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少しでも追いつきたい

 私、ラクアはマナと一緒に議会のとある部屋で過ごしていた。私はときどき、レイと訓練をすることがあるのだが、ここ最近は一回も訓練をしていない。エレインもルクラリズのことばかり気にかけているようだ。

 エレインのそれは仕方のないことだと思う。なぜならルクラリズは正真正銘の魔族らしいからだ。人間の味方とは言っているものの、完全に信頼できるかと言われればそうではない。それほどに人間と魔族は因縁深い関係なのだ。


「……ラクア、エレイン全然来ないね」


 すると、目の前のマナがそう私に向かってつぶやくように言った。確かに彼は議会に全くと行っていいほど来ていない。

 家で訓練をしているのだろう。


「そうね。まぁ彼も彼なりに忙しいのよ」

「……定期的に来るって言ってたのに」

「毎日とは言ってなかったでしょ? 週に一回とか、それぐらいじゃないかしら」

「長いっ」


 そう目で訴えかけられても今の私にはどうすることも出来ない。それに、私もここ何日かここにいてるのが億劫になってきたのだ。


「仕方ないわよ」

「ラクア、呼んできてよっ」

「無理よ。今の私はレイの弟子みたいになってるわけだし」


 弟子は師匠の言いつけを守るもの、それは私が勝手にそう考えているだけで実際にレイやエレインから言われたわけではないのだけど。それに、そもそも私の一言でエレインが動くとは思えない。もし何かの任務中なのだとしたらきっと邪魔だと思うことだろうし。

 わがままを言いたいのはやまやまとはいえ、彼の邪魔をしたくない。彼の邪魔をするということはそれほどに大罪なのだと自覚しているのだ。


「ぶー」


 そう、マナが頬を膨らませて抗議の目を向けてくる。

 こればかりはどうすることもできない。なにか彼に近しい人がいれば話は別なんだけどね。

 そんな事を考えていると、扉が開いた。

 フィレスが戻ってきたのだろうか。


「ラクア、起きてるのか?」


 扉の方を向いてみると予想外なことにレイが立っていた。


「……起きているけれど、訓練?」

「いや、この前までここにいとけって言ったきりだからな」

「自覚あったわけね」

「こっちだって忙しかったんだぜ? まぁ言い訳に過ぎねぇけどよ」


 フィレスから聞いた話で彼とアレクが別任務だったことは知っている。謝ってほしいというわけではないけれど、放置されたわけだから少しぐらい文句は言ってもいいだろう。

 そんな自分の中のいたずら心がくすぐられる。


「それで、放置してたわけだけど任務は遂行できたの?」

「ったりめぇだろ。あんな奴らの相手なんて苦労に入らねぇよ」


 強がりなのか事実なのかわからないような言い方ではあるものの、まぁ本当のことを言っているのだろう。

 レイの強さは共に訓練をしていたからよく知っているつもりだ。エレインの周りには本当に天才が多いように思える。類は友を呼ぶなんて言うけれど、彼らはきっとそういった集まりなのだろうか。


「訓練じゃないとすれば、何かしら?」

「ただ単に、ここに閉じこもってたら嫌気が差すかと思ってな」

「そんな事考えてくれてたの?」

「まぁ、アレクに言われたからなんだけどよ」


 他人のことをよく考えれるような性格でないことも理解できている。良くも悪くも自己中心的な人だと感じている。

 別に私はそれでもいいと思っている。本当の戦場を生き残るには自分中心に考える必要があるからだ。他人のことを考えてしまうとつい目の前の目的を見失ってしまう。そうなっては勝てる戦いも勝てないだろう。

 ただ、彼ほどの実力があればそんなことはあまり関係のないことなのかもしれないけれどね。


「そんなことだと思ったわ」

「レイ兄さんっ、エレインは?」


 話が一段落着くとマナがそう彼にぴょこぴょこと飛び跳ねながら質問する。その様子から彼女は年齢相応だと思う。しかし、そんな彼女でもとんでもない力を内に秘めている。

 今はまだそれらをうまく制御できていないようだが、それでも訓練次第では一般的な聖剣使いと互角に戦えるだろうと思っている。それはどうやらエレインやリーリアも同じように思っているようだ。

 ただ、精神的にまだまだ弱い部分があるのが欠点だろう。過去のトラウマもあることだ。これからゆっくりと強くなっていくはずだ。今はただ彼女の成長を見守ることが大切なのだ。


「エレインか? 家で訓練でもしてるんじゃねぇか?」

「……ルクラリズと?」

「ああ、そうだと思うぜ」


 やっぱりか。

 最近のエレインは私のことを見てくれていない。もっと私を見てほしい。私も強くしてほしい。

 そんなのがわがままだとは自覚している。それでもいい。この感情は本人にぶつけないといけないのだから。


「私、そこに行っていいかしら」

「訓練なら俺が……」

「私もレイと訓練してある程度強くはなったのよ。成長した私を自慢したっていいじゃない」

「……そこまで言うんならいいじゃねぇか。まぁ実際に強くなってるわけだしな。エレインも別に断りはしねぇだろ」


 レイからの許可も出たことだ。何も遠慮する必要はない。

 自分のしたいようにするだけなんだ。

 なによりも自分自身には精霊が取り憑いている。まだ最大限に発揮できてはいないけれど、それでも大丈夫なはずだ。

 今度こそ、彼に触れることさえできれば勝機がある。


「ええ、ボロボロに負けたとしてもまた訓練をして挑戦すればいいわけだしね」


 彼との戦いで死ぬことはない。彼もそれなりに手加減はしてくれているはずだ。彼の全力でなくても一度ぐらいは彼に勝ちたい。そう思うのは不自然だろうか。誰しも、負けてばかりではつまらない。だから、何も謙虚になる必要なんてないんだ。


「マナも行きたいっ」

「それはできねぇことだな」

「そうね。マナはもう少しここでお留守番ね」

「ぶー!」


 そう言ってマナが強く私たちに向かって抗議の目を向けてくる。彼女に関してはそう簡単に外に出していい存在ではないだろう。

 ルクラリズと違って魔の気配が強く漂っているからだ。

 それにしても、ルクラリズとマナとでここまで魔の気配の濃さが違うのはなぜだろうか。ルクラリズが意図的に気配を薄めているとは言っていたが、本当にそれだけだろうか。私にはどうもそれだけではないような気がしてならない。

 まぁそんなことを考えたところで結論は出ないんだけどね。


 それからフィレスが帰ってきてから私は部屋を出た。

 レイに案内されて議会を出る。

 彼はどうやら仕事があるようで議会からは出れなかった。本当は彼にも私の戦いを見てほしかったのだけど、仕事があるのなら仕方がない。

 とりあえず、家に帰って訓練場にいるであろうエレインに勝負を挑むことにしよう。

 無理そうなら別の機会になるわけだけど、レイも大丈夫そうだと言っていた。

 そんな彼の言葉を胸に私は帰路に着くことにした。

こんにちは、結坂有です。


次回はラクアの訓練の成果が見れるみたいですね。

彼女はどこまで強くなったのでしょうか。体術も得意としているレイから指導を受けているということでかなりの実力がついているはずです。


それでは次回もお楽しみに……



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