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疾走する閃光

 俺、エレインはアイリスと共に隠れ城へと向かっている。今回は二人だけだが、昼間に向かっていた時はラフィンが案内してくれていた。その時の道から大きく外れないように、それでも同じ場所に辿り着ける経路を通っている。

 別に同じ経路から行っても問題はなかったのかもしれないが、ミリシア曰く警戒されているかもしれないとのことで少し違った経路を考えてくれた。


「お兄様、二人きりですね」

「そうだな」

「……デートの時を思い出します」

「まぁ魔族の拠点にこれから向かうわけだがな」


 デートというには雰囲気がまったくない。とはいえ、二人きりの時間というのはあまりないのは確かだ。いつもならリーリアがいるからな。アイリスと二人で何かをするのはこれで二回目ということになる。

 それに妹とこうして行動するのはよくあることなのだろう。ただ俺自身、家族という存在を理解していないのかもしれないが。


「私の意見ではありますけれど、二人で行くのはどこであろうと楽しいです」

「確か、リーリアも似たようなことを言っていたな。まぁその意味合いは全く違うものだろうな」

「どうでしょうか。私には同じようなものだと思っていますけれど」


 どちらにしろ、アイリスとリーリアが俺に対してかなり強い好意を向けているのは流石の俺でもわかる。しかし、それが意味するものの違いなど、まだ俺には理解できていない。もちろん、普通の生活をしていればそんなこと簡単にわかるのかもしれないが。


「……そろそろ時間ですね。行きましょうか」

「ああ、その前にアイリス。何か違和感はないか?」

「違和感ですか?」

「ラフィンと来た時と今とで何か違う感じはないか?」


 この森に入る直前で俺は気づいていたのだが、彼女も気づいているのだろうか。もしかすれば俺だけの違和感なのかもしれない。確認の意味も込めてそうアイリスに質問することにした。

 ただ、これは俺の思い過ごしであればいいのだが。


「そうですね。確かに振動のようなものを感じます。何か地面の下から……」


 そう言って彼女は自分の足元を確認する。

 彼女の言うように振動のようなものを感じるが、これは単なる振動ではない。衝撃波による振動だ。何か遠くの方で爆発が起きたというわけではない。断続的に続くこの振動は言ったどこから来ているというのだろうか。


「地震というわけでも爆発が起きたというわけでもないだろうな。この振動は」

「はい。お兄様に言われるまで気付きませんでした」


 自分の勘違いというわけでもないのなら何かが起きているということのようだ。

ただ、それを知るには今の俺たちではわからない。魔剣にいるアンドレイアやクロノスが話しかけてくる様子もないことから彼女たちも俺たちと同じくわからないのだろう。

 とにかく俺たちがするべきことになんら影響はないものの、放置するには少しばかり不安が残る。


「……どうするのですか?」

「ここはアレクを信じるしかないだろうな。聖騎士団も俺たちの制圧を待っていることだ」

「わかりました」


 少なくとも魔族があの隠れ城に集まっている時点で罠である可能性は高かった。それに、彼らがドルタナ王国を直接支配することなく放置している原因もおそらくこの振動に関わっていることだろう。

 俺にはまだこの振動の正体はわからないが、よくない前兆であるのには変わりない。

 それでも不安ばかり口にしていては何もできない。今できることはなんでもやるべきだ。


「行くか」

「はい」


 俺の合図とともにアイリスの片目が光り出す。その目で影の世界を見ることができるそうだ。そして、自分の影を操り、影を通して現実の世界へと影響を与える。

 ブラドの持つ分身とは異なる能力でかなり強力だ。それにブラドの分身とは違い、自分も動くことができる。もちろん、それには相応の能力が必要になるわけだが。

 続いて俺もイレイラを取り出し、全速力で隠れ城へと突撃する。


 地面を蹴り、風のように駆け出して数分。

 目的の隠れ城の門へと辿り着く。闇夜に乗じたこともあり、中でくつろいでいるであろう魔族にはまだ気付かれていない。

 しかし、この門を打ち破るには音を立てるしかない。


「門を破壊する。援護は任せた」

「はい。お兄様。いつでも構いません」


 そう言って彼女は門の横へと移動して身を隠す。

 それを確認した俺はイレイラを大きく振り上げ、全力で振り下ろす。イレイラの能力”追加”によって俺の斬撃は限界まで拡張され、門を真っ二つに両断する。同時に強烈な爆発音のようなものが響き渡り、木片が周囲に飛び散る。


「ッグアァア!」


 門を破ると内側から魔族が数体俺へと飛びかかってくる。


「はっ」


 それを待っていたかのようにアイリスが流れるようにその魔族を斬り裂いていく。その姿は疾風を纏っているかのような印象を受ける。アレクに似た動きではあるが、アイリスのそれは彼女なりにアレンジされているようだ。


「良い動きだ」

「アレクさんと訓練して身に付けた技です。どうですか?」

「筋はいい。動きにも無駄はないように見える」

「……ありがとうございます」


 俺がそういうと彼女は頬を若干赤くしながらまた剣を構える。

 まだ魔族を数体倒した程度だ。まだこの奥には百体を優に超える魔族が待機していることだろう。それにこの場所は王城に直接続く地下通路のようなものがあるようだ。ここで時間をかけていてはアレクの方にも魔族が流れ込むことだろう。

 それにしても、この嫌な感じはどこから漂ってくるのだろうか。


「お兄様?」

「ああ、先に進もうか」

「はいっ」


 ともかく、今は隠れ城にいる魔族を殲滅することが重要だ。

 門を突破し、城の中から魔族が何十体と出てくる。扉からだけでなく、窓からもまるで溢れかえるように襲いかかってくる。

 その多くは下位の魔族だ。しかし、少し違うのはやはりドルタナ王家の紋章が入った甲冑を着ていることだろうか。


「グブウアァア!」


 俺の前へと真っ先に来た魔族をイレイラで両断する。何も難しいことはない。聖剣の能力と自分の技術があれば分厚い装甲を身に付けていたとしても簡単に斬り裂くことができる。

 それでもたった一体を倒した程度ではこの魔族の勢いを止めることはできない。


「数が多いな。アイリス、少し時間を稼いでくれないか?」

「はいっ!」


 威勢のいい返事と同時にアイリスが俺の前へと走り出し、それと同時に彼女自身の影も本体から離れてどこかへと走り始める。


「はっ!」


 三方向から無数に飛び掛かってくる魔族を冷静に対処し、影を使って俺に近づいてくる魔族も斬り倒していく。普通であれば自分を守るのに精一杯になるのだが、彼女はよく周りを見ている。とはいえ、俺たちと同じ訓練をして最高記録を出していたのだとしたら、これぐらいは当たり前か。

 ただ、彼女の活躍に見惚れている場合ではない。

 俺はイレイラを構え、目を閉じ感覚に集中する。視覚以外の感覚を研ぎ澄ますことで周囲の魔族を瞬時に把握することができる。それだけではない。隠れている魔族であってもこの感覚の網からは逃れられない。


「ふっ!」


 ほんの数秒ほどの探知しかできなかったが、俺は一気に剣を振り下ろす。


 ジュゾォンッ!


 強烈な空振が轟き、周囲にいた魔族が瞬時に剣閃の波に飲み込まれていく。一人で多数を相手にする場合はこの『一閃轟裂』と言う技を使わなければいけない。

 この技はアンドレイアが言うに俺の脳にかなりの負担がかかるらしい。自分としてはこれを使ったとて疲労感に襲われたことはない。ただ、多用し過ぎるのはやはり危険なのかもしれない。言うまでもなく、視覚以外の全ての感覚情報を脳に直接取り込んで分析するのだ。それ相応の負担があるのは間違いない。

 まぁ一流派を作りたいと言うことはないのだが、誰かに技を教える時のために奥義としておいた方がいいだろう。


「……敵が、一瞬にして消えていきました」

「溢れ出してきた下位の魔族は一掃できた。しかし、内部に残っている上位の連中はまだ倒せていない」

「その方ですね。すぐに行きましょう」


 そう言ってアイリスは走り出す。俺も彼女に続いて隠れ城の内部へと侵入していく。この裏で起こっている事態を想像しながら……

こんにちは、結坂有です。


エレインの強烈な一撃で下位魔族は一瞬にして消えていきましたね。

いや、大聖剣イレイラ最強ではないでしょうか……魔剣の方も強い、でしたね。

それにしても、エレインとアレクの作戦の裏で動いている魔族のことも気になるところですね。一体何が起きているのでしょうか。


現在『カクヨム』にて一部加筆・修正した最新版も随時公開していますので、そちらの方でも楽しんでいただけると幸いです。


それでは次回もお楽しみに……



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