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見えない光を信じて

 俺、エレインは議会の中でラフィンという王女と一緒に部屋にいた。議長のアレイシアは彼女の亡命を承認するための仕事へと向かった。当然ながら、ラフィンが亡命したいと言ったことで議会で緊急会議を開くことにした。事態は一刻を争うものだ。

 ただ、ここまで円滑に事態を運ぶことができたのはやはり先日のとある報告のおかげだろうか。


「エレイン様、ドルタナ王国でのことはやはり先日のことと関係あるのでしょうか」

「まったく関係ないということはないだろうな」


 その報告というのはセシルとルクラリズが発見したメモがきっかけだった。そのメモは魔族がよく使っている文字で書かれているもので、ルクラリズがそのメモを読んだところドルタナ王国を攻撃するとのことであった。

 そのメモは家に直接届けられたようで誰かが意図的に送ったのだろうが、詳細なことはまだわかっていない。少なくともそのメモはまったくのデタラメではなかったことになる。こうしてドルタナ王国で事件が起きたこともやはり関係があると見ていい。


「先日のこととは何でしょうか」

「アレイシアは何も言わなかったが、ドルタナ王国を攻撃するといったメモが見つかったんだ」

「攻撃、それは魔族なのでしょうか?」

「魔族の文字で書かれていたみたいだからな。詳しいことは俺もわかっていないが……」

「……魔族の文字を読むことができるのですか」


 すると、懐疑的な目を向けてそのようなことを言った。

 エルラトラムの内情を何も知らない彼女からすれば妙なことだろう。正真正銘の魔族が俺たちと協力関係にあるということは流石に控えるべきか。無意味な混乱を与えてしまうからな。


「エルラトラムには魔族に関係する研究を行う施設があるのをご存知ですか?」

「つまりはその施設が解読したということですね」

「簡単に言えばそういうことです」


 リーリアがうまくフォローしてくれたようだ。


「それで、そのメモを発見してエルラトラム側はなにか動いているのでしょうか」

「ドルタナ王国に二人の剣士を向かわせている」

「そのメイドと同じ部隊ですね」


 すると、ラフィンは俺の横に立っているリーリアを見ながらそう鋭く言った。

 初めて彼女とあったときからなにかあると思っていたが、どうやら彼女はリーリアのことを知っているようだ。


「……私のことを知っているのですか?」


 魔剣の能力を使ってリーリアはラフィンの心の中を覗いた。それなら気付いて当然か。


「リーリア・ユーグラシアさん……一度ドルタナ王国へ来たことがありますよね」

「確かに数日間だけ行ったことがあります。まさかとは思いますが、王国に入る人たちは全員把握しているのでしょうか」

「さすがにそのようなことはできません。美しい山に覆われたドルタナ王国は観光でも多くの人が来ますからね。ですが、怪しい人でしたらすぐに分かります」

「怪しい人、ですか」

「ドルタナ王国民は全員国王の配下ですし、剣術競技が盛んで剣を持っていなくとも剣の実力者だとすぐにわかります」


 ラフィンの言うようにリーリアはこうしてメイドとして過ごしているが、剣術を習得しているために体の使い方や動きが普通の人とは少し違う。今となってはだいぶ普通の人と変わらないようにはなっているが、俺と会う以前ならドルタナ王国民でもすぐに気づくことだろう。それに国柄的にも剣術を嗜んでいる人が多いらしいしな。

 それにしてもすべての国民が国王の配下と言っているようにその国に入るだけで常に監視されていると考えていいだろう。まぁドルタナ王国に向かったあの二人なら臨機応変に対処するか。


「そうなのですね。あのとき、ずっと監視されていたのですか」

「もちろんです。ただ、目的が何だったのかはわからないままでしたが……」

「あのときはただの調査です。エルラトラムは聖剣取引国がどのような現状なのかを定期的に調べているのですよ」

「……そういえば、そのようなことが契約書に書かれていましたね」


 すると、ラフィンは昔を思い出すように上を見ながらそう答えた。

 聖剣取引の契約はついこの前にも行ったために記憶に新しい。聖剣を悪用していないかを調査するために特殊部隊が送られるのだ。

 そして、その特殊部隊が公正騎士だ。聖騎士団から選出され、特定の魔剣と契約することでその部隊に入れる。公正騎士は聖剣を取り扱う国を独自に調査する。それはエルラトラム議会も同様だ。

 リーリアと最初に会った時にも公正騎士という部隊だった。数少ない存在で当時国内には二人しかいなかったらしい。その公正騎士のメンバーは議会でも数人しか知らない。もちろん、俺もすべてを把握しているわけではない。

 そんな彼女が今は剣聖専属メイド兼護衛騎士となっている。


「私のことをどこまで知っているのですか?」

「そうですね。スカートの中に剣を隠しているところまでは知っています」

「まさかとは思いますが……」

「勘違いしているのでしょう。私は駆け引きをしているわけでもなにか取引をしようとしているわけでもございません。ただ第二王女として知っていただけことですよ」


 そう余裕そうに言った彼女ではあるものの、明らかに何かを狙っている様子が見て取れる。どこまでのことを考えているのかはまったく分からない。俺にはドルタナ王国のことをほとんど知らない。王家の闘争がどのようなものなのかも想像すらできない。

 少なくとも彼女の命が狙われているということ、その狙われた理由も理不尽だということ、そして、それらの裏に魔族が関与しているかもしれないという可能性があるということだけだ。


「まぁラフィンの言うことをすべて信じるのだとすれば、ドルタナ王国は魔族の手によって支配されつつあると言うことだな?」

「私はそうだと確信しています。その第一王女ジェビリーも本人かどうかわかりませんからね」


 ラフィンの話によると直接ジェビリーと会ったことがないらしいからな。姉妹であればほんのちょっとした違いでもわかるはずだ。しかし、魔族がジェビリーに成り代わっているのだとすれば、その魔族は戦略的に動いていると見える。姉妹であるラフィンから距離を取ることで本性をうまく隠しているようだ。

 すべてうまく進んでいるのだとすれば、今まで以上に厄介な相手になるかもしれない。二人を先行して向かわせているが、一筋縄ではいかないだろう。


「……ラフィンはどうしたいんだ?」

「どうしたいか、具体的にはまだ決まっていません。ですが、このまま何もせずドルタナ王国が滅んでいくのは避けたいところです。私にはまだあの国の王女であるという自覚がありますから」

「そうか」


 護衛も付けずに一人でエルラトラムへとやってくるような王女だ。精神力もその信念も強い人物なのには間違いないだろう。しかし、俺にはこの国でやらないといけないことがある。

 ドルタナ王国の問題を解決する前にエルラトラムでの問題も解決しなければいけない。エルラトラムで今起きている問題とは俺とアレイシアの暗殺計画が進んでいるということだ。

 少なくとも俺はそう簡単に暗殺されたりはしないだろうが、アレイシアは別だ。俺がドルナタ王国に向かっている間に攻撃されるかもしれない。強い聖騎士だったとしても今は手負いの状態で聖剣も持っていない。少しでも手練れの剣士と複数戦になれば勝算はないと言える。


 俺には彼女を守る義務がある。この国で俺がこうして自由に生きていくことができるのも議長である彼女に守られている。互いに守り、守られているといった関係なのだからな。

 今はドルタナ王国に向かわせている二人が魔族の計画を阻止してくれることを信じるしかないか。

こんにちは、結坂有です。


また数日間更新が滞ってしまいましたね……

不定期となってしまいますが、徐々に安定させていきたいと思っていますのでこれからもよろしくおねがいします。


エルラトラムでも問題が起きているようですね。さすがのエレインも体が一つしかないため解決できる問題は一つずつとなってしまいます。

これからどうなっていくのでしょうか。楽しみですね。


それでは次回もお楽しみに……



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