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喰われる存在

 俺、ゼイガイアは帝位であるゲレアモスの元へと向かっていた。

 その理由としてはエレインに関することを話すためだ。彼が一体どのような作戦を今考えているのか俺は知る必要があるからだ。

 もちろん、何も考えていないと言うこともあるだろう。

 ただ、セルバン帝国を攻撃したように裏で何か動かしているはずだ。

 俺が何か質問したところで彼が正直に答えてくれるかはわからないが、聞いてみないことにはわからない。


「……ゼイガイア、何をしに来た」


 彼が座っているのはこの都市でも一番大きな建物だ。

 もともとコンクリートだった壁は人間の血液によって真っ黒に変色し、禍々しい空間へと変貌している。

 この都市自体異様な雰囲気を放っているものの、何度も行き来している俺ですら彼のいるこの空間の異常なほどの空気感は慣れないものだ。

 彼がどれだけの人間を吸収し、力を蓄えているのかは想像できない。

 エレインを倒すためにそれほどのことをしなければいけない理由があるのだろうか。

 俺には全く理解できない領域の話なのかもしれない。


「あんたに話があってきたんだ」

「話? お前に話すことなどない」

「気になったことを確認するぐらい構わないだろう」

「……ここに来るまでの衛兵はどうした。ここに通すなと言ったはずだが?」

「通るために口止めしただけだ」


 ゲレアモスのような帝位の存在は慕う魔族があまりにも多過ぎる。

 天界にいる神ですら恐れるほどの存在だ。その畏怖するほどの力を持つ者に付いていこうとするのはどのこの世界でも同じことだろう。

 その辺りだけは人間も魔族も変わりはないと言うことだ。

 そう言う連中は命令に忠実だ。ここに入るのに説得させるのが面倒だったからな。

 話せないようにすれば大人しくなった。


「場合によっては反逆行為だ」

「口のない奴に用はないだろう」

「……それで、何を聞きたい」


 やっと話す気になったのか、彼は小さくため息を吐くと椅子に座って俺の方を見た。

 最初から話してくれれば面倒ごとなど起きずに済んだのだがな。


「エレインのことだ。次の手を考えているのか?」

「考えていない」

「あの帝国を攻撃したんだ。何も考えていないわけもないだろう」

「奴が聖剣を持っていないと断言したのはお前だったな。実際は持っていた。加えて、後続の部隊を控えさせたのもお前だな」

「無駄に消費するよりかはマシだ」

「それは結果論だ」


 帝国にエレインがいるとの情報を知った時、こいつは真っ先に動いた。他の帝位の意見など聞かずに独断で一億を超える軍勢を用意した。

 当然だが、俺もそれに加わることになったのだが、先行の部隊が全滅したと分かってすぐに俺は撤退を判断した。

 結果として大きな損失を防ぐことにした。まぁ初めから大軍勢で攻めるべきだったのかもしれないが、帝国の奴らが早く動いたせいもあってすぐに動けなかったからな。

 結局のところ帝国は滅びたが、奴らの目的としては達成された。

 始祖及び継承者の能力発現計画の被験者は全員生存の上、魔神の封印すらも解くことはできなかった。あの戦いは言うまでもなく大失策であった。


「ともかく、今の次の一手を考えているのはわかっている」

「……ここで話したところで何になる」

「知る権利はある。あの時のようにな」


 すると、背後の扉から一体の魔族が飛び出してくる。


「申し訳ねぇ、すぐに連れ出しま——っ!」


 俺のすぐ横を掠めて時空の歪みを感じたと同時にその魔族の体は両側から引き剥がされるようにして半分に千切れる。

 苦痛の表情すら見せず、一瞬にしてこいつは絶命したようだ。


「……まぁいい。エレインのことは後回しだと考えている。それよりもあの戦いで帝国に情報を売った魔族がいるようだ。そいつをまず殺す」

「叛逆の魔族か。どこにいるかわかっているのか?」

「わからん。だが目星は付いている」

「名前はわかっているのか?」

「パルル・アーデクルト、真珠のような髪と瞳をした人型の魔族だ」

「まだ生きていたのか?」

「一度は殺したがな。生きてやがる」


 帝国の戦いの後、俺らの部隊で彼女は殺すことに成功したはずだ。

 逃げ隠れの上手い奴だったが、それでも数日で見つけ出し、殺すことができた。

 そんな彼女がまだ生きているとは思えない。


「あの攻撃を受けてまだ逃げ続けているのか?」

「奴の能力を忘れたのか? 守護の神だぞ?」

「……加えて生命力も高いのだったな」


 あいつが何の理由があって帝国に情報を売ったのかはわからないままだったが、きっと何か見返りがあったに違いない。

 まだパルルが生きていると言うのならそれを確かめ、排除しなければいけないな。


「場所は特定できていないが、それも時間の問題だ。いずれわかること」

「奴が動くとは考えないのか?」

「動けるわけがないだろう。あれほどの痛手を負ってはな」


 確かに普通では考えられないほどの攻撃を受けたのは確かだ。

 近づくことができなかったために無数の投石をした後、俺を含め帝位の力を授かった魔族らと一斉に攻撃を仕掛けた。

 動き回る上に強固な防御壁によって攻撃を何度も妨げられたが、体自体はそこまで強靭というわけではない。

 一度その結界を破壊すれば、あとは直接奴の体を壊せばいいだけだ。

 俺が最後に見た時には体の半分以上が失っていた。そのあとは下位の魔族に任せておいた。

 絶命する最後まで見届けるべきだったのかもしれないな。


「ただ、奴が帝国から何の見返りも受けていないわけもない」

「寝床を調べてもわからなかったな」

「魔神に関することなのであれば、早々に見つけ出したいところだ」

「神となってエレインに挑む、そう言いたいのか?」

「できることならな」


 神になることはそう簡単ではない。

 神の総意によって封印された混沌の時代の神は何体もいる。その中の一体である魔神は俺たち魔族にとっての元祖とも言える存在だ。

 魔神の力を最も神に近い帝位の連中が手に入れることで魔族は本来の力を取り戻すと信じられている。

 少なくとも神の力だからな。何の恩恵も受けないというわけではないはずだ。

 そんな混沌の時代を最初から最後まで無傷で、何事もなく生き残った剣神と呼ばれる存在には驚かされるがな。


「俺の力もそう遠くないうちに本来のものになる。その時こそ、エレインを殺す時」

「順調にいけばいいがな」

「何、あの傷も治ってきているからな」


 そう言って彼は胸元を撫でるようにそう言った。

 かつてのエレインに付けられた大傷、今は傷があったのかすら見えないほどに回復しているが、失った力は大きいものだ。

 それもそろそろ回復しつつあるというらしい。

 一瞬だけ後ろに散らばった魔族を見る。

 俺もそろそろ動き始めなければ、そいつのように排除されてしまうかもしれないな。

 この腕が若干震えているのを感じる。

 乗り越えるべき壁はどうやら大きいようだ。

こんにちは、結坂有です。


どうやら帝国に情報を受け渡した裏切りの魔族が他にもいるようですね。

ペルルという可愛らしい名前をしているようですが、激しい戦闘でも生き残れるほどの強い生命力に強い守護の力があるようです。

彼女は一体何者なのでしょうか。そして何が目的なのでしょうか。気になるところですね。


現在『カクヨム』にて一部加筆・修正した最新版も随時公開していますので、そちらの方でも楽しんでいただけると幸いです。


それでは次回もお楽しみに……



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