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検問をすり抜けて

 ドルタナ王国の城壁付近に到着するとすぐに私たちは周りに仲間がいないか確認をした。

 ただ、私たちの知る人はいなさそうだ。

 そのことに関してはそこまで気にする必要はない。そもそも私たちは王国の外で会う予定はなかったからだ。


「お前らの仲間はいなさそうだが?」

「この場所で合流する予定はありません。会った場合は王国内で大きな問題が起きた場合です」

「なるほど、それでどうやって侵入するんだ? 見たところ行商人に紛れる以外に方法はなさそうだが?」


 事前の報告では特に侵入しようなどと考える必要はなく、普通に入国することができるそうだ。

 ただ、大きな問題となるのがやはり魔族であるパルルの存在だ。

 私たちだけならまだしも、もし彼女が魔族だと気付かれた場合は非常にまずい状況になる。


「あまり目立たずに、かつ堂々としていれば問題はないと思うよ」


 前もって考えておいたそのことを彼らに伝えることにした。

 この国には聖騎士団の駐在がほとんどなく、検問を通る際はそこまで気にする必要はないそうだ。

 もちろん、エルラトラムから来た人間となればそれなりに監視されるらしいが、私たちはただの人間だ。

 それに加えて、エルラトラムがここ一帯を魔族から取り戻したことで旅の人間も多くなっていることだ。そこまで私たちを気に留める人は多くないだろう。


「魔族である私が一番の弊害になっているようですね」

「だが、あの小僧に会うんだろ?」

「はい。それに宝剣の方も手に入れなければいけません」

「ただ国内に入るだけなら問題ありません。国内の状況に関しては仲間の人たちと合流してから考えましょう」

「こんなところで考えていても状況は変わらないしね」


 私はそう言って前を歩いていく。

 目の前にはドルタナ王国へと入るための検問が行われている。

 とは言っても普通に受け答えするだけだ。

 私とサリネが先導するようにして検問官へと話しかける。

 どこから来たのかと言った簡単な質問を軽く受け流すようにして答えていくとすぐにすぐに通って良いと言われた。

 荷物もそこまで多くはなく、護身用の剣を携えているだけだ。それにこの件は聖剣といったものでもなんでもない。特に何か言われることはなかった。


「簡単なものですね」

「そうでなきゃ困るよ。それよりあの人たちはどうかしら」


 城壁を抜けてすぐに振り返ってみる。

 先ほどの検問官は聖騎士団と言うわけでもなかったが、もしも魔族だと認知できるような人であれば警報を鳴らされるかもしれない。

 パルルから漂う魔の気配は確かに薄いものの、それでも完全に隠しきれているわけでもない。

 守護の力でうまく隠し切ることができればいいのだが……


 そんな心配は必要なかったのか、しばらくすると二人が歩いてきた。


「少々時間がかかってしまってな」

「何かあったのですか?」

「その、私が緊張をしてしまって怪しまれたのです」

「それだけ?」

「はい。待たせてしまいましたね」

「気にしなくていいよ。それじゃ、行こっか」


 無事に検問を抜けれたのはよかっただろう。

 とはいえ、こんなところに長居する必要は全くない。

 怪しまれないためにもすぐに私たちは集合場所の方へと向かうべきだ。


「ちょっと待て」


 地図を確認して集合場所の方へと向かおうとした途端、背後から一人の男性が近づいてきた。

 服装的に聖騎士団ではなさそうだが、何があったのだろうか。


「……なんでしょうか」


 すると、その呼び止めサリネが冷静に返答する。


「君たちは山岳の方から来たと言っていたな」

「はい。私たちはその山を越えてここに来ました」

「……魔族に合わなかったか?」

「いいえ、魔族とは遭遇しておりません。何かあったのですか?」

「その場所に魔族の大軍が潜んでいるとの情報があってな。何もなかったのならいいんだ」


 そう言って男の人は踵を返して検問所の方へと戻っていった。

 山岳地帯に魔族の大軍が潜んでいると言うのは私もサリネも知らなかった。少なくとも存在しているだろうと踏んでいたが、大軍だとは想像もしていなかった。


「……運がよかったのかな」

「パルルさん、大軍のことは知っていましたか?」

「知っていましたが、魔族側も私たちに気付いている様子ではありませんでした。余計な混乱を招いてしまうと思い、伝えはしませんでした」

「確かに大軍がいるとなれば真っ直ぐこの国に向かわなかったでしょう」

「なら、よかったね」

「……わかりました。次からは教えてください」

「そうします」


 結果として早くここに辿り着くことができたのならよかったことだ。

 それに魔族の大軍を刺激することもなかったようだ。それなら今更何かを言う必要もないだろう。問題がなかったのだから。


「それにしても焦ったね」

「問題はなかったのです。私たちは堂々としていればよかっただけです」

「そうだけどさ。びっくりするでしょ?」

「……少しは」

「やっぱそうじゃん」


 とにかく私たちとしては検問を抜け、国内に入れたのはよかったと言えるだろう。

 問題があった場合、どうなっていたかはもう考えたくもないことだ。


「それで、集合場所はどこなのですか?」

「えっと、こっちの道を真っ直ぐ進んだところみたい」

「わかりました。では行きましょう」


 それから何の問題もなくその集合場所の方へと向かっていく。

 この国に入った時から思っていたことなのだが、この国は王国ということで王女をかなり崇拝しているような印象がある。

 街の至る所に王家の紋章が飾られているところを見るにそれは間違いないことなのかもしれない。

 独裁的な国家だとは聞いていたが、王家の人たちが優秀なのか国民はそこまで困窮している様子はないように見える。

 事前の情報ではこの国は剣術競技がかなり盛んなのだそうだ。

 エルラトラムとはまた違った方向へと進化しているらしく、その剣術とやらも見てみたいものだ。

 そんなことを考えながら街の中を歩いていくとすぐに集合場所へと到着した。


「遅かったわね」


 すると、その集合場所には私たちの仲間が一人だけ立っていた。

 彼女はテラネア・レニアニスと言う人でライラックを思わせるような淡い紫の髪が特徴の女性だ。

 そして、何よりも私のライバルとも言える。


「テラネアも来てたの?」

「こうした機会は滅多にないことだから」

「……エレインと会えた?」

「っ! 一人で会うなんて彼に失礼よ」


 どこがどう失礼なのかはわからないが、単独で勝手に行動されるよりかはいいのかもしれない。


「他の人たちはどこにいるのですか?」

「近くに宿があるの。そこで他の人たちもいるわ」

「じゃ、その場所に行く?」

「パルル、お前はどうする?」


 レメネスがそう彼女に質問する。

 宝剣が欲しいと言っていたが、その目的はまだ聞いていなかった。


「とりあえず、宿に向かいます。そこで宝剣のこともお話しします」

「仲間は多い方がいいか」

「お手伝いするかはその内容によります」

「出来ない相談もあるからね。私たちはあくまでエレイン様の従者なのよ」

「それはよく理解しています。ですが、私の守護の力はエレイン様の手助けになると思っています。その点に関しては同じだと思います」


 確かにその宝剣がエレイン様のためとなるのなら、従者となる私たちが手助けするのは当然のことだとも思える。

 結局のところはその内容次第と言うことだ。


「とりあえず、宿の方に行こうよ」

「……そうね。こっちよ」


 私がテラネアにそう促すと彼女はそのクールな表情で大きく頷くと私たちを宿の方へと案内してくれた。


 道中、この国の情報をいろいろ聞かせてもらった。

 その中で一番驚いたことが、エレイン様がこの国の王女と婚約関係にあると言うことだ。

 どう言った流れでそのようなことが起きてしまったのかは全くわからないのだが、私たちは従者としてその事実を受け入れなければいけない。

 ただ、他の仲間の意見としては政略的な意図があるのではないかとの話があるらしい。

 エルラトラムとドルタナ王国は長い間交流を持っていなかった。さらには邪険に扱っている節もあったようだ。

 そんな二国間の交流の象徴として、エレイン様との婚約が持ち出されたのかもしれない。

 とまぁ、憶測を広げたところで全く意味のないことだ。

 そこまでの情報をたった一日で集めてくれたテラネアや他の人たちには感謝しなければいけない。

 それに、もうすぐエレイン様にお会いするのだから私もそろそろ心の準備と言うものをしないと。

 そう、心を引き締める道中であった。

こんにちは、結坂有です。


エレインの従者となる部隊がどうやら王国内に集まってきているようですね。

彼女たちは一体どのような存在なのでしょうか。そして、彼女たちの実力も知りたいところですね。

このような世界で二年近くも単独で生きていけるほどの人たちですからとても強いのでしょう。


現在『カクヨム』にて一部加筆・修正した最新版も随時公開していますので、そちらの方でも楽しんでいただけると幸いです。


それでは次回もお楽しみに……



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