表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
629/675

婚約発表会に向けて

 魔族の大軍勢と戦っている時、俺は妙な感覚に陥った。

 その直後、俺の意識は別の夢のようなところへと飛ばされ、そこで聞き覚えのあるが意味のわからない言葉を聞いた。

 当然ながら、今もその言葉の意味を考えているものの、一向に答えが見える気配はない。


「我が身を宿す者……ラクアのように内側に精霊を宿している、という可能性があるのではないでしょうか」


 そのことも考えてみたが、それならアンドレイアやクロノスが何も感じていないというのは不自然だ。

 同じ精霊なのだとしたら、その妙な力と言うのもある程度はわかるのかもしれない。


「どうだろうな。だが、アンドレイアたちが気づいていないのは変だと思うがな」

「……もしかすると精霊よりも強い存在なのだとしたらどうでしょうか」

「精霊よりも強い存在といえば、神とか?」


 ミリシアの言葉に何か気付いたのかリーリアが俺の方を向く。


「エレイン様、天界での出来事を覚えていますか?」

「ああ、邪神の力によって魔族化し始めたことだな」


 邪神による魔族化は魔剣で大部分を刈り取ったはずだが、時間によって蓄積されるものなのだろうか。


『我が主人よ。その可能性はないじゃろな』

『はい。魔の力は確かに強力なものですが、それなら私たちが先に気付きます』

『今は燻るようなもので、お主に害の出るほど大きくはなっておらん』


 なるほど、確かに俺と契約をしている彼女たちならその力を感知することは容易にできるか。

 それに加えてアンドレイアの言葉を借りるなら存在してはいるが、実害が出るほどのものではないようだ。

 俺自身の実感としてもあの時のように内側から溢れる負の力を感じてはいない。


「アンドレイアたちもどうやら魔族化の影響ではないと断言している」

「……そうですか」

『まぁ神自身が人に宿ることはないじゃろう。ただ、その力を人に宿すことはあるの』

『アンドレイアさんの言う通りです。そのような事例な過去何度かありました』


 すると、彼女たちはそう思い出すように言った。

 確か剣神も元々人間だったと言っていた。神のような力を人ながら手にすることはできるのかもしれない。

 無論、創造神によって決定された世の摂理を覆すような力は下界にいる以上発揮することはできないはずだ。

 加えて剣神は俺の先祖にあたる人物らしい。直接の血縁関係はあるのかわからないが、俺も何らかの力を引き継いでいても不思議ではないか。


『じゃが、それならどうして神の力を封印するような真似をするのじゃ?』

『わかりません。おそらくは私たちよりも古い時代のことなのかもしれません』


 アンドレイアやクロノスよりも古い時代と言うとそれはもう魔族が天界を支配し始めていた時のことなのだろう。

 それだとしたら、その詳しい経緯を調べるのは難しい。

 神話や伝説の真偽を確かめるようなもの、残されている史料も少ないはずだ。

 あのセルバン帝国がどこまで俺の素性について知っていたのか、今となっては施設が自壊してしまったために多くは残っていない。

 おそらくは魔族に知られないようそれらの情報を消したのだろうが、それ以上の理由があると言うことも考えられる。

 少なくとも彼ら帝国は俺たち四人のことをかなり詳しく知っている様子だったからな。


『……わしらの知ったことではない、と言うことか』

『普通であれば知る必要はないのでしょう。残す必要のない伝承は消えていくだけですから』


 精霊の族長でもあったクロノスですら知らない情報となると多くのものにとっては知らなくてもいい情報なのだろう。


「可能性としてはクロノスたちの時代よりも古い出来事と関係あるのかもしれない」

「具体的にはどれほど古いものなのでしょうか」

『推定ではあるが、神絡みの事象となると千年以上前じゃろうな』

「……千年ほどらしい」


 そうアンドレイアの言葉をリーリアたちに伝える。

 それほどの前のことを今更調べるのはさすがに無理だ。エルラトラムですら知らないようなことを何の手掛かりもない俺たちが探れるようなものではない。

 神に直接聞くことができればいいのだが、その手段は今のところない。

 実質調べるのは不可能といったところだろう。


「考えたところで答えは見えてこない。知っている存在がいるのなら別だがな」

「……ルージュ、あの魔族なら少し知っていそうな様子でした」

「完全に味方と決まったわけではない」

「そう、でしたね」


 俺たちを惑わす目的で嘘の情報を流している可能性もある。

 リーリアの魔剣で真偽を確かめることができればいいのだがもう過ぎてしまったことだ。


「とにかく、今は無視しておくべきだろう。少なくとも俺たちには優先するべきことがある」

「ええ、この国を守ることね」

「ミリシアはそのこと相談しにきたのだろう?」

「……そうよ。すっかり忘れてたけれどね」


 彼女のことだ。おそらくラフィンとの婚約発表会についての相談をしにきたのだろう。


「率直に話すけれど、発表会は明後日になりそうよ」

「かなり電撃発表ですね」

「まぁ仕方ないわ。ただ、今の状況ではゆっくりと順序立てている時間はないからね」

「それに国民はラフィンのことを信用しているようです。亡命先のエルラトラムで何かあったのだろうと察してくれることでしょう」


 ミリシアの事前の情報によればこの国では王家に対しての噂話はすぐに広まるらしい。

 それほど国民の関心は王家に向けられていると言うことだ。

 この国の伝説の影響もあるのかもしれないが、単純にラフィン自身の人望の厚さもあるのだろう。

 彼女は国の発展のために尽力してきたようだからな。


「明後日か」

「やっぱり、魔族が攻めてくるかしら?」

「そんなことはないだろう。彼らを壊滅させることはできなかったが、撤退したのは確かだ」

「私とお兄様だけで半数は削ることができました。当然、次の攻撃はお兄様を狙ったものになるでしょう。彼らは私たちを脅威と認識したようですから」


 アイリスの言うように彼らは俺にのことを優先して殺したいようだ。

 上位種の連中も脅威と認識するほどに俺の情報が出回っているらしからな。

 もしルージュとも話すことができれば魔族の情報も同時に知ることができるだろう。

 ルクラリズと違って戦闘に参加することの多い彼女なら多くのことを知っていても不思議ではない。加えて俺やアイリスの詳しい情報もある程度は聞けることはずだ。

 俺の直感ではあるが、彼女から俺たちに対しての敵意は感じられない。


「……次は厳しい戦いになる、そう言うことね?」

「簡潔にいえばそうですね」

「対策は後で考えよう。今は婚約発表のことを先に決めるべきだ」

「わかったわ。基本的にラフィンが自分で説明するらしいわ。エレインはただ彼女の横に立っているだけでいいと思う」


 この国の王女なのだ。俺から説明するよりも王女であるラフィン自ら説明するのが妥当だろうな。


「わ、私もそばにいてもよろしいのでしょうか?」

「もちろんよ。リーリアはエレインの従者なのだからね。私とアレクも警備隊の方に紛れて監視しておくから安心して」


 聖騎士団に紛れて色々と探りを入れてくれるのだそうだ。

 この発表会で何が変わるのかはわからないが、国民の意識は少なくとも変わるだろうな。

 陰ながらこの国を守ったと言うのはドルタナ警備隊も知っていることだろう。


「そうか。わかった」

「……まぁ問題が起きることもないでしょうけれど、警戒はしててね」


 明後日に向けて細かく決めていくのだろう。

 外を見てみるとすでに日が傾き始めていた。何かと色々あったが、魔族の大攻勢を退けることができたのは幸いと見るべきだろう。

 ともかく明後日の発表会に向けて明日は体を休めることにしよう。

こんにちは、結坂有です。


エレインの力について気になるところがたくさんありますが、今調べている時間はなさそうですし、その術もなさそうですね。

ルージュが手掛かりを握っているようです。果たして彼女とコンタクトが取れる日が来るのでしょうか。

そして、始まる婚約発表会はどのようなものになるのでしょうか。気になるところですね。


現在『カクヨム』にて一部加筆・修正した最新版も随時公開していますので、そちらの方でも楽しんでいただけると幸いです。


それでは次回もお楽しみに……



評価やブクマ、いいね!なども大変励みになりますので、押してくれると嬉しいです。

Twitterではここで紹介しない情報やたまにつぶやきなども発信していますので、フォローお願いします。

Twitter→@YuisakaYu

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ