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不純な力の用途

 俺、エレインはアイリスと議会の方へと来ていた。

 俺の予想に反して議会内は少々慌ただしい状況になっていた。話を聞くとどうやら議長が無断で何処かへと向かってしまったのだそうだ。しかし、そうとは言っても俺の想定が崩れることはない。


「慌ただしいですね」

「そうだな」


 予想以上に混乱している様子だ。まぁ考え直してみればそれもそうか。この議会の長たる人物が突然いなくなってしまったのだからな。

 それよりも小さき盾がどう動いているのかが気になる。今朝、俺がミリシアに忠告した通りに動いてくれれば助かる。


「すみません。小さき盾の人はどこにいるかわかりますか?」


 すると、アイリスが職員の一人にそう話しかけた。


「えっと、確か大通りの方へと向かわれたそうです」

「わかりました。ありがとうございます」


 彼女がそういうと職員の人はまた慌ただしく別の部屋の方へと向かっていった。何をしているのかはよくわからないが、議長がいないことによる仕事の遅延が要因なのだろうな。まぁ議長の作戦も多少は強引ではあるものの、それなりに効果のある作戦だ。まさか、議会全体を欺くとは思い切った決断だがな。

 どうやら彼女たちに関しては想定通りと言っていいか。アイリスは俺の耳元で小さく口を開いた。


「今のところ問題ありませんね」

「彼らからすれば何が起こっているのかわかっていないだろうからな」

「エレイン様っ」


 そんなことを話していると背後からユウナが話しかけてきた。どうやらナリアもいるようだ。


「議長が勝手にどこかに行ったって……」

「そのことだが、小さき盾に任せた方がいい」

「そうですよね」

「議会内は混乱状態になっているが、ユウナたちはこの議会を守る役割がある。自分の役割をしっかりと果たすべきだ」


 俺がそういうと彼女たちは大きく頷いた。俺がわざわざ言うまでもなく彼女たちはしっかりと目的を果たそうとしているようだ。まぁこんな時に暗殺集団が議会を攻め込んでくるなんて考えてもいないからな。

 とはいえ、油断もできない状況というわけでもある。少しでもタイミングがずれれば、予想が外れたらその時こそ大きな問題が起きる。それも簡単に制御できないほどにな。


「……本当に大丈夫なのよね?」

「問題ない」

「エレインがそこまで言うのなら信じるわ」


 ナリアも心配ではあるが、俺たちのことを信頼してくれるそうだ。彼女たちで勝手に動かれてしまっても逆に混乱を招くだけだ。今は俺たちのやろうとしていることを信じてほしい。


「アイリス、議会内に妙な気配はないな」

「はい。敵意や悪意は感じられません」


 俺も周囲の気配からそのようなものは感じられない。ただただ混乱しているだけであるそうだ。まぁその点は仕方ないとして、明確な敵意のようなものがないのだとすればここは大丈夫だろう。


「そろそろ俺たちも大通りの方へと向かうか」

「はい」


 議会の様子を確認した俺たちはそれから大通りの方へと向かってみることにした。


 ここは商店街と違って賑わいがあると言うわけでもない。それでも住宅地域から工業地域に向かうための大きな通路でもある。それなりの人通りがある場所だ。予想では小さき盾はこの場所へと向かっているはずだがな。


「……この気配」

「魔族がいるようだな」


 魔族の気配を感じた俺たちはその気配に導かれるようにしてその大通りから少し外れた場所へと向かうことにした。見渡してみると周囲に人気は全くなく、それでいて妙に静かな感じがする。

 それに加えて、先ほどよりも強い魔力の気配がする。


「少々危険ですね」


 アイリスがそう呟くように口を開く。

 弱い下位の魔族がこんなところに来ているとは考えられない。気配を隠していると言うことでそれなりに強い魔族がいると言うことのようだ。警戒した方がいいだろうな。


「まさか、剣聖が自ら動き出すとはな」


 すると、低い声でフードを被った何者かが話しかけてきた。


「俺のことを色々と詮索しているようだが、何が目的なんだ」

「目的はただ一つ、復讐だ」

「悪いことをしたとは思っていない」


 俺は魔族を殺している。もちろん、彼らからすれば俺は悪いことをしているのだろう。ただ、彼らは異界から侵入してきて人類に多大な影響を与えた。もちろん、彼らは人類を殺している、いや殺し過ぎている。

 何年も虐げられてきたのだからな。


「……人類なんて滅びてしまえばいいのだ」

「それはお前が魔族になれたからだろう。多くの人間が魔族になれるわけではない」

「ある程度の犠牲は仕方ない」


 やはりこの男もセシルの父と同様に魔族になることが救済だと考えているようだ。当然ながら、救いのない世の中なのだとしたら、そのような考えになるのも頷けるだろう。ただ、それは全くの救いがない場合で必要となることだ。

 今はまだエルラトラムに神樹が残っている限りは人類に反撃する能力があること、本来あるべき人類の生活を取り戻せる可能性があると言うことだ。


「お兄様の言っていた魔族になった人、ですか」

「そのようだな」

「……私には理解できないです」


 どうやらアイリスも俺と同じような考えのようだ。まだ反撃する能力があるのなら、抵抗する力が残っているのなら最後まで抗うべきだろう。それは俺たち人類の権利であり、義務なのだから。


「変化を受け入れるべきなんだっ」


 すると、男がフードを剥ぐようにして脱ぐと剣を俺たちに向けてきた。そして彼の背後からまた三人の男が歩いてくる。


「早まった決断かもしれないが、今こそ革命のとき」


 そう言って彼らは俺の方へと切っ先を向けて突撃してきた。凄まじい勢いで攻撃してきている。とはいえ、まだ魔の力を完璧に使いこなせていないようだ。これならゼイガイアと戦った時の方が厳しいと言える。


「ふっ」


 イレイラを引き抜くと同時に斬り上げ、その攻撃を弾き返す。次の瞬間、男が視界から消えた。


「はっ!」


 直後、背後から殺気を感じた。


 バキンッ


 強烈な一撃だったが、俺は後腰に携えた魔剣の方を引き抜くことでその攻撃を防ぐ。


「目で追えていないな。それが人間の限界だ」

「……」


 俺が何も言わないでいると、再び彼は視界から消えた。今度は頭上からのようだ。


 ガゴォンッ


 上からの攻撃を剣を交差させて相手の剣を挟み込む。


「自分が強いと、そう思っているんだな」

「最強とは思っていないが、今の状況で負けるとは想定できていない」

「一体どこまで……」

「この程度ならアイリスでも防げる」


 そう言ってみると相手は横へと視線を向ける。

 アイリスは先ほど後ろから走り込んできた三人組を対処している。このフードの男よりかは実力が高くない。


「お前らっ!」


 すると、フードの男が叫び出す。その直後からら三人組の体が光り始めた。アイリスは危険を察知したようで一気に彼らから距離を取る。俺も彼女に続いて彼らから離れることにした。


「お兄様、あれは一体……」

「俺にもわからないな。あれは初めてだ」


 男の体が光り始めたかと思うとすぐに液状へと変化し、それらが一つに固まり始める。

 こんな風に状態変化するとは今まで無かったために様子を伺うことにした。下手に攻撃すれば足を掬われることになるだろうからな。それに彼らの動きを観察するのは俺たちに必要なことだろう。


「貴様ら人間に限界がある。それを知ることだな」


 そう言ってフードの男はその一つになった液状の塊の中へと入り込んでいった。

こんにちは、結坂有です。


魔族へと変わりたい人間はまだまだ多くいるようですね。それにしても、今までと少し違うようですね。彼らは一体何者なのでしょうか。そして、彼らの背後にいるのはどこの魔族なのでしょうか。

まだまだ混乱を引き起こしたいと考えている人は少なくないようです。


現在『カクヨム』にて一部加筆・修正した物語も順次公開していますので、そちらの方でも楽しんでいただけると幸いです。


それでは次回もお楽しみに……



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