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巨像の崩壊

 私はレイとルクラリズと一緒にタイタン級の右足の方へと向かっていった。

 当然ながら、あのタイタン級の魔族を倒さなければいけない。時計台でエレイン様が戦っているのを助ける必要があるのだ。

 とはいっても、私の力ではタイタン級の魔族を倒すことができない。小さき盾である彼らの力を信用するしかないのだ。


「リーリア、魔の気配が強まってきてねぇか?」

「そうですね。タイタン級以外にも魔族がいるのでしょうか」

「……その可能性はあるわね。タイタン級が動いたってことでここにも集まってきてるかもしれないし」


 タイタン級の一体だけで通せんぼをするというわけではなさそうだ。

 幸いにも私にはそれなりに実力がある。彼らほどではないが、手助けぐらいならできることだろう。


「私が下位種の相手をします。レイさんとルクラリズさんはタイタン級をお願いします」

「おうよ。任せたぜ」

「無理だけはしないでね」

「わかっています」


 私はスカートを上げて、魔剣を取り出す。私の魔剣は双剣で聖剣使いとしては少し特殊な立場だった。無敵なんて呼ばれたこともあるが、私はそんなことはないと思っている。私を育ててくれた師匠もそうだし、当時のブラド団長にも勝てなかったのだ。

 だけど、魔族相手には負けると思ったことがない。なぜなら私の魔剣は精神干渉を得意としているのだ。

 心の弱い下位種の魔族に負けるわけがない。


「……行きましょう」


 私はそう言うと二人は右足の方へと走り出す。

 周囲へと目を向けると建物の影から私たちを狙っている下位種の魔族が数体見えた。


「五体ぐらいか。リーリア、任せたぜ」

「はい」


 私は剣を構える。

 そして、それと同時に魔剣の能力を解放する。私の眼にはあの魔族の考えている攻撃ルートが映し出されている。

 どうやらあの魔族はレイたちを優先して攻撃しようとしているようだ。

 そのルートの光が赤くなると同時に魔族が動き出す。


「はっ」


 私もそれに合わせて動き始める。

 当然ながら私に対して持っている棍棒を振り上げる魔族だが、その攻撃もすべて把握している。魔族の考えていることをすべて精神干渉の能力によって筒抜けになっているのだ。エレイン様のように予測しているわけではない。


「グルァウ!」


 振り下ろされる棍棒を寸前で躱すと私は双剣の片方で魔族の首を斬り落とす。


「ふっ」


 そして、次に距離を取ろうとした魔族を真っ先に攻撃する。振り返ったその魔族の背後を両手の剣で斬り裂く。

 さらに私の背後から攻撃してくる魔族へと視線を向ける。すでにわかっている攻撃だ。後はそれに合わせて動くだけなのだ。


「グルゥウ!」


 続けて私は二体も斬り倒す。

 とりあえず、目に見えていた魔族は倒すことができたようだ。


「へっ、助かったぜ。リーリア」

「行くわよっ!」


 すると、レイを担ぎ上げたルクラリズがそういった。

 それと同時にタイタン級の右足が大きく硬直し始めた。


「いいところに投げてくれよなっ」

「当然よ!」


 すると、地面が強く踏み込んだルクラリズは勢いよく助走をつけて、レイをタイタン級の太ももへと投げ飛ばす。


「ぶっ倒れろよっ! デカブツがっ!」


 レイは投げ飛ばされた勢いをうまく使って高速に体を回転させるとそのままタイタン級の太ももへと斬り込んでいく。

 その高速の回転斬りは強烈な斬撃一つだけでなく、いくつもの斬撃を生み出す。

 それと同時に大量の鮮血が滝のように降り注ぐ。


「ググルウォオオオオオ!」


 頭蓋が震えるような重たい低音が轟くとゆっくりとその巨体が上空から倒れ込んでくる。


「っ! リーリア。こっちにっ」


 そう言ってルクラリズは私の腕を引っ張って近くの建物の影へと連れて行く。

 ズゴゴゴッと連続して爆発音が聞こえると一気に砂塵が舞い上がってくる。砂嵐でも起きたかのようなそんな状況だ。

 しかし、魔の気配は徐々に薄まっていく。


「レイ……」


 ルクラリズがそう砂塵の奥を見つめている。

 どうやら彼女には砂塵の中でもある程度見えるようだ。


「何が起きているのですか?」

「レイが暴れてるのよ」

「暴れているですか……」


 目では見えないが、耳を澄ませて音を聞いてみることにした。

 風圧によって巻き上げられた瓦礫や砂塵の音の中に微かにだが、レイの声が聞こえる。


「斬り裂いてやるぜっ!」


 金属が弾けるようなそんな甲高い音を立てているのが聞こえてくる。


「リーリア、私たちも行くわよ」


 そう言ってルクラリズは砂塵の中へと突撃していく。私もなにかできるかはわからないが、砂塵の中へ走っていった彼女を追いかける。


 しばらく走っていくと、徐々に地面がぬかるんできた。

 真っ暗で見えないが、おそらくはタイタン級の血液で地面が緩んでしまっているのだろう。

 それよりもこの臭気が厄介だ。強烈な匂いは嗅覚を麻痺させる。


「リーリア、あっちよっ」


 彼女が指差したほうを向いてみるとレイとアレクが剣を振り回していた。


「アレクっ! やってやろうじゃねぇかっ!」

「そうだね。いつぶりだろうか」

「知らねぇよ。だが、昔って感じはしねぇなっ」

「ふふっ、そうかもしれないね」


 すると、二人は鏡合わせのように剣を構えると一気に駆け出す。

 一直線に走る二人の剣閃は光を纏い、そしてタイタン級の頭部へと走る。

 赤く光る三つの眼が不気味さを醸し出しているが、それよりもレイとアレクの青白い剣閃が神秘的で美しいと感じる。


 ジュゴォオン!


 大砲が直撃したかのような音が聞こえると同時に吹き飛ばされそうになるほどの衝撃波を受ける。


「へっ、結局は斬れるってことだな」

「そうみたいだね」


 砂塵を振り払い、目を開けてみるとそこには半分に斬られたタイタン級の頭部が転がっていた。


「本当に倒せるなんて……」

「ありえないって顔ですね」

「と、当然よ。魔族の切り札みたいなものなんだから」

「だけど、レイさんとアレクさんなら何でもできますよ。もっといえば、エレイン様ならもっと早く倒すことができたかもしれませんっ」


 そうなぜか楽しそうに話し出すユウナだが、確かにそうなのかもしれない。

 エレイン様の持っている聖剣イレイラは”追加”という能力、斬撃を増やす以外にも様々な効果を発揮する汎用性の高い能力だ。

 彼が本気を出したとなればタイタン級など一瞬で仕留めるのだろうか。


「まぁとりあえずは解決したな」


 そんな事を考えているとレイとアレクが戻ってきた。


「……お疲れさまです」

「少し手こずったが、こんなもんだろ」

「もっと早く弱らせる事ができれば難なく倒せるだろうね」


 本当に小さき盾のみんなはとんでもない人ばかりだ。こんなタイタン級相手に物怖じすることなく、解決策を考え、そしてそれを実行するだけの力も持っている。

 そんな彼らを見た私はいけないことなのだが、若干の恐怖を感じたのであった。

こんにちは、結坂有です。


タイタン級を無事に仕留めることができた彼らですが、あまりに強すぎる力は恐怖の対象になるようですね。

これからどうなっていくのでしょうか。


それでは次回も楽しみに……



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