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内側からの攻撃

 私、リーリアはアレクとレイと共に議会周辺を調査していた。

 議長であるアレイシアにはユウナやナリアが護衛を担当しており、カインはラクアとともに攻め込んでいるであろう防壁へと向かった。その他にも学院の動ける生徒たちにも応援を頼んでいるため、かなりの人数が防壁に集まっているはずだ。

 それらはミリシアの采配もあって、それぞれが活躍できる役割を担うことになった。

 そして、私自身は自分の魔剣の能力を使って内側に潜んでいると思われる魔族を調査することにしたのであった。もちろん、アレクやレイも同行してくれているため、非常に心強い。


「それにしても、こんなところに魔族がいるなんて思えねぇがな」

「ですが、ゴースト型は非常に厄介な相手です。目視も出来なければ、気配すらも感じにくいのです」

「僕も見たことがあるのだけど、確かに近づくまで気配は感じないね」

「へっ、そうとはいっても攻撃してくる時は姿を表すんだろ?」


 まぁレイの言うようにゴースト型の魔族は攻撃を仕掛ける場合は必ず実体化しなければいけないのだ。奇襲を仕掛けてくることもあるのだが、それらの攻撃でも冷静に対処することができれば問題ない。

 私の実力でも対処できるのだから、アレクやレイほどなら何ら問題なく戦うことができるだろう。

 しかし、だからといって安心できるわけでもない。

 数万規模の魔族の軍勢が迫っているということでかなり計画的に攻撃されていることは間違いないようだ。もし国内にいる魔族が侵入経路などを確保していたとしたら、このエルラトラムは大量の魔族で制圧されてしまうことだろう。

 実際にここ周辺の調査によると魔族はいないものの、複雑に入り組んだ地下通路があるらしい。そのいくつかの通路は国外のある場所へと繋がっているらしく、全てを把握できていない。


「僕たちは最悪な状況を考えなければいけないからね。気を抜いている場合ではないみたいだね」

「そうですね」

「まぁどうでもいいけどよ……」


 レイはどこまでも余裕そうにしている。彼の実力はとんでもないもので人間ではないほどだ。それは彼の動きを見ていればすぐにわかる。

 強力な魔族のような豪腕の内に繊細な技術も兼ね備えているという超人と呼ばれる人物だ。当然ながら、アレクやミリシアも超人の部類には入るけれど、その中でも異質を放っているのが彼だ。

 そんなことを考えていると防壁の方から響いていた警報が鳴り止んだ。


「……攻撃が終わったってか?」

「いや、戦いが激化するみたいだね」

「はい。ずっと警報が鳴り響いていると戦闘の邪魔になってしまいますからね」


 国中に響き渡る警報音は戦闘時の連絡などに影響が出るからだ。重要な連絡が警報によってかき消されてしまっては円滑な情報伝達が出来ない。


「どうやら戦いはこれからのようだな」


 すると、そう言ってレイは強く拳を握りしめる。

 かなりの気合が入っているのだろう。私は魔剣の能力によって感情などが抑制されてしまっているが、今回の戦いは国の命運を決める戦いでもある。彼ら以外にも気合の入っている人は多いはずだ。


「レイ、聞こえないか?」

「あ?」


 いきなりアレクが立ち止まって周囲を警戒し始めた。

 彼の気配察知能力は非常に高いもので小さき盾の中でもかなりの精度を誇っている。


「……何も聞こえねぇが?」

「変だね。地面の下から金属音のようなものが聞こえたと思うんだけど」

「金属音ですか。私には何も聞こえなかったのですが、なにかあるのかもしれませんね」

「このあたりに地下通路なんてあったか?」

「わからないね。地下通路はもはや迷路みたいなものですべてを把握できていないから……」


 私も調査についての資料を思い出してみたのだが、どの経路が私たちの下を通っているのかは全くわからない。

 十数通りもの道が複雑に絡み合っているため、全てを記憶することはできない。それにわかっていない通路もあることからもはや把握なんて出来ないのだ。


「でしたら……」

「アレクっ!」


 思ったことを提案しようとした途端、レイが声を上げてある方向を指差した。


「っ!」


 指差したほうを向いてみるとそこにはすでに魔族がいたのであった。


「くっ、地下通路から来たってことみたいだね」

「ふざけた野郎だなっ!」


 そう言ってレイが魔剣リアーナを引き抜く。


「人間……弱き者がわれに敵うとでも?」

「レイっ、下がれっ」

「ちっ」


 その途端、見慣れた黒い影が這い出てきた魔族を囲んだ。そう、ブラドの分身があの魔族を攻撃しているのだ。


「ぐぅう! 雑魚がっ!」

「雑魚はどっちのことだろうな」


 そして次の瞬間、魔族の首が斬り落とされた。当然ながら、地下通路から這い上がってきた魔族はブラドの聖剣によって即死してしまったのだ。


「ブラドさん……」

「リーリアに、小さき盾か」

「もうお体は大丈夫なのですか?」

「ブラド隊長っ! 危険ですっ」


 すると、少し離れた場所からフィレスが走ってきた。

 彼女の発言からしてどうやらまだブラドは回復していないようだ。


「……俺のことは気にしなくていい。死ぬような真似はもうしないからな。だが、話しておきたいことがあったんだ」

「時間がねぇんだ。手早く済ませろよ」


 こうしている間にも魔の気配が迫ってきている。ゆっくりと話を聞いている場合ではないだろう。しかし、彼がここに無理をして来たということはそれほど大事なことなのだろう。


「ふっ、わかっている。マジアトーデという魔族には気をつけろ」

「あ?」

「彼は二重人格だ。攻撃的と保守的の両方を内に秘めている」

「つまり、その魔族に出会ったら気をつけろってことだね」

「ああ。悪いが、今の俺では彼に勝てないからな。その魔族は任せる」

「へっ、任せとけっ」


 そういってレイは魔剣を振り上げて、上段の構えを維持したまま走り出した。


「リーリア、近くにセシルがいるのは確かなようだ。その時は……」

「ええ、わかっています。彼女は私に任せてください」

「無理そうなら……」

「僕たちに無理なんてないよ」

「……そうか」


 アレクの言葉は非常に心強く感じた。そして、彼の表情もまたエレインと似た印象を持った。


「ブラド隊長っ、すぐに議会へ戻ってください」

「ああ、今戻る」


 そう言って彼は面倒そうに始末した魔族から飛び降りるとフィレスとともに議会の方へと向かっていった。

 どうやら議会の方へは聖騎士団の人たちも来ているそうだ。議会の防衛は大丈夫だろうが、これからは内側での戦いも激しくなることだろう。

 すでに地下通路からの侵入を許してしまっているからだ。


「アレクっ! 俺は前に行くぜっ」

「気をつけてね」

「わかってるぜっ」


 その直後、レイの魔剣から爆ぜるような威力の斬撃が魔族を両断していく。

 上位種の魔族ではないものの、それでも彼の異常さは十分に伝わった。


「僕たちも進もうか」

「はい」


 それから私たちもレイとは違う方向へと足を進めることにした。

こんにちは、結坂有です。


まだまだ続く戦闘はどのような展開になるのでしょうか。

そして、セシルの洗脳は解けるのでしょうか。


それでは次回もお楽しみに……



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