺は普通にリーリアと共に学院へと向かった。

 そして当然のようにセシルが商店街で待っていた。

 そんないつもの日常の中に一つだけ違和感が残っていた。それは彼らの存在であった。


「あれから一緒に訓練もしただろ。やはりお前には向いていない」

「あ? そういうお前こそ手数が少ねぇだろ!」


 メガネをつけているフレッグに大柄な体格のディゲルだ。

 彼らは昨日の訓練で言い争っていた二人だ。

 剣術競技ではそこまで目立った戦い方をしていなかったのだが、確かに実力のあるものなのだろう。

 現に入学時の評価はかなりの上位だったからな。


「またあの二人ね。ほんとに相性悪いわ」


 セシルが横でそう呟いた。確かに相性は悪そうだ。

 何かとあれば二人は因縁をつけているように思える。

 だが、お互いにはっきりと言い合える仲だとも言えるが、果たして今後関係は良好になるのだろうか。


 そして、彼らを監視するように見ている人もまたいた。

 セシルは気付いていないだろうが、明らかに彼らを尾行している人が俺たちの斜め後方にいる。

 その人たちはグレスとエリルという人で、彼らと同じく入学時には上位にいた人たちだ。

 彼女たちがフレッグらを監視するように見つめているのに若干の違和感を覚えながらも俺たちは学院に向かうことにした。




 学院に入るといつものように痛い視線が生徒たちから浴びせられる。

 とは言っても以前よりかはマシにはなってきているような気がする。いや、これは慣れなのだろうか。

 どちらにしても耐えられるようにはなってきているということだ。


 そんな中、相性の悪い二人が俺たちより少し遅れて教室に入ってきた。

 すると、俺たちに向けられた視線が一気に逸れた。それから生徒たちはそれぞれの話題を話し始めた。

 この様子を見ると昨日のあの一件で皆に怖がられてしまっているのだろうな。

 確かに印象が怒りっぽいというだけでマイナスなイメージが植えつけられるのは普通のことだ。


「あの人たちに比べたら私たちはまだそこまで悪い目で見られていないということよね」


 セシルの言う通りなのかもしれない。

 まだ視線が向けられると言うことはそれなりに興味があると言うことだ。

 興味がなくなり最悪な印象で見られるよりかはまだ良いのだろう。


「そうかもな。だが、俺たちもそれなりに気をつけないと周囲からの印象は下がってしまうからな」

「ええ、でも実力がある私たちなら強さでそれを証明することができるわ」


 あのメガネと大柄の男の人とは違うのだと言うように彼女は真っ直ぐな目でそう答えた。


「リーリアはクレベスト流の四大派生剣術についてはどれぐらい知っているんだ?」

「学院生時代によく調べていましたからよく知っていますよ」


 どうやらリーリアはあの派生剣術についてはよく知っていると言うことだろう。


「やはり昔から険悪な仲なのか?」

「そうですね。もともとクレベスト流剣術の弟子だった人が独自の解釈のもと、奥義を組み上げていったものですからね。思想の違いと言った方がいいのでしょうか」


 奥義と呼ばれるものは正統後継者でしか教えてはいけないと言う教えのもと、弟子にはほとんど教えてもらっていないのだろうな。

 それでその弟子が見様見真似で独自の解釈で奥義を確立させていったとらしい。

 確かに思想の違いで対立するのも頷ける。


「なるほど、そう言った経緯があったんだな」

「ですが、私の知識も四年前のことですから」


 なんでも知っているリーリアなのだが、俺と四歳しか変わらないようだ。


「逆に言えばまだ信頼できると言うことだ」


 比較的に新しい情報であればそれは信頼することができる。


「そうですか。お役に立てたのなら嬉しいです」


 そう言って彼女は小さく頭を下げた。

 頭を下げたいのは俺の方なのだが、まぁ彼女も情報が役に立てて嬉しいようだからな。


「やっぱりエレインとメイドの関係は怪しいわね」

「どう言うことだ?」

「なんでもない。授業始まるから、私は席に着くわ」


 そう言ってセシルは自分の席に向かった。


「では、私も後ろで待っています」


 リーリアも教室の後ろの方にある椅子に向かった。

 俺も自分の席に座ろうとリンネの後ろを通ると、リンネが振り向いてきた。


「今日も仲良いのね」

「一日二日で喧嘩するようなものではないだろう」


 俺はそう言いながら席に座った。


「そうだけどさ。セシルだよ? あの気の強い」

「気は強いだろうが、別に性格が悪いわけでもないからな」

「……そうだけどさ」


 リンネは頬を膨らませてそう返事をした。


「それに彼女もかなりの実力者だ。その立場というものを考えればあのような態度になるのも普通だろう」


 セシルは周りからは孤高の存在と言われ続けてきたのだ。

 それなら孤高な存在として演じ続けなければいけない。本当はそんな存在になりたくなくてもそうしなければいけなかったのだ。

 彼女は副団長の娘という立場を考えるとあの言動も普通だろう。

 そのような重圧の中で日々を過ごすというのはきっと辛いもののはずだからな。


「確かに、彼女の立場は複雑だろうね」


 そう言ってリンネも彼女の立場のことを少し考えた。


「まぁセシルも自分の中でそれなりの答えは見つけているようだからな」

「そう、応援するんだ」

「当たり前だ」

「ふーん」


 そう言ってリンネは俺から視線を逸らした。

 彼女も何を考えているのかわからないものだな。




 それから放課後、今日もセシルとの訓練だ。

 訓練は彼女独自で編み出している剣術の確立だ。

 基となっているのは副団長であった父親の剣術だが、その全てを教えてもらっていないセシルにとってはあらゆる剣術や流派などから様々な技を取り入れている。

 今も進化している彼女の剣術はまだ未完ながらもかなり強力なものなのには違いない。

 そして、俺の知っているセルバン帝国の剣術も取り入れれば彼女はもっと強くなれると思う。


「それにしてもエレインってどれだけ強いのよ」

「どれだけって、どれほどだろうな」

「……この前本気を隠すことが自分の剣術だと言っていたわよね」

「ああ」


 昨日の訓練授業でそんなことを話したな。


「今まで魔族と戦ったり、一対一で剣を交えたりしたけどまだ本気とは程遠いのでしょう?」

「実力の半分も出していない」

「逆に自分が呆れるわ」


 すると、セシルはガクッと肩を落とした。

 それほど落胆するようなことではないと思うのだが、どうやら俺を本気にさせたいと思っていたらしく自分の実力の無さに落ち込んでいるようだ。


「まぁ俺を本気にさせたのは今まで一人しかいないからな」

「その一人って誰よ」

「誰だろうな」


 俺は言葉では誑かしたが、本当のところあれが本気だったのかはわからない。

 魔族侵攻の時、最後のリーダーを倒した時の一撃。

 あれが今まで実戦で行ってきた攻撃の中で一番強力な一撃だったな。


「まぁあなたを本気にさせるってことは人間ではないわね。魔族でしょ」

「どうだろうな。次、訓練始めよう」

「あ、またそうやって話を逸らす!」

「悪いか?」


 それから俺たちは楽しくも厳しめの訓練を始めるのであった。

こんにちは、結坂有です。


もうお気づきの方がおられるかもしれませんが、文の構成を変更しています。

読みやすさを追求していきたいと思っていますので、これからもよろしくお願いします!


学院での生徒たちも色々と関係が複雑そうですね。

果たしてこれから学院生たちとどう展開されて行くのでしょうか。気になりますね。


それでは次回もお楽しみに。



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