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グランデローディア領にて

 俺、エレインは魔族に侵入した後、小さき盾たちの攻撃が始まるのを待っていた。

 そして今、空に響き渡る爆発音を合図に魔の気配が急激に強まり始めた。もちろん、これはレイの攻撃に違いない。彼の常識外れの馬鹿力は地球のものとは思えないほどだからな。兎にも角にも、その彼が攻撃を開始したということはすでに攻撃を始めているということでもある。

 俺たちは急いでその攻撃の起こっているであろう場所へと向かうことにした。

 とはいえ、彼らの援護に行くというわけではない。

 俺たちの目的はただ一つ、グランデローディアの討伐だ。


「エレイン、もう一度言っておくけれど……」


 移動しているとセシルがそう後ろから話しかけてきた。

 そう、今回の戦いで一番考えておかなければいけないことが一つだけある。それはグランデローディアのことだ。

 そのことはセシルと訓練をともにしていたときに少しだけ聞いたことがあることだった。


「例の魔族のことか?」

「ええ、あのグランデローディアって魔族は私の攻撃を弾いたのよ」


 彼女の攻撃を完全に弾き飛ばしたらしい。実際に俺は目で見たわけでもないのだが、セシルがそういうのなら事実なのだろう。当然ながら、俺とて手を抜くことはしない。本気で挑むべき相手なのには変わりない。

 どういった能力を持っているのかはわからないが、自ら前線に出ても無傷で逃げることができるほどの能力なのかもしれない。


「はい。私も警戒すべきかと思います。何か対策でもあるのですか?」


 リーリアはそう俺に質問してくる。

 もちろんだが、その話を聞いて何も対策しない俺ではない。いくつかの対策を考えてきたのだからな。


「魔剣の方で一度斬ってみて、手応えがない場合は聖剣イレイラの最大威力で攻撃する。単純だが俺に考えられる対策はそれぐらいだな」


 魔剣で様子を見てから攻撃を強めていくべきだろう。後々のことも考えて、その方が都合がいいからな。

 しかし、それにはセシルやルクラリズの協力が必要になってくる。

 魔剣の場合は問題なく戦うことができるのだが、聖剣の方を使うとなれば少しばかりの時間が必要になる。その時間を稼ぐために彼女たちには頑張ってもらわないとな。


「……複雑な作戦は実行できない恐れがありますからね。シンプルが一番です」

「そうだ。ただ、それにはいくつか問題がある」

「問題?」

「聖剣イレイラの能力を最大限に発揮するには少し時間が必要になる。それにはセシルとルクラリズに時間を稼いでもらわないといけない」


 俺がそう振り返って二人に伝えると彼女たちはすぐに口を開いた。


「何を言ってるのよ」

「私たちはグランデローディアを倒すために来たのよ。時間稼ぎぐらいしてみせるわ」


 セシルがそう真っ直ぐな瞳で俺を見つめてくる。

 どうやら俺の勘違いだったようだ。彼女たちは最初から覚悟を決めていたようだ。まだ体が動けないでいる状況かもしれないのに、そこまで言えるというのは強い精神力の表れでもある。

 彼女たちを信頼して間違いはなかったということのようだ。


「なら、その言葉を信じる。俺はその信頼に応えるよう努める」

「はい。終わらせましょう。この戦いを」


 リーリアがそういったと同時に俺たちは走り出した。

 なにも恐れる必要はない。俺には優秀な仲間が付いている。小さい盾ほどの実力者ではなくとも、信頼できる仲間であるのには変わりない。

 彼女たちも俺のことを信頼してくれている。それには応えなければいけないわけだからな。

 それから俺たちは強まる魔の気配の奥へと走ることにしたのであった。


   ◆◆◆


 私、ミリシアは小さき盾たちとともに魔族の軍勢と戦っていた。

 魔族の実力はパベリの頃と比べてかなり高くなった印象だけど、それでも弱いことには変わりない。このまま私たちが暴れ続けていれば、きっとエレインたちも動きやすいことだろう。

 まぁ暴れるだけならレイの爆発的な攻撃だけで十分なのかもしれないけれど、一人だけで戦わせるわけにはいかない。


「それにしても、まだこんだけの魔族がいたとはなっ」

「そうね。パベリにいた魔族はほんの一部だったってことね」


 私たちが一番驚いていたのは魔族の強さではなく、その多さであった。上位種とはまだ出会っていないものの、それでも下位種の数がとんでもない数だ。

 パベリの頃の数倍以上はいるだろう。気配も含めてかなり強いのがわかる。


「あの場所を攻めたのは囮だったってことか」

「もしくは捨て駒だったとか?」

「す、捨て駒なんてひどいです……」


 ユウナはそんな事を言っているが、ショーテルで魔族の首を跳ね飛ばしている。彼女のほうがよほどひどいことをしているように見える。

 なんとも言葉と行動が矛盾しているが、まぁ指摘はしないでいいだろう。


「領主にしてみたらこの作戦は必ず成功させるつもりだったのでしょうね。だから、あれほどの被害が出ても堂々としていられたのよ」

「絶対に成功させる、ね」

「へっ、絶対だかなんだか知らねぇが、妨害すればいいんだろ?」

「そういうことよ。もう少しペースを上げるわ。エレインたちのためにもねっ」

「おうよっ」


 私がそう言ったと同時にレイの剣が光り始めた。

 そして、強烈な衝撃波とともに百体もの魔族が吹き飛ばされていく。それぞれ魔族の四肢がその衝撃波によって分断され、瞬時に魔族の軍勢を滅していく。

 地下訓練施設のころとは比べ物にならないぐらいに進化している。いや、それは魔剣のおかげもあるのかもしれないが、それにしても彼の力はどこから湧き上がってくるのだろうか。

 目に見える筋力以外からも力を引き出しているように見える。

 ……まさか、本当に脳の中まで筋肉なのだろうか。


「あ? 何見てんだ?」

「いえ、なんでもないわ。行きましょう」

「なんだよ」


 私はそう言って走り出した。

 そんな私を不思議そうにレイが後ろから見つめてくるが、何も答えないでいた。

 脳筋だなんて言えば、怒られそうな気がしたからだ。まぁ実際は怒りはしないだろうけど。


 それからしばらく魔族の軍勢を殲滅していくと、級に魔の気配が一気に変わった。それと同時に空気もまた変わった。


「っ! こりゃ罠に嵌められたって感じだなっ」

「そうね。でも、もとからそのつもりだったでしょ」

「まぁそうだがなっ」


 と、レイがそう意気込んだと同時にバチバチッと空気が振動し始める。


「この感じ……」


 その直後、白光が私たちの目の前に現れた。


「テメェらだけで気取ってんじゃねぇよ」


 そう言って現れたのは四大騎士のハーエルだ。雷撃の能力を持った彼は文字通り、雷を操る聖剣使いだ。

 国防に専念するはずの彼がどうしてここにいるのだろうか。


「四大騎士がどうしてここに?」

「決まってんだろ? エルラトラムを守るためだってな。アレイシア議長が許可を出してくれたんだ」

「許可を?」

「まぁ、ここなら他国に迷惑かからねぇだろうからな。俺が暴走して災害を引き起こしたとしても何ら問題はねぇってことだ」


 確かに災害級の能力を誇る大聖剣が暴走でもしたら自国だけでなく他国にも多大な被害が出ることだろう。しかし、ここは魔族領の中だ。

 なにかとんでもない事が起きたとしても被害は限られているか。


「わかったわ。それなら、私たちに付いてきて」

「ああ、そのつもりだぜっ」

「そ、それよりも、あの上位種をどうにかしないといけません」


 ユウナがとある魔族を指差してそういった。

 その魔族からは強烈な魔の気配が感じられる。上位種であるのには変わりないのかもしれない。それにここまで奥に来たのだ。上位種の一体や二体いても不思議ではないだろう。


「ハーエル、あれを倒せるかしら」

「俺を誰だと思ってんだ?」


 すると、また白光を放ちながら、ユウナの指差した魔族へと向かっていく。

 その閃光の如き攻撃は上位種の魔族を一瞬にして半分に斬り裂いた。


「どうやら僕たちも戦わないといけないみたいだね」


 ただ、上位種は一体だけではなく、まだ多くの数が残っているようだ。


「そうね。一体ずつ仕留めていくわよ」

「ああ」

「はいっ」


 私たちは下位種の戦いから、上位種の魔族との戦いへと移行するのであった。

こんにちは、結坂有です。


戦いも激しさを増してきましたね。

エレインたちは無事にグランデローディアを倒すことができるのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに……



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