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精霊との契約

昨日、二本投稿したので一時間遅れての投稿です。

 午後の授業は口喧嘩が起こって緊張状態がしばらく続いてしまっていたが、今は落ち着きを取り戻している。

 放課後となった今は下校する人と訓練場へ向かう人とで分かれている。

 当然、俺とセシルは約束通り連携を意識した練習を行うために練習場に向かっていた。


「連携を意識した練習と言ったけれど、どうすればいいのかしら」

「俺も連携に関しては特に練習する必要はないと思っているのだがな」

「……そうなの?」


 これはリンネにも言ったことなのだが、連携は意識すればするほど取れなくなるものだ。

 お互いに意識してしまっては遠慮しがちになってしまい、最終的には萎縮してしまって何もできなくなる。

 だからこそ、お互いがお互いを知り信頼することができれば自然と連携できるものだと彼女には言った。


「ああ、信頼し合うことができればすぐに連携などできるものだ」

「お互いを信頼、ね」


 彼女はそういうと腕を組んで深く考え込んだ。

 しばらくその様子を見ていると、彼女はゆっくりと目を開いた。


「そういえば、お風呂入ったわよね」

「ああ、そうだな。だが、それとこれとはまた別な気がするけどな」

「いいえ、やっぱり関係あるわ。もっと一緒に入りましょう」


 そんなことを話していると横から見ていたリーリアが飛び出してきた。

 その表情はどこか危機感を伴っており、必死なように思えた。


「セシル、それはいくらなんでもおかしいと思いますが……」

「リーリアとエレインはすでにお風呂に入っているのよね? それも何回も」

「それはメイドとして当然のことです」

「当然かどうかは置いておいて、やはりその点よ」


 セシルは何やら一人で納得してしまっているようだ。

 まぁお風呂で長いこと裸の付き合いで信頼が得られるわけではないのだがな。

 とは言っても効果がないとも言い切れない。

 実際にそのような付き合いで人間の祖先は集落同士の交流を行なっていたと言われているからな。


「試してみるのはありなのかもしれないが……」

「なら、試してみましょう」


 俺の言葉を遮るようにセシルはそう言った。


「エレイン様、拒否しないのですか?」

「……俺が拒否したところで色々と口実つけてくるだろう」

「悪いけど、メイドはメイドなのよ」


 そう言って何か勝ち誇ったかのように胸を張ったセシルだが、彼女の心情がよくわからないな。

 まぁとりあえず、またお風呂問題が生じることだろう。


 そして、そのあとは特に特別な訓練などすることもなく練習場を後にした俺たちはそのまま学院の近くの精霊の泉に向かうことにした。




 先日、精霊と契約を結ぶことで特別な力を得ることができると言った。

 それから学院に近いここに行くことを決めていたのだが、やはり直前となってセシルは緊張してきたようだ。

 それもそのはずで、人間が精霊に会うなどほとんどない上に失敗すれば今後の聖剣との関係にヒビが入るかもしれないからな。


「エレイン、本当に行けるのかしら」

「自分の力だけを信じろ」


 俺がそういうと小さく彼女は頷いた。

 まだ不安は残っているようだが、この調子なら成功するかもしれないな。

 なぜなら少し弱気になっている時ほど、その人の本性が出るからだ。

 精霊とは人間の本性を見て判断するところがある。そう言った面ではセシルの今の心境は適しているのかもしれないな。


「じゃ、行ってみる」

「俺とリーリアはここにいる」

「セシル、あまり応援はしたくないのですけど、頑張ってください」

「ありがと、二人とも」


 そう言って覚悟を決めたセシルは精霊の泉へと向かっていった。


   ◆◆◆


 私はエレインと離れて精霊の泉へと向かった。

 昨日のうちに準備を済ませているため、精霊には会えるはずだ。

 正直、まだ不安は残っている。しかし、ここで足を止めてはいけない。

 エレインの力に少しでもなれるように私は力を磨く必要があるからだ。

 今のままでも十分に強いと言われているが、それでも私はまだ高みを目指したい。

 彼という最高の存在を目にした私にはまだまだ彼に劣る部分が多くある。

 剣速以外で彼に勝てと言われると不可能なのは見るよりも明らかだ。


『お互いを信頼しろ』


 そんな時、ふとエレインの言葉が脳裏を過った。

 そのことに若干の戸惑いを感じつつも精霊の泉へと祈りを捧げる。

 すると、泉から二人の精霊が出てきた。


「私たちを呼んだのはあなたね」

「……ええ、そうよ」


 二人は小さな手のひらに乗るほどの小さな精霊で、背中からは蝶のような可愛らしい羽がついている。

 そして、天使のように美しい容姿で私の周りを何かを確認するかのようにグルグルと飛び回る。


「えっへへ。すごい身体してるね?」

「してるね!」


 どうやら精霊もエレインと同じく私の体を見ただけで強さを理解したというのだろうか。


「私の体がどうしたのかしら」

「君が幼い頃から私たちは見てきてるの」

「見てきてるの〜」


 キリッとした鋭い目をした美しくも大きい精霊の言葉を復唱するようにもう一体の小さい精霊は話している。


「えっと、あの訓練法のことかしら」

「……よくわからないけれど、あなたのことは信頼に値するよ」

「信頼に値するのだ〜」


 というと、これはつまり契約が成立したということだろうか。

 それにしても簡単に行き過ぎているような気がする。


「私と契約、できるのかしら」

「契約はね、別にいいけど試練を受けてもらうよ」

「試練なのだ〜」


 すると、二体の精霊は私の目の前に浮遊した。


「今から私たち精霊は嘘を言っているのか、それを見破ってほしいの」

「嘘を見破れ〜」


 もう一体は私の周りをグルグルと何かを監視しているかのように私を見つめてきている。

 そんな慣れない状況に違和感を覚えつつも私は小さく頷いて肯定した。


「いいわ、やってみる」

「ではまず一つ目ね。私は剣を持てるわ」

「私は剣を持てるの〜」


 そういうとどちらかが嘘を言っているという事だろう。

 それなら簡単だ。

 あの体では物理的に持てないのだから二体ともあの大きな剣を持つことはできないはずよ」


「…二体とも武器を持つことができない。違うかしら」

「正解正解〜!」


 一体の精霊が喜んでいるかのように私の周りを飛び跳ねていった。


「それでは二つ目、私は精霊の中で強くない」

「私は精霊の中で、強くなーい」


 一瞬戸惑ったあの小さい方が嘘をついている可能性があるが、それでは簡単すぎる。

 ヒントは隠されたところにあるかもしれない。


「嘘を吐いているのはあなたね」


 そう言って私は大きな方の精霊を指差した。


「っ!」

「あ、正解正解〜」


 すると、小さい方の精霊がまた嬉しそうに飛び跳ねた。


「……では最後、私はあなたに協力しない」

「私はあなたに協力しなーい」


 嘘かどうかを見破る、最後の言葉はとても難しいものだ。

 本当だとしたら今後どうするべきなのか気になるところなのだが、ここを突破しなければ契約が成立することはない。

 では、この言葉について考えてみることにした。


 私に協力しないということは、力を貸さないということだ。

 しかし、今までのことを考えれば彼女たちの力を色々と使って戦ってきたところもある。

 もちろん大聖剣として大きな力を獲得しているのは事実だ。なら、彼女たちの言っていることは嘘になる。


「あなたたちの言っていることは……」


 その次の言葉を言おうとした途端、私は一つの言葉を思い出した。


『自分の力だけを信じろ』


 ふと、私はここに入る前にエレインが言ってくれた言葉を思い出した。

 そうだ。結局信じられるものは自分の力だけなのだ。


「あなたたちの言っていることは全て事実よ」


 すると、精霊は動きを止めた。

 そして二体はお互いを見合っていた。

 しばらくすると小さい精霊が大きく飛び跳ねて私の周りをグルグルと回り始める。


「本当に突破したー」

「すごいよ! これを突破したのは二人目だよ」


 おそらく一人目というのは私の父のことなのだろう。

 父は亡くなる最後までこの二つの剣を持っていたのだ。

 私が父を継ぐためには聖剣をうまく使いこなさなければいけない。

 ここで失敗している場合ではないのだ。


「これで契約は成立なのかしら」

「うんうん!」

「契約成立よ。私たちの力を思う存分使ってね」


 そう言って精霊は私の剣の中へと消えていった。

 することが終わればすぐに姿を消す。

 父について話を聞くことができればよかったのだが、無駄話は精霊の掟に関わるためそれはできないのだ。


 こうして私は精霊の嘘を見破ることで契約を結ぶことに成功した。

 これから彼女たちとうまく付き合っていくために努力を積む必要があるだろう。そのためにも私はエレインを超える勢いで強くろうと心に決めたのであった。

こんにちは、結坂有です。


エレインはやはりお風呂問題に追われてしまうようですね。

今後どうなるのか、気になるところです。

そして、セシルも無事に精霊と契約を結ぶことができました。

一体どう言った恩恵を受けることになるのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに。



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