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互いに違っていても同じ

 俺、エレインはリビングでルクラリズが来るのを待っていた。

 昨日、小さき盾の住む家を出る直前に話したいことがあると彼女から言われた。少し長話になるということらしいが、どのような話なのかは全くわからない。

 それにアイリスが俺の剣術を知りたいとお願いされている。彼女に取って俺の技術など新しく教えれるものではないと思うがな。とはいえ、俺もマリセル共和国での剣術が混ざった技術というのも見てみたいものだ。

 ベジルは技術に頼った戦い方ではなく、自身が持つ高い能力を最大限に活かした戦い方をしていた。だから、共和国の技というものは実質としてみたことがない。一般の訓練施設を見学したが、アイリスの方がより完成された技術なのだろう。


「……エレイン様、ルクラリズさんをお連れしてまいりました」

「ああ」

「この家、何度来ても迷子になるわ」


 そういってリーリアがルクラリズをリビングへと案内してくれたようだ。彼女は何度かこの家に来ているものの、それなりに大きな家で少し複雑な内装をしているためまだ彼女は一人でこのリビングへと来ることができないのだ。

 ルクラリズがゆっくりと椅子に座るとリーリアから差し出された紅茶をゆっくりと飲み始めた。

 人間としての生活に徐々に慣れてきているらしく、服装もかなりオシャレなものとなっている。俺の横に座るアイリスもそうなのだが、女性というのはオシャレをしたいものなのだろうか。まぁ男性も服に気を使っている人は街を歩いていてもよく見かける。人それぞれということなのかもしれない。


「……それで、話というのは?」


 俺がそう話を切り出すと彼女は丁寧にティーカップをテーブルに置くとアイリスの方へと視線を向けて口を開いた。


「そろそろ、私もエレインと一緒に行動したいなと思って……」

「なるほどな」

「アイリスとも少しずつ仲良くなってきたことだしね」

「別に私は仲良くなったつもりではないのですが……」


 すると、ルクラリズから強い視線を感じたのか、彼女は言葉を一瞬つまらせる。


「……ですが、ここに来た当初と比べて彼女に対する警戒心はありません」

「そうか」


 確かに魔族に対してかなり強い敵対心を向けていたアイリスにいきなり魔族のルクラリズと合わせるのは良くないと思っていたからな。セシルも同じ理由でこの国に来てからしばらくは彼女たちと合わせることを控えていた。

 しかし、徐々に顔を合わしていくにつれてルクラリズやセシルに対しての敵対心や警戒心は解けていったようだ。それは昨日のやり取りでもわかる。

 最近は距離を取っていたが、もうその心配はいらないか。


「なら、私も一緒に行動してもいいわよね?」

「まぁ喧嘩しないのなら大丈夫だ」

「アイリスと喧嘩なんてしたことないわ。ね?」


 すると、またルクラリズはアイリスに視線を向けながらそういった。


「……覚えている限りでは喧嘩はしたことがないと思います」


 アイリスが言わされているような感じではあるが、その点は言及しないでおくか。あらかたルクラリズが俺のところに戻れるよう計らってほしいと前々からお願いしたのだろう。

 まぁ最初の頃も険悪な視線を向けていたものの、喧嘩というほどではなかったしな。


「それなら、いいわよね?」

「そうだな」

「一つだけ、私から言っておきたいことがあるのですが……」

「なに?」


 俺の横からアイリスが真っ直ぐな目でルクラリズの方へと向いた。


「お兄様とはどのような関係なのでしょうか」

「関係……魔族の私が一人で外を出歩けないもの。監視役って感じかしら」

「言い方を変えます。今後どのような関係になられるおつもりですか?」

「え? 今後?」

「はい」


 彼女から急にそのようなことを言われて少しだけ戸惑うルクラリズ。

 それに今を中心に生活してきた彼女からすれば、今後のことなんてすぐに答えれるわけがない。


「えっと、いい関係になれるといいなって」

「いい関係、ですか?」

「うーん、エレインとリーリアみたいな……」


 俺とリーリアとの関係に憧れを持っているのは知っていたが、それは諦めたのではないだろうか。いや、主従関係ではないのだろうか。


「そうですね。阿吽の呼吸、とでも言うべきでしょうか。二人は恋人よりも強い絆を持っていそうで羨ましい限りです」

「そうよねっ。憧れるわよねっ」

「はい。同じ考えを持つ同志としてこれからもお互いに頑張りましょう」


 なぜか盛り上がっている二人だが、当の俺はよくわからないでいた。横に立っているリーリアを見ても首を小さく傾げている。おそらくは彼女もよくわかっていないようだ。


「……正直なところ拒否されるものと思っていたけれど、すんなり許してもらえて拍子抜けしたわ」

「そうか。なら、もう少し反対してみようか?」


 俺がそう言うとルクラリズはむっとした表情で口を開いた。


「冗談はやめてよ」


 長話をすると言っていたが、そうなることはないようだ。本人たちが大丈夫だと言っているのなら大丈夫なのだろう。俺から反対する理由なんて一つもないからな。

 まぁ早い段階で彼女たちがある程度理解し合うことができれば、二人で今後行動をともにすることができるかもしれない。小さき盾に匹敵する実力を持つ人が二人も増えれば活動の幅も広がる。俺としても議会としても嬉しいことばかりだ。


「……それではお兄様、私の訓練に付き合ってもらえますか?」

「わかった」

「これからなにかするの?」

「アイリスが俺の技術を見てみたいようだからな。まぁ新しく得ることはないかもしれないが……」

「いいえ、お兄様のなされる行動や仕草のすべてが私の参考になります」


 一体どこからどこまで俺の動きを見られているのかはわからないが、深く聞くのはやめておくべきだろうな。


「だったら、私も見ててもいい?」

「大丈夫だ」

「やったっ」


 なぜか嬉しがるルクラリズ。俺との訓練は初めてというわけではない。久しぶりということもあるかもしれないが、そこまで嬉しがることもないような気もする。


「エレイン様。差し支えなければ、私もご一緒させてもよろしいでしょうか」

「ああ、参考になることだろうからな」


 確かにアイリスの剣技は俺でも目を見張るものがある。彼女の動きを見ることでリーリアの糧になるのは間違いないだろう。できることなら二人で試合をしてもいいかもしれない。

 どちらにしろ、二人がここに来てよかったのだろうな。

 そう思いながら、俺たちは訓練場へと向かうことにした。

こんにちは、結坂有です。


全く違うアイリスとルクラリズですが、同じ志を持っているようですね。

それにしてもエレインとリーリアの関係は理想的な感じです。

遅かれ早かれ、アイリスとルクラリズもエレインとよりよい関係になれることでしょう。


それでは次回もお楽しみに……



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