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境界を超えて

 俺、エレインはミリシアとともに時計台のある方へと向かった。かなり大きな建物でついさっき倒壊したばかりのため、そこへの道のりは砂塵がまだ巻き上がっている。


「……全滅させていなかったとはいえ、魔族の数が多そうだな」

「北側と南側から来たからね。想定通り、中央に集まっていたようね」


 壁を超える直前、そのようなことを話していたのは俺もミリシアも想定していた。だから、壁を乗り越えるのは両端からと決めたのだ。

 それ以外にも理由はあったが、それが大きな理由の一つだ。

 とはいえ、あの巨大だった時計台を破壊するほどの強引な作戦をすぐに実行できるほどのリソースがまだ魔族に存在していた事自体が不思議だ。両端から攻めた俺たちでも三百体以上の魔族を倒した。その事を考えても、最低二倍以上の数が中央に集結していたことになるのだ。


「まぁ数は想定以上だが、俺たちの作戦としては変更する必要はなさそうだな」

「早まっただけでそれ以外はまだ問題はないからね」

「俺たちを孤立させようという目的なら大した問題ではない。聖騎士団の作り上げた壁が破壊されたわけでもないからな」

「ええ、時間稼ぎなのかどうかはわからないけれど、私たちの行動に変更はないわね」


 いくらリソースがあるとは言っても聖騎士団の本隊へと突撃するほどの思い切った攻撃はしないようだ。今回の魔族の攻撃は最初から最後まで慎重だった。


「こんなときに本国が攻撃されたら……」

「それはないと信じたいがな。ここまでの攻撃をして、本国にも同時に攻撃を仕掛けるとなると全体で三千近くの魔族が必要になる」

「どちらにしろ、早めにここを片付ける必要があるのは確かね」


 遅いよりかは早い方がいいからな。

 少なくとも魔族側が何を考えているのかわからない以上は、俺たちも想定される最悪を考えて行動するべきだろう。

 今最悪なのはパベリを守るがあまりに本国の防衛が疎かになり、その間に大規模攻撃を受けることだ。それに四大騎士が本領を発揮できる環境ではないということもある。ここでの作戦を素早く終わらせるべきだ。


「っと、やっぱり待ち構えていたわね」


 時計台へと走っているとその道中に魔族の群れが待ち伏せていた。

 当然といえば当然なのだが、俺たちを足止めさせるためにあらゆる手を打っているようだ。

 目の前にいる魔族だけでも数十体以上はいる。ここから時計台までの距離はまだかなりあり、まだ多くの魔族が中央へとはびこっているということが想像できる。


「これぐらいの数なら突破できそうね。エレイン、本当に大丈夫なの?」

「無理しているように見えるか?」

「そうには見えないけれど……ってかエレインの場合、無理してても顔に出さないでしょ」

「まぁそうかもしれないな」

「とりあえず、今回は私が前に出るわ。エレインには私の援護してほしいの」


 本調子なのかわからない彼女にとってはそう提案するしかないのだろうな。

 俺自身もまだ完璧に調子を取り戻せたのかまだわかっていない。ここはミリシアに先人を任せるとするか。

 ちょうどイレイラの能力も支援にも適していることだしな。


「ああ、わかった。ミリシアも無理はするな」

「わかってるわよ」


 そう言って彼女は剣を引き抜いて走り始めた。

 彼女の魔剣の能力は”分散”と呼ばれるものだ。受ける攻撃を大きく分散させることで自分自身には最小限のダメージに抑えることができる。それに攻撃を与える場合にもいくらかの応用が可能だ。

 対正面戦や一対一においては能力を十二分に発揮できることだろう。そして、それ以上に彼女には俊敏性がある。高い奇襲性を持った彼女の攻撃はあの魔剣の能力と奇しくも相性がいいように思える。

 明確な理由はわからないが、彼女になら先陣を任せても問題はないと言い切れる。


「はっ」


 ザッと地面を蹴り、残像を残して走り出す彼女は瞬時に魔族へと斬り裂いていく。

 分散といった精霊の能力を使わなくとも彼女自身の高い俊敏性と奇襲性で下位の魔族を圧倒していく。

 俺たちに攻撃を仕掛けてくる魔族は彼女のまったく無駄のない直線的な攻撃で、かつ残像を残し、相手の攻撃を逸らせる動きに何もできずただ蹂躙されていく。

 もちろん、すべての魔族を彼女一人で対処することはできない。高い攻撃性のある能力を持っていないからだ。その取り逃した魔族を俺がイレイラの”追加”という能力をを使って距離関係なく始末していく。

 俺とミリシアとは地下訓練施設のときからの付き合いだ。互いにどのような動きをするうのか理解した上で戦うことができる。


「なんか久しぶりな気分っ」

「そうなのか?」

「ええ、二人だけっていうのがね」


 魔族を斬り裂きながら彼女はどこか楽しそうに戦っている。

 レイのように戦闘狂というわけではない彼女だが、今回の戦いに関しては楽しいと思ってるようだ。

 まぁ思い返してみれば俺と一緒に戦っている時は訓練時代から楽しそうにしていたな。

 そんなこんなで第一陣の魔族はすぐに全滅していく。


「第一陣は終わったみたいだけど、すぐに第二陣のようね」

「休む暇を与えないってことだな」

「戦いの基本ね」


 一瞬でも疲れを癒やす時間を作っては勝機が見えない。

 最初から強いとわかっている相手に勝機を見出すには弱点となる部分を引き出す必要がある。すべての人間に言える弱点は疲労だ。どんな人間でも戦い続ければ疲れが溜まり、いずれは動けなくなるものだ。

 ただ、そんなことは俺たちだってわかっていることだ。

 俺とミリシアは戦いながらもタイミングを見て力を抑えている。長く戦うためのコツのようなものだ。

 味方を信頼して自分は休むことで疲れを回復させるのだ。こうすることでかなり長時間戦う事が可能となる。訓練時代ではこの方法で半日以上も休まずに全力に近い状態で戦えていたからな。

 四人でうまく連携すれば一日以上は能力を下げずに戦い続けることができることだろう。


「ふっ」


 イレイラを使って砂塵の中から飛び出してくる魔族を攻撃する。

 強烈な斬撃を能力である”追加”で大量に発生させると、何体かの魔族たちは血を吹き出して倒れていく。それと同時にミリシアが突撃していく。

 その俊敏な動きは俺の攻撃によって機動力が低下した魔族を一瞬にして始末していく。


「第二陣突破っ」

「そろそろ相手の作戦が見えてきたな。仕掛けるべきだろう」

「ええ、陣形を変えられる前に叩く方がいいからね」

「続けて第三陣へと突き抜けるか」

「もちろんよっ」


 そう言うと彼女はまた地面を蹴り、砂塵の中へと突撃していく。

 俺もそれに続いて彼女の後ろを走る。

 広場で戦っていたアレクやリーリアたちもそろそろこっちに着ている頃だろう。

 もしかすると、途中で合流する事になりそうだな。どちらにしろ、今は魔族の防衛陣を切り崩していくだけだ。

こんにちは、結坂有です。


激化してきた戦いですが、一体時計台でなにが待ち構えているのでしょうか。

そして、二手に分かれた小さき盾とエレインたちは合流できるのか。


それでは次回もお楽しみに……



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